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最終更新日: 2009/02/09
(マークの説明) 正社員 理系積極採用 3年増益 株式公開
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プロの仕事研究
レスキュージャッキ『ガレキング』を試行錯誤の末に商品化したジャッキ設計のプロ。
技術系−機械・機構設計
アクチュエータ事業部 技術二課
小泉 秀巨 (37歳) Hideki Koizumi
入社10年目 / 東海大学大学院 理学研究科 物理学専攻 出身

プロフィール
2000年に入社。約半年間の研修後、ジャッキ技術部に配属される。2001年には主担当となってレスキュージャッキ『ガレキング』の設計を推進。現在は自社の主力設計エンジニアとして、各種ジャッキ製品の設計業務に携わっている。

プロローグ
日本の工業力を支える基礎分野の世界で力を試したい。小泉秀巨はそんなテーマをもって就職活動を開始し、日本ギア工業に注目した。歯車という誰もが知る部品をはじめ、先進技術が詰まったアクチュエータやジャッキの製造で高い技術を誇る――世間に流されない独自の技術を持っていると確信して、入社を決意した。

しかし、入社1年目は五里霧中の1年だった。大学院では半導体関連の解析を研究テーマとし、難解な“数式”を解くことがメインの活動。設計で必要な技術的知識はCADの操作方法に始まり、図面の読み方も一から学ぶ必要があった。唯一、学生時代はクルマ好きでレースに参加するほど、機械への抵抗が無いことは救いだった。最初に所属したのはジャッキ技術部。たとえば、大型ジャッキながらも精密に組まれている事実を知り、純粋に驚いた。さらに製品加工では匠の技を目の当たりにし、驚きが続く。発見の毎日である一方、学ぶ事柄が山積していた。それでも、スキルアップはスムーズだった。上司や先輩のアドバイスから知識を吸収し、それを実践しながら自分の技術とした。そして、入社2年目を迎えてしばらく過ぎると、早くも主担当としての案件が舞い込んだ。

初の主担当案件は「産・学・公」による共同開発 1
2001年の秋だった。当時、自治体の研究所、大学、さらに日本ギア工業の三者間で、ある開発プロジェクトが進んでいた。開発される製品とは、「災害用レスキュージャッキ」と呼ばれるもの。製品化だけでなく、商品として一般市場へ流通させるとのゴールが描かれていた。

製品設計の主担当に任命されたのは、入社2年目の小泉。上司から打診され、このミッションに強い興味を抱いた。関西地方の出身であり、1995年の阪神・淡路大震災の時には、ボランティアとして援助活動に参加していた。そんな経緯もあり、人々や社会に役立つ製品づくりには常々関心を持っていた。プロジェクトではすでに製品のプランや初期図面が具体化されていた。小泉も担当者ミーティングに参加し、まずは全体の理解に努めた。コンセプトは「瓦礫が積み重なってできた隙間にフックを挿入して、1トンほどの瓦礫を持ち上げられる」。たとえば、自動車用ジャッキでは10センチ以上の隙間が必要になるが、このジャッキでは1センチの隙間で挿入できる仕様が求められていた。そして、ジャッキの形が横からは“X”という文字に見えることから「X−ジャッキ」との通称で呼ばれていた。

試作品づくりで見舞われた失敗の連続 2
設計を開始した。まずはミーティングで入手した図面をCADに入力し、構造解析を進めた。「現状の仕様で本当に1トンの加重に製品が耐えられるのか」。それを確かめたかった。理論上では大きな問題も見当たらず、X−ジャッキを構成する部品の選定に入った。これは小泉に一任され、各部品のカタログから選ばなければならない。実はこの作業が肝心だった。カタログに表記された仕様や数値を鵜呑みにすると、製品化した際にまさかのトラブルに見舞われる――新人時代、幾度となくそんな経験をしていた。そこで部品一つひとつの構造や強度を精査し、データの裏付けを取りながら慎重に選定した。部品が揃い、さっそく試作品の製造を自社工場に依頼。最初の試作品が完成し、テストを開始した。

結果は最悪だった。フックに1トンの対象物をひっかけて持ち上げようとした。すると、重さを嫌うようにフックが外れ、X−ジャッキも後退した。製品を地面に置いた時の安定感が確保できていなかった。運良くフックがはまれば、確かに対象物を持ち上げられた。しかし、「運良く・・・」では製品化はもちろん、商品として市場へ流せなかった。それからは失敗と試行錯誤の日々が続いた。

惨敗とまで思い込み、脱力感に襲われる・・・ 3
確実にX−ジャッキを機能させるためには、どこを改良すれば良いのか・・・。小泉は自分の頭をフル回転させるだけでなく、機会があれば、所属する技術二課の上司や先輩社員など社内からの意見に耳を傾けた。情報を整理し、CAD上で応力解析を何度もくりかえす。フックやX形状のパーツなど、すべての部品の強度や動きを見直した。それで辿り着いた結論は、X形状になっているジャッキの上下にフックと連なるガイド板を装着することだった。再び工場へ試作品を依頼し、仕上がるとすぐにテストを行った。これでも課題をクリアできなかった。ガイド板の耐久力が見合わず、かつ溶接した際に発生する鉄のバリが応力に影響を及ぼした。気づけば、半年が過ぎようとしていた。

小泉は惨敗が続く状況に自分の未熟さを感じ、失敗する度に脱力感が襲ってきた。しかし、逃げ出すわけにはいかない。商品化を成功させてこそ、社会や自社だけでなく、自らが得られる収穫は大きいと気持ちを取り直した。そしてある日の休日、ふらりと出かけたホームセンターで、課題をクリアする部品を発見した。「これだ!」。手にした部品とはステンレスで作られ、表面加工が施された丸棒だった。

『ガレキング』というユニークな商品名で発売へ 4
翌日、さっそく部品候補となる丸棒を選定し、それが届くと解析作業に取り組んだ。通常、各部品の計算と解析で費やす時間は、長い時で約1週間。部品すべての整合性が取れなければ、試作品製造に移れなかった。そして、丸棒はフックと直結し、X形状の2箇所に棒をスライドさせるための円形パーツを取り付けた。これによって安定感を確保でき、全体の動きもスムーズになった。X−ジャッキは完成に近づいていた。反面、クリアすべき課題も未だに山積していた。たとえば、ジャッキ自体の重さ。商品化されたものは、女性でも何とか持ち上がる重量になっている。しかし、試作段階では男性でも持ち上げるのが精一杯。チタン合金の採用なども検討されたが、低価格も目指しており、従来通りに鉄板が使用された。

そこで小泉はX形状を成す鉄板の構造を見直し、楕円の長い穴を2つ空けて軽量化を実現させた。構造計算上では強度も保たれていた。その後、量産設計へ移行し、ついに製品化された。最大許容加重は800Kgf、最大上げ幅は150mm。商品名は『ガレキング』。インパクトあるその名を聞いて、小泉は笑みを浮かべた。約1年間に及ぶ激闘に終止符がついに打たれたのだ。

エピローグ
2002年の秋、ガレキングは展示会で発表され、大きな反響を呼んだ。テレビ局の取材を受け、斬新かつシンプルなデザインが認められて、グッドデザイン賞を受賞した。しかし、ガレキングのパワーアップはまだまだ続く。

小泉は、今日も別案件に携わりつつ、常に進化を目指している。生命の危機を救う重要な道具だからこそ、完成はあり得ない。強いこだわりを持つ職人がまたひとり、日本ギア工業で誕生した。
レスキュージャッキ『ガレキング』を手にして笑顔を浮かべる小泉。この製品が突然の災害時に多くの人命を救うのかも知れない。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
大学院では、半導体内の電子の動きを理論的に解析する研究を行っていた。毎日が計算のくりかえしだが、正解を得るために手法を変えて何度も挑戦。計算不能に陥ってもあきらめず、地道に解を求めて計算し続けた。こうした地道に努力する気持ちは、今の設計業務でも重視すべき基本的なスタンスとなっている。
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