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最終更新日: 2008/10/01
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プロの仕事研究
“働く社員”の魅力が伝わる新卒採用サイトを作り上げた、WEBデザインのプロ。
専門職系−クリエイティブ職
WEBチーム/デザイナー
山下 拓未 (30歳) Takumi Yamashita
入社5年目 / 明徳学園相洋高等学校 出身

プロフィール
親戚からデザインの基礎を学ぶ。その後、別の印刷会社にデザイナーとして就職。紙媒体を扱う中で、次第にWEBが持つ表現力や可能性に興味を抱き、ダンクソフトへ入社。企業のHPやフラッシュコンテンツ、動画配信サイト、企業・製品ロゴの制作などを手がける。自社の新しいロゴマークの作者でもある。

プロローグ
「ご趣味は? ほほう、バイクですかあ…。で、ツーリングはどの辺へ? …え? 三浦半島? なるほどなるほど、実はですねえ、私、釣りが好きで、その辺にはよく行くんですよ…」。屈託のない山下の笑顔に、目の前の女性も少しはにかんだようだった。

―― これは、お見合いのワンシーンではない。山下の前にいるのは、IT企業A社の採用担当者である。同社の新卒採用サイトのリニューアルを任された山下は、クライアントのオフィスで打ち合わせを行っていたのである。初顔合わせの席上、プライベートな話題でその場を和ませる山下。いきなり仕事の話に入るのではなく、まずは何でもいいから相手との共通点を見つけ、“仲良くなること”。これが山下のいつもの仕事の進め方だ。プライベートな事柄からも相手の好みをつかむ。デザインなどの感覚的な話をするためには、そうしたコミュニケーションが何よりも大切だと山下は考えているのだ。

当のサイトオープンは、翌年の1月。山下が案件を任されたのは11月。スケジュールに余裕があるとは言えない状況の中、山下は徐々に徐々に、本題へと話を進めていくのだった。

100ほどあったサンプル画面を差し出し、要望を整理する。 1
「文字ばかりでとっつきにくい」。前年のサイトを見ていた内定者のその意見がヒントになった。確かに前年のサイトは、文字が多くて面白みがないと山下も感じていた。だが、具体的にどうリニューアルをかけていくかは、もう少しクライアントの要望を掘り下げていく必要がある。スケジュールの進捗管理担当とプログラミング担当の後輩、コピーを書く外部のライターなどのプロジェクトメンバーと連携を図り、取り急ぎ全体のスケジュールを山下は組み立てた。そして後日、サンプル画面を携えてクライアントのもとに向かった。

「こんな色は、どうでしょう?」 「同じブルーでも、これとこれでは、どちらが近いですか?」 「言葉の言い回しは?」―― 整理されていないクライアントの要望を具体的なデザインイメージに近づけようと、100ほどあった汎用的なサンプル画面を次々と担当者の前に差し出す。消去法でサンプル画面を絞り込んでいきながら、徐々にクライアントの要望を整理していく。そして“どんなサイトにするか”という大枠のコンセプトを固めていった。

「プリンタになる」。山下の考えるデザイナーの役割。 2
「社員に登場してもらうのはどうだろう。トップ画面に社員の顔写真を持ってくる。読ませるより、“見せる”サイトにしたい」。サイトに訪れる学生、つまりユーザーの視点に立った山下は、“人”によってA社の魅力を伝えていくサイトコンセプトを考えた。そして、それらを論理立ててクライアントに説明するために企画書を作成し、プレゼンに臨んだ。

「面白いプロジェクトを経験した人を…、見た目に親近感がわく人を…」。A社の担当者からOKを得た山下は、すぐに社員の人選に取りかかった。トップ画面の具体的な案も数パターン作成し、消去法でクライアントが持つイメージに近づけていく。顔写真の大きさ、レイアウト…、細かいディテールも詰める。そんな中、山下は決して自分の意見を押しつけることはしなかった。「どんなに優れたデザインだと自分で思っていても、クライアントが満足してくれなければ意味がない」。クライアントの要望、ユーザーの視点の両方をうまく取り入れて形にする。「プリンタになる」。それこそが、山下が考えるデザイナーの役割だった。就職活動関連のブログやSNSなどを見ながら“今の学生たちが求めていること”を探り、ちょうど就職活動中だった妻の弟を質問攻めにした。

そして、10名を超える社員たちの撮影も無事に終わり、作業は順調に進んだ。だが、まさかの事態が土壇場で山下を襲う。

「そうか、シルエットだ!」。まさかの事態を収拾するために、ひらめいたこと。 3
「トップ画面に顔写真を持ってくるのは、NGになってしまったんです」。12月中旬、画面の作り込みもほぼ終わりかけたとき、担当者は申し訳なさそうに山下に告げてきた。すぐに浮かんだのは、ユーザーのことだった。「それだと見る人がつまらなくなる。前のサイトと一緒じゃないか」。社員の個人情報の保護に配慮したA社上層部による決定とはいえ、山下はそう簡単には納得できなかった。だが、クライアントの最終決定にそむくわけにはいかない。急いで社に戻った山下は、デザインを練り直した。

「顔写真の代わりに何を載せる? モノか? いや違う。…やっぱり、“人”を載せないといけない! でも、顔は使えない。じゃあ、人の絵か? いや、それじゃリアリティに欠ける。じゃあ、どうすれば…」。そのとき、山下はひらめいた。「そうか、シルエットだ! どんなに似た顔でも、輪郭は“その人だけの形”にしかならない。それならリアリティも保てる」。だが、クライアントが納得してくれるかどうか不安が残った。それでも山下は、勇気を振り絞って担当者に想いをぶつけた。

山下の熱い想いは伝わるのか…。 4
担当者はしばし考え込んでいたが、山下の熱い想いは伝わった。だが、安心している暇はない。最低限に見積もっても、翌年の1月8日までにはすべてを完成させなければならない。山下は後輩と手分けして修正作業を進め、検索結果が上位に表示されるための細かい“仕掛け”を施す作業などは、社員総出で行った。そして、ついにA社の新しいサイトは完成する。

1月8日、担当者は完成したサイトを確認していた。電話越しではあるが、自分が手がけたサイトをまじまじと見つめるその姿が山下には伝わってくる。「…よし、これならいけるでしょう」。その返事に山下はほっとした。

そして、いよいよサイトオープンの日。ダンクソフトの社内には、皆の拍手に包まれる山下がいた。クライアントのイメージをしっかりとつかみ、ユーザー視点を取り入れて山下が表現したサイト。それが、皆のパソコンには映し出されている。一方、A社のオフィスでも、担当者が満足げな表情を浮かべながら新しいサイトを見つめていた。後日、クライアント先に訪問した山下。担当者からの「ありがとう」という言葉には、感激を隠せなかった。

エピローグ
サイトが新しくなったその年、A社の新卒採用では、サイトの豊富な情報が面接の際の会話の糸口となって学生とのコミュニケーションが濃密になっていた。前年に比べ、仕事内容をしっかりと理解している学生も増えた。そして現在も引き続き、山下はA社のサイトを任されている。

2006年11月には、自社のロゴマークを新しくデザインするなど、社内でも山下の評価は高い。社員や役員、社長の総意を得て誕生した新しいロゴマークは、クライアントの評判も良い。感覚的なものをロジックに落とし込む力、そして熱い想いを内に秘めるデザイナー山下。終わりなきクオリティの追求は、これからも続いていく。
サイトデザイン、WEBコンサルティング、製品のロゴマーク制作など、クリエイティブの世界において山下は幅広い役割を担う。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
小中高と、部活動や地域のクラブチームでサッカーに汗を流した。チームワークの大切さはもちろん、仲間の表情を見てそのときの気持ちやモチベーションを推し量って状況を判断することを学んだ。それらは、同僚やクライアントの意図していることを感じ取って物事を進めなければならない現在の仕事に、大いに活かされている。
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