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最終更新日: 2008/10/01
(マークの説明) 正社員 理文不問
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プロの仕事研究
今までにない新たな解析プログラムの応用方法を生み出した、解析のプロ。
ソフトウェア系−パッケージソフト・ミドルウェア開発
先端技術センター 数理解析部/プロジェクトリーダー
坂口 剛 (33歳) Go Sakaguchi
入社8年目 / 筑波大学大学院 理工学研究科 構造工学専攻 出身

プロフィール
大学院では土木・建築を専攻。就職後も構造物に携わりたいと想い、アーク情報システムに入社。入社動機は、自社で解析ソフト自体をつくれるほどの開発力があることや、大学・研究機関との関係が深いことから、高い技術力が手に入ると思ったこと。今は構造解析を中心に手がけ、発電施設や地下鉄などのインフラを支えている。

プロローグ
坂口が“構造”に興味を持ったきっかけは、ささいな出来事だった。学生時代、自宅で日曜大工をしていた時。「本棚をグラつかせずに立てるにはどうすればいいのだろう」――金槌を片手に浮かんだ素朴な疑問から、建物等の設計方法を研究する構造工学への探究心が生まれた。やがてその興味は本棚から、ビルや橋などの構造物へと広がり、坂口は大学や大学院で建築・土木を専攻することになる。就職も、構造解析のプロフェッショナル集団として大学や研究機関と深いつながりを持つ、アーク情報システムを選んだ。

構造解析とは、力が加わった対象物がどのように動き、歪むかなどを分析すること。例えばビルの場合、強風や地震ですぐに破損が起こっては人命に関わる。それを未然に防ぐため、あらゆる現象を設計前にシミュレーションし、分析するのだ。学校で大まかな理論は学んでいたものの、実務での解析は坂口にとって初めて。入社後は先輩と共に、1つひとつを習得していくところからスタートした。発電所や地下鉄、トンネルなどの構造解析…ハデさはないが、人々の暮らしに欠かせないものを支える重要な仕事。自分の仕事に大きなやり甲斐を感じ、坂口は技術を学び続けた。

クライアントから届いた依頼。それは既存プログラムの、今までにない応用方法だった。 1
入社6年目、坂口は日々の仕事に面白さを見出していた。行なっていたのは、電線ギャロッピング解析プログラムの開発。風などの影響を受けて電線が切れたり、互いに接触するのを防ぐためのプログラムだ。研究機関に提供し、最終的には電力会社に利用されるもので、かなり難易度が高いもの。このような開発が出来る企業は、国内に類を見ない。そんな開発を一手に任されたことに、誇りを感じてもいた。2007年7月。そんな坂口のもとに、電力の研究を行なうある機関から、依頼が舞い込んだ。

「このプログラムを、風車の解析にも応用することはできますか?」。

内容は、電線ギャロッピング解析プログラムを、風力発電の風車における構造解析に使いたいというもの。同プログラムを利用すると、強風時における構造物の動きを予測できる。その機能を用い、風車の耐風性能を調べられるのではないかと考えての依頼である。つくるのは、重要なインフラである風車の安定的な回転や、風による破損防止を実現するために用いられるプログラム。「自分に出来るだろうか…」。今まで1度も行なわれたことのない応用で、利用する解析理論の知識もない。しかし、だからこそ新技術を得、今までにないものを生み出せるチャンスでもある。坂口は不安の中、とにかく前に進むことに決めた。

何度試しても、動かないシミュレーション画面。 2
「やっぱり、何度やってもうまくいかないな」。

既存の電線用のプログラムに、風車のデータを打ち込む。そこに風のデータを入力すると安定的に回る――はずだったシミュレーション画面上の風車が、まったく回らない。電線ギャロッピング解析プログラムの風車への応用は、やはり一筋縄ではいかないようだ。坂口は目の前に、高い壁が現れたのを感じた。

確かに電線と風車では、風による振動や変形の仕方が違う。電線では問題のなかったプログラムでも、それが風車になると不具合が起こるのは、ある意味しようがないと言える。しかし、しようがないの一言では済まされない。完成を待っているクライアントがいるのだ。「まずは原因から突き止めよう」と、パソコンに向かう。坂口には原因の心当たりがまったくないわけではなかった。しかし、解析理論への理解が出来ていないため、プログラムのソースを見ても計算方法のチェックすら出来ない状態。まずは勉強だ。坂口は書店へと向かった。

トラブルの原因究明のため、坂口は動き出す。 3
「幾何学的非線形の有限要素法は…と」。

その日から、学びの日々が始まった。早起きをし、朝7時から9時までは勉強の時間と決める。解析理論の教科書を購入し、最初から読みこんだ。坂口が不具合の原因と考えていたのは、“減衰”のチカラ。減衰とは、空気抵抗や摩擦によって動きが徐々に減少する効果のこと。風車を安定的に回転させるためには、減衰のチカラを加える必要がある。特に電線に比べて大きく回転する風車の場合は、減衰のチカラの向きも考慮する必要があるのではないだろうか――。


それを実証するためにまず坂口が行なったのは、様々な状況を想定してプログラムを実行すること。風の向きや強さなど、様々なデータを入力して風車の動きを見ることにした。減衰をなくすと画面上の風車は回る。しかし、減衰があるとどのデータを入力しても風車は回らない。「やはり減衰か」。減衰の部分の計算が合っていないということは判明したが、まだどう間違っているのかが分からない。他の業務と並行して行なっていたために、研究は思うように進まなかった。しかし、開発を任されているのは自分1人。坂口自身が解決への糸口を見つけない限り、開発は前には進まない。

2008年2月。解決への糸口が、見つかった。 4
スタートから7ヶ月。坂口は、いまだ原因追究に勤しみ続けていた。様々な本を読みながら正しい理論と実際のプログラムとを比較し、分からない所は上司の佐藤に質問する。毎日の学習は、欠かさず継続した。そして、解析理論についての新たな知識を一通りマスターしたころ、坂口はある1つの結論にたどり着いた。

パソコンの前。予測をもとに、はやる気持ちを抑えて計算方法をチェックする。その顔が、ゆっくりと笑みに変わっていった。――「原因は、減衰の累積だ」。風車を安定的に回転させるためには、加える減衰を、風車の回転に伴って組み替えなくてはならない。しかし、往来の電線ギャロッピング解析プログラムでは、組み替える前の減衰が残ったままのところに、さらに異なる向きの減衰を加えることになってしまっていた。前の減衰を1度ゼロにしない限り、風車は回転しない。坂口は、正しい計算方法を行なう機能の追加を提案。その提案はクライアントに受け入れられ、1週間後に新機能が完成した。

新たなシミュレーション画面を前に、坂口は緊張していた。自分の予想が合っているかどうかが、これで判明するのだ。慎重に、風車や風力のデータを打ち込んでいく。「動いた…」。安定的に回り出す風車を見て、坂口は安堵の表情を浮かべた。

エピローグ
2008年5月。電線ギャロッピング解析プログラムは、坂口が生み出した新たな機能と共に研究機関に提供された。商品化はまだ先だが、既存のプログラムが風車に応用できるようになったことは大きな進歩だ。

「学んで、考えて、自分の予測が計算とピッタリ合ったときが、仕事で1番面白い瞬間ですね」と、坂口はいう。成果が認められ、今はプロジェクトマネージャーへと昇格。大きな壁を乗り越えた彼の手には、新たな技術知識と確かな自信が残された。変わったことは、もう1つ。今までは上司の佐藤に来ていたクライアントからの相談メールが、坂口にも届くようになったのだ。それは技術者として頼りにされる存在へと成長できた、大きな証だった。
プロジェクトマネージャーへと昇格した坂口。1人の技術者として、社内外からの信頼が高まっている。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
学校の授業で、坂口は分からないことや気になったことはすぐに調べることを徹底していた。アーク情報システムでは、決まった仕様どおりに行なうだけでいい仕事は少ない。自分で考え、製品をつくりあげ、提案していける環境だからこそ、学生時代に習慣づけた「自主的に学ぶ姿勢」は役に立っているという。
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