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流通・小売(専門店(食品))
最終更新日: 2007/11/29
(マークの説明) 正社員 理文不問
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野菜は、大切な食べ物。決して、商売の道具にしてはいけません。
野菜は奥が深く、長年の経験があってもまだまだわからないことばかりだと語る田中社長。それが大きなやりがいにもなっている。
株式会社セントラルフルーツ
代表取締役社長
田中 勝三   (65歳)
Katsuzo Tanaka
【プロフィール】
▼京都・伏見で農家の次男として生まれる。▼京都中央卸売市場にて、青果の中卸業を約13年経験。▼セルフ方式のスーパーマーケットの登場により流通の仕組みが大きく変化する中、独自の考えをもとにセントラルフルーツを起業。▼その後、百貨店に青果専門店「八百一」を出店し、現在は関西・中部・東京・神奈川・岡山・福岡の百貨店に、24店舗を展開。お客様の立場に立った経営理念を掲げ、高品質・低価格で青果を提供し続ける。▼2006年4月、栽培農場「八百一の郷」を京都府に開設。「食」に関する社会問題が増える中、企業として生産段階から農業に深く関わり、次の世代に野菜の魅力を伝えるための取り組みを続けている。
INTERVIEW
青果専門店「八百一」を、全国の百貨店に展開するセントラルフルーツ。創業者である田中社長にインタビューを行った。セルフ方式の小売店が登場し、流通業界に大きな変化が訪れた1970年代。その仕組みと小売業の変化に疑問を抱き、起業に至った経緯、同社の現在の強み、さらには今後の事業の展望について話を伺った。
Question 農家のご出身と伺いましたが、生産ではなく流通に興味を持ったのはなぜですか?
Answer 私は京都の農家の次男として生まれました。当時、農家の次男といえば、分家して同じように農業を営むのが一般的でしたが、私はアルバイト気分で京都の中央卸売市場に働きに出ました。これが会社を立ち上げるきっかけとなるのですが、もちろん10代だった当時の私に、起業するような志はありませんでしたよ。生まれてからずっと、野菜や果物といった農作物に触れてきましたから、自然と卸市場に関心が向いたんです。みなさんご存知かもしれませんが、市場というのは毎日、競りが行われます。青果は、農家が中央市場に持ち込み、競りにかけられ、中卸業者が競り落として、八百屋さんのような小売店に商品が運ばれていくのです。私は、中卸を13年ほど経験しました。市場の活気と言いますか、雰囲気が私の波長によく合いましたし、野菜を目利きして値段を決めるという仕事もおもしろかったですね。そうこうしているうちに、流通業界に大きな変革のときがやってきたのです。
Question 流通業界にやってきた変革というのは、スーパーマーケットの登場のことですね。
Answer その通り。いわゆるセルフ方式の小売店のことです。商品を陳列して、お客様が勝手に買い物カゴに入れてレジで清算する。よくご存知のスーパーマーケットがまさにそれです。それまでは八百屋さんも、魚屋さんも、どこでも対面販売が当たり前でした。青果も含めた生鮮食品は何でも、毎日仕入れるものの質が違いました。「今日は大根がいいよ」といってお客様においしい野菜を提供する。もちろん中卸も、その季節、その月、その日の相場をつかんで、仕入れ値を決めます。目利きができなくては、やっていけないプロの世界です。

ところが、スーパーマーケットの仕組みはそうじゃなかった。例えば、1000円で野菜を仕入れる。するとそれにロスリーダーといって、仕入れ値より安い800円ぐらいの値段をつける。当然、お客様はそれを目当てにやってくる。やってきたお客様は、野菜のついでに肉や魚、その他の食材、日用品を買っていく。それでスーパーは、十分な利益を上げることができるわけです。一方、中卸は、天候や産地の栽培状況を頭に入れ相場を読み、値段を見極める。その仕入れた野菜に適正な利益を乗せて八百屋さんに卸すのが常識。そしてお客様が八百屋さんで野菜を買う。それが商売だったのです。でも、スーパーマーケットの登場によって、価格形成の仕組みそのものが変わってしまった。私はそれが嫌で、そういうやり方に疑問を抱いていました。それで中卸の会社を辞めて、自分で小売店を始めることを決意したのです。
Question 起業された当初、経営はいかがでしたか? 厳しかったのではありませんか?
Answer 最初は、京都の小さなスーパーマーケットに棚貸しという形で商売を始めました。スーパーマーケットと販売スペースの賃貸契約を結んでおき、野菜が売れた分だけ利益をもらうわけです。ですから、自分で市場から野菜を仕入れて、適正価格でお客様に提供するという基本は、従来と変わりません。その代わり、売れ残ったりすれば、そのリスクは全て自分に返ってくるわけです。商品を売りっぱなしのやり方とは、同じスーパーで商売をしていても全く違います。私はそれが本来の姿だと思っていました。ずっと野菜を取り扱ってきた経験があり、きちんとした品物を、適正価格で仕入れ、販売することが私にはできました。

そして転機となったのが、東京の百貨店で、ある水産業者さんがテナントとして入っているのを見つけたことでした。売っているのは、紙袋にくるんだアジとか、いたって普通のものです。ところが、それがすごい勢いで売れているんです。百貨店は違うなぁ、と思いました。同じように野菜売場に足を運ぶと、驚いたことに売場の端のほうで小さく商売をしているだけ。何で魚は良くて、野菜はダメなんだろうって思いましたよ。それから、京都に帰ってずっと、百貨店で青果の販売を大々的にできないかと、周囲に話をしていたのです。すると、ある百貨店からテナントとして入ってみないかという話が来ました。それが、「八百一」の百貨店進出の第一号となったわけです。
Question なるほど。それをきっかけに、現在のように全国の百貨店に出店するに至ったのですね。
Answer 百貨店でも、安くおいしい野菜を販売できればいいと思って始めましたが、会社を大きくしようとか、店舗を増やそうという考えは、全くありませんでした。今おっしゃったように、現在は全国に24店舗を展開していますが、いずれも私から百貨店に出店をお願いしたことはありません。申し出があってから出店しています。

私はずっと、八百屋さんとしてやるべきことをやって、その結果として利益を得たいと思ってきました。現在でもその考えは少しも変わっていません。利益だけを追い求めるような商売は絶対にしないのです。野菜は、毎日のように口にする食べ物。安くおいしく食べることができなければなりません。ですから、私たち小売店が必要以上に儲けるようなことはあってはならないのです。安く野菜を提供する仕組みというものを、私たちは作り上げてきました。安く仕入れて、高く売るやり方には、大きな疑問を感じます。

社内の商品部では、今申し上げたような考えをしっかりと守って、商品を仕入れています。その時々で売れる野菜を、売れる量だけ仕入れて、お客様に提供する。もし、仕入れ担当の見込み違いで在庫が余ってしまったら、全て腐ってしまいます。そしてロスが出た分の穴埋めは、価格となって最後はお客様に回ってしまう。ですから、私たちの仕事は非常にシビアです。楽をしてお金を稼ごうと思っている人は、厳しいと感じるかもしれませんね。でも、だからこそ大きなやりがいがあるのです。最大の努力によって、安く良いものを提供するのが、セントラルフルーツです。
Question 考え方の話が出ましたが、御社では「考え方勉強会」を実施していると伺いました。
Answer そうですね、理念を社員のみんなに浸透させるための勉強会とでも言いましょうか。といっても、そんなに難しいことを勉強しているわけではありませんよ。野菜の小売という仕事を通して、社員のみんなに人間性を高めて欲しい。そんな願いを込めて毎回、開催しています。社内には、「御用聞きの精神」 「お駄賃の精神」 「八百屋の精神」という理念があります。例えば、お駄賃の精神というのは、先ほども申し上げたように、利益を追わないということです。人がよく陥るのが、商品を仕入れて販売するとき、最初に利益を計算して売るという考えです。利益を出さなければ、商売が成り立たないと思い込んでいるのですね。でも私たちは、八百屋さんとしての役割をきちんと果たすことを、最初に考えます。安くおいしい野菜を仕入れて、そのまま安くお客様に提供する。その役割を果たした結果として、利益が生まれるのです。いわば、利益はお駄賃です。利益は、最初に考えるべきことではありません。役割を果たしたとき初めてもらえるお駄賃なのです。

同じように店頭の売場にも、私たちの考えが反映されています。店舗には、ステージという野菜を並べる場所があります。それは、まさに野菜という役者を、お客様という観客に見せるための場所。その演出をするのが、社員です。いかにお客様に感動を与える仕事ができるか。それが大切です。仕事は工夫一つで楽しみながらできるもの。楽しんで仕事をして、その結果、野菜が売れたら、これほどやりがいを感じることはありません。今、社内で活躍している社員は、みんなこうした考え方に共感を持ってくれて、楽しみながら仕事をしている人たちですよ。
Question 2006年4月から、農場を新しく開設したと聞きましたが、どんな農場ですか?
Answer 京都府の京丹波町という場所に「八百一の郷」はあります。この農場は、決して野菜を生産してそれを売って儲けることが目的ではありません。規模も小さいですし、そんなことをしても儲けなんかほとんどありませんからね。ここは、生産段階からより深く農業に関わり、野菜の魅力を伝えられる会社になるために作りました。野菜がどうやって作られているか、ご存知ですか? 多くの方はご存知ないと思います。セントラルフルーツの社員にも、農業を体験したことがない人は多い。野菜が実際にどんな場所で、どうやって収穫されているか。農作物を栽培することの大変さ、命ある野菜を土から引き抜くときの感触。そういったものを社員のみんなに知ってもらい、その経験や知識を、店頭でお客様と接するときに活かして欲しいのです。農業の重要性、野菜の大切さというものを、きちんとお客様一人ひとりに伝えていってもらいたいと思います。

また、野菜には小芋やかぼちゃのように、下ごしらえが必要なものがありますが、忙しい現代の家庭ではその手間をかける時間がなかなかない。そこで、野菜をボイルして販売する「クック1/2」というブランドを立ち上げました。味付けを一切していないのが特徴で、あくまでも味は各家庭にお任せするというもの。失われつつある家庭の味というものを、私たちは守っていきたいと考えてます。
ありがとうございました。最後に学生に対するメッセージをお願いします。
何度も申し上げたように、セントラルフルーツは独自の考えを持った企業です。その考えとは、常にお客様を基準に商売をすること。この考えなくして、セントラルフルーツは成り立ちません。きつい言い方かもしれませんが、まずは素直な心でこの考え方の意味を理解してくれる人でなければ活躍は難しいと思います。お客様を基本とした考え方を理解して、それを素直に行動へと移せる人が、現在、社内で活躍している先輩たちです。そして、素直な心というのは、ほかの企業でもきっと求められることだと思います。素直さを大切にする人が、将来私たちと一緒に野菜、農業、食を守る仕事をしていただけることを願います。
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