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私たちにとっての製品は、サービスなんです。
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積極的に社員とのコミュニケーションを図っている様子が、印象的だった香取社長。人材育成の観点を自ら体現している。
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株式会社やさしい手
代表取締役社長
香取 幹
(40歳)
Kan Katori
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▼千葉大学工学部を卒業後、印刷系メーカーで品質管理を担当。また、新規事業創出の担当となり、マーケティングをもとにした新たなビジネスプランを企画していた。▼1998年に、経営面でのサポート役を打診され同社に入社。理系の視点を活かし、合理的かつ科学論理性にもとづいたビジネスモデルを導入し、経営企画として活躍した。▼2006年4月より、代表取締役社長に就任。さらなる飛躍を目指し、人材育成とマネジメント強化に力を入れている。
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製造業出身の“モノづくりのプロ”が、介護業界に転身し、経営トップに就任。“モノづくり”ならではの視点が、どのように経営に活かされたのか―――さらなる成長を目指して会社に新しい風を吹き込んだ香取氏に、話を伺った。
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社長に就任されるまで、どのような軌跡があったのでしょうか?
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元々は、理系出身でした。国立大学に進学し、その後、印刷系の会社で品質管理の担当となりました。新規製品の開発などにも携わっていたのですが、2000年に介護保険制度が改正されることとなり、母が経営していた『やさしい手』のサポートをしてほしいと打診があったんです。入社した頃は、まだ20名ほどの小規模な会社でした。介護保険導入に伴って、社内体制の変革を担うことになり、経営企画を一手に引き受けました。
当時は売上高・利益について深く追求する体制ではありませんでした。しかし、利益を出してこそ上質の介護サービスが提供できるし、潜在的なニーズを汲んだ新規事業が立ち上げられる。従業員の労働条件の向上、スキルアップも図れる。だからこそ、経営体制の見直しが必要でした。介護保険の導入によって、ユーザーはサービス内容を吟味し選択できるようになりました。そうなれば、高い品質を保証することが顧客満足につながっていきます。つまり、サービスの質が会社経営を左右するんです。訪問介護ビジネスは、競争優位性がない難しい業界。会社のブランディングによって、どの介護サービスを選ぶかが問われます。「介護なら、あの会社に頼もう」と思い描いてくれるようなブランドを構築するようになるまで、どのようなプランを描いていくかが難しいんです。提供サービスの技術的なレベルも問われます。人材育成の視点を兼ね備えた事業を展開することで、一人ひとりのキャリアプランを実現し、レベルの底上げを図ろうと考えました。
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経営体制が大きく変わり、新しい取組みも導入されたのですね?
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はい。人材育成を長期視点で育むためにも、「派遣してサービスが終了、ではいけない」と思っていました。合理性の高いマネジメントが必要だと感じていましたから、『利用者への訴求価値が高いかどうか』―――つまり“やさしい手”でなければ提供できない価値を、提供しているかを問う地道な努力が必要なんです。この概念をきちんと語れる仕組みづくりができれば、風土が確立され、人材派遣サービスの基礎ができあがる。だからこそ、当社は経営管理システムを重視した、マネジメントを実践しているのです。
ISO9000の取得もその一環。ISO9000とは、ISO(国際標準化機構)が定める品質保証の国際規格のことです。介護業界におけるサービスは、製造業にとっての製品と同じ。だからこそ、対外的な信用を得るためだけではなく、製造業に浸透している“品質保証”の概念を社内に浸透させたかったんです。一定以上の高品質サービスを、常に提供し続けられるマネジメントをする。その目標達成に向けて導入したのが、TQM(Total Quality Management)発想でした。会社全体をマネジメントする品質管理方法のことです。経営戦略をもとに、顧客満足度向上・品質向上に向けて、どう行動していくかを考えるものです。全体の方針管理を実施し、経営品質の向上をテーマにしたマネジメントを行う。それによって、多様化・短期化する市場ニーズに合わせた徹底的な顧客満足を実現します。その発想を具現化するために、何をしたらよいかを示したのがISO9000でした。国際品質保証規格に合致しているかどうかで、マネジメントが行き届いているかを把握することができます。その結果、長期雇用、安定運営へシフトしていっています。また、利用者への価値提供を拡大するためにも、チーム制を取り入れています。
介護サービス事業における競争優位性の源泉は、人材育成。教育訓練、配置、仕事の割り振り、評価、処遇などを通して人材貢献への可能性や、本人の価値を高めるための人材マネジメント機能そのもののことです。単に人を資源として見るのではなく、人と企業のパートナーシップにもとづいたマネジメントであることが重要になります。
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今後、高齢者の数が増加し、新たな“介護像”が求められるのではないでしょうか?
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そうですね。報道などでは「高齢者をターゲットにした、新たなマーケットができる」と予測しているのをよく聞きますからね。高齢者の趣味嗜好は拡大するでしょうし、文化も変わっていくでしょう。文化は人口比率によって大きな影響を受けるものです。私の幼少期は子どもや若者向けのテレビ番組が多かったのですが、今や50〜60代以上向けのものが多いですから。介護業界にも、やはりマーケティング視点が求められますよね。どういう人が、どんなニーズを持っているか。それが注目されています。
昔とは違って、今は何でも選択できる社会になりました。自己選択の上で生きていく自立型社会になり、自己責任の文化を生んでいくのではないかと、私は思っています。「死にたいか、生きたいか」さえも選択できるし、「墓に入るか、入らないか」
「健康か、不健康なままか」も自分でコントロールできる社会になるでしょう。そうなると、“要介護”も選択できる日がやってくるはず。すでに、「60代からの余生をどう過ごすか?」が注目されており、その内容は多様化しています。たとえば、私の世代が60代になったときに、生活費が7000万円ないと豊かに暮らすのは厳しいといわれています。その半分は国から支給される年金です。それを考えたときに、どういう流れで社会を作るのか。グランドデザインをどうするのかが、重要になってきます。介護によって生活レベルがどこまで保てるのか。それが価値になってくるのだと考えています。
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貴社がサービスを提供するうえで、大切にしていることとはどのようなことでしょうか?
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お客様にどのような貢献ができるか―――何よりも、それを大切にしています。派遣するスタッフや、介護を受ける時間に限らず、貢献目標を個人で設定し、いつまでにどう変化していくかを実践。目標達成までのプロセスもすべて、貢献内容に含まれます。
具体的には、MBO制度(Management By Objectives by Self Control)を導入しています。自己統制による目標管理によって、仕事の結果を最終的にどこまで追求するかを明確にし、その上で進め方・管理方法を担当者自身に任せています。上司が部下に事細かに指示をしたり、管理するよりも効果が出ると評価されている制度です。それに加えてBSC(Balance Score Card)を使った図解シートを併用しています。売上高・利益といった財務業績だけではなく、顧客に提供するサービス水準、業務オペレーション、能力水準を踏まえた目的理解を促進するものです。マーケットを確保し、成果を保持するためにも必要なシステムであり、10〜20年後の“請負力”にもつながっていきます。
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最後に、今後の事業展開・ビジョンをお聞かせください。
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会社が安定した成長を遂げてきている今だからこそ、当社の志を産業と結びつけた事業展開をしていくことがさらなる成長への第一歩。社会的ニーズの高いものを、ビジネスへと反映していこうと思っています。中期的なビジョンは、『請負規模の拡大』。長期的なビジョンは『社会的なニーズを捉え、訪問介護ビジネスにおける“プラスアルファ”を作る』ということです。
新しい方法論を実現するには、ディファクトスタンダード化するためにも、新しいビジネスを作りつづけることが必要。新しい提案をもっと、世の中にしていきたいんです。具体的には、住み慣れた地域社会で、ご家族とともに安心して暮らせるための在宅サービスの提供や、社会的評価の高い企業となるための継続的努力、そして医療福祉分野の構造改革にともなった新規事業への挑戦を念頭に置いています。「このスタッフなら、自分を大切に介護してくれる」と期待してくれる、成長性・収益性の高い会社となるのが目標! そのためにも、半期ごとに満足度調査を行い、顧客ニーズにもとづく、改善点のフィードバックを実施しています。それを評価項目として制度化し、サービス内容・管理業務などすべての整合性を高め、標準化レベルを向上させていきます。誰が提供しても一定のサービスレベルが保たれる。そんな日が来ることを、期待しています。
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ありがとうございました。最後に学生に対するメッセージをお願いします。
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待っていても、発言権はまわってきません。入社1〜2年目の若い頃に、大きな可能性に挑戦できることはチャンスでもあります。次の世を支える役割について自覚し、どのようなことをすれば社会に還元できるのかを考えてください。その準備をするのが、皆さんに託された仕事なのです。
平穏無事に過ごしてもらえることだけが、介護ではありません。プラスアルファの付加価値を導ける介護事業を、拡大していけるかどうかが問われています。高齢者の気持ちを汲めるような、知識と能力のある若手と出会えることを楽しみにしています。
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