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メーカー(医薬品)
最終更新日: 2008/10/01
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プロの仕事研究
真に医師達が必要としている会を主催し、自社薬剤のシェア拡大に成功したMRのプロ。
営業・販売系−MR(医薬情報担当者)
千葉埼玉支店 川越営業所 第4エリアチーム
有馬 孝美 (29歳) Takami Arima
入社6年目 / 慶應義塾大学 商学部 出身

プロフィール
人と接することができる仕事がしたい、と考えていたとき、元来興味のあった医療業務の中で、MR(メディカル・レプレゼンタティブ)という職業があることを知り、武田薬品への入社を決意。MRとして、所沢地区の医師をはじめとする医療関係者に、ニーズにあった治療の提案を行うと共に、現在は新人トレーナーも務める。

プロローグ
「人のためになる仕事がしたい」。そんな有馬が選んだ職種がMR(メディカル・レプレゼンタティブ:医薬情報担当者)だった。

MRとは、自社製品を使って医師などの医療関係者に、より良い治療を行ってもらうための情報伝達と、現場からの情報収集を行う仕事。担当地区の医療施設を回り、最新情報を提供して自社の医薬品の有効性はもとより、副作用についても理解を深めてもらう。逆に、現場での有効的な使い方、問題点などの情報も収集し、より効果的な使用法を見出すためのデータとする。専門性の高い職種だが、特に専門知識を持たない者にも門戸は開かれている。

文系出身の自分が、元々興味を持っていた医療関係業務の中で、直接人のために働ける仕事がある。かなり専門性は高そうだが、一から学べることは、むしろうれしい。「これしかない」。有馬は、こうして武田薬品工業でのMRの道を歩み始めた。

だが、その道は険しいものだった。知識に不安があるため、ベテラン医師との面談は常に緊張の連続。日々忙しい医師だから、場合によっては門前払いされることもある。MR・有馬の苦闘が始まる……。

「話はすぐ聞いてもらえるもの」と思っていた有馬に手痛い試練が。 1
埼玉県の所沢市を担当エリアとして、MRとしての業務を開始した有馬。最初は、最新資料を持って訪問すれば、話を聞いてくれるものと思っていた。だが、そうはいかなかった。医師たちは忙しい。その業務の合間を縫って訪問するのだから、簡単に話をしてはくれない。ましてや、製品説明などそうそうできはしない。

厳しい現実に直面して、有馬は焦り、悩んだ。「自分は役に立っていないのではないか……」。だが、先輩たちが有馬を優しく諭してくれた。「先生たちは忙しい。すぐに話を聞いてくれるものではない。まずは、製品の説明を聞いてくれるだけの関係を作ることが大事なんだよ」。

有馬は気を取り直した。だんだんと、今まで見えなかったことが見えてくる。医師の疲労の度合い、待っている患者の数。それらから状況を読み取って、説明をするか、世間話で終わるか、あるいはそのまま帰るかなどを判断できるようになってきた。だが、ショッキングな出来事もあった。

ある医師に、初対面の席でこう言われた。「新人と話す気はない。そもそも君の会社とは付き合わないことにしている。帰ってくれ」。経験したことがない厳しい拒絶だった。

厳しい拒絶に打ちのめされる有馬を、先輩達が励ました。 2
これには打ちのめされた。だが、先輩たちは有馬に言った。「本当に嫌ならば会う前に帰すだろう。会ってくれるということは、何がしかの興味を抱いてくれている、ということ。失うものは何もないじゃないか。挑戦してみなさい」。

再び、医師の下に向かう有馬。緊張で胸の動悸がおさまらない。やはり追い返された。つらい。「もう辞めたい」という気持ちもよぎる。だが、有馬は先輩の言葉を信じ、訪問し続けた。そして一計を案じた。医師への資料だけでなく、患者に渡す日常の健康維持に関するパンフレットを持参し、渡してもらうようにしたのだ。そんなことを続けるうちに、医師の態度が微妙に変化してきた。

「君もしぶといな」。言葉が変わってくる。相変わらず話を聞いてくれるわけではない。黙って資料に目を通し、「今日はこれで終わり」と言う。それでも訪問を続けた。「皆すぐ来なくなるのに、君は変わった人だね」。そしてついに言われた。「来週は少しだけ話を聞いてあげよう」。

「あきらめずに続けて良かった」。有馬は、素直にうれしかった。

『ブロプレス』のシェア拡大に何をすべきか。有馬は、ある企画を思いついた。 3
そして2年が過ぎた。有馬は、武田薬品工業の高血圧治療薬『ブロプレス』のシェアアップに取り組んでいた。すでに効果のある薬剤として認知はされており、説明会や講演会なども何度も行われていた。有馬も担当地域の医師を招き、理解を深めてもらうことに努めてはいた。だが、有馬の担当地域におけるシェア率は、今ひとつ伸びない。

有馬は考えた。「大規模な講演会では、先生方も日常的な悩みなどは質問しづらいのかも。小規模なものを主催したらどうだろう」。有馬の担当地域には、心臓カテーテル治療の権威であり、『ブロプレス』を大変評価して使用してくれている循環器専門医がいた。地域の医師たちの信頼も厚い。「この先生を囲んで、ドクターたちが気楽に相談し合える場所を作ってみよう」。

有馬は早速準備に入った。講師となる循環器専門医は、快く引き受けてくれた。毎回、5〜6人の医師を招いて行う。招くのは、『ブロプレス』を使用していない医師だけではない。すでに使用して、効果を認めてくれている医師も招く。いくら公正に話をしても、メーカー側の人間の話では、信頼を得にくい。だから、実際に効果を上げている医師の話も盛り込みたかった。

そして、2006年秋、第一回目の会が行われる日が来た。有馬は不安で一杯だった。「先生方はちゃんと来てくれるだろうか。ディスカッションは盛り上がるだろうか?」。

ディスカッションは盛り上がるのか?意図は伝わるか?答えはすぐに表れた。 4
会は診療終了後の夜行われる。有馬は医師たちに「本日は宜しくお願いします」と再三念押しをした。当日朝、病院の看護師、あるいは医師の奥様にまで連絡を取り、「来てくださるよう伝えてください」と頼んだ。直接迎えに行った医師もいた。

無事、参加メンバーは集まった。講義が終わり、食事をしながらのディスカッションが始まった。「こんな症例の場合はどうしたら?」。「数値がこのくらいの場合はどのような治療を?」など、活発に質問が出た。講師の医師も質問に答える。「問題があったらどんどん患者さんにこちらに来てもらってください。適切に治療した後、また先生のところにお返しします」。

普段交流のない、地域の医師同士のディスカッションは、熱っぽく続けられた。そして終了後。有馬は参加した医師達から声をかけられた。「いい会だった。これから、『ブロプレス』を使ってみるよ」。「自分の体も気になるから、まず自分で飲んでみよう」。

翌日。担当地域の薬局から有馬に連絡があった。「急に『ブロプレス』の注文が増えたけど、何があったのだろう?」。有馬の試みは、想像以上の効果を上げた。有馬はMRとして、なすべきことをやり遂げた喜びに包まれていた。

エピローグ
この会は、その後も幾度となく催された。参加者の中には、かつて有馬を門前払いにした医師もいた。医師は、使用する高血圧治療薬をすべて『ブロプレス』に変えてくれた。単に気心が通じたからではない。それだけ優れた薬だと認めてくれたからだ。そして、「このような会があるときは、できるだけ声をかけてくれ」と言った。

開業医は、日々の診療も忙しく、周囲の医師との交流も少ない。最新情報は常に欲しい。そのためにMRがいる。MR・有馬は、地域の医師とも交流を深め、意見を交換し合える場を作り、最新の医薬情報を伝えていく。それがひいては病気に苦しむ患者の役に立つからだ。
担当地域の医師達に、もっと自社医薬品への理解を深めてもらうために、日常的なコミュニケーションは不可欠だと語る。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
大学時代に学んだ商学部では、統計を専攻していたが、実際に投薬した患者のデータ等を解析する際にはこのスキルが役に立つため、さらにこれを活かして会社に貢献したいと考え、統計士の資格を取得した。今後、さらにこのスキルを幅広い分野で活かしたいと考えている。
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