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自分自身の将来も、その手でデザインしてほしい。
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「できるだけ早い段階で“目標”を見つけてほしい。そのためのバックアップは惜しみません」。
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株式会社インフォビジョン
代表取締役社長
中井 哲雄
(53歳)
Tetsuo Nakai
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大学卒業後、アパレルメーカーで営業として活躍する。30歳の頃、クライアントの展示会集客のために販促物の制作を試みたところ、大きな反響を獲得。以来デザインの仕事に興味を持ち始める。35歳でグラフィックデザインの世界へ入り、大手メーカーなどのパンフレット制作を経て、1997年、インフォビジョンの親会社である共立印刷へ転職。マルチメディアプランナーとして新規営業のサポート兼制作ディレクターとしてクリエイティブに関わり、企画・デザイン部門の統合を経て、2002年にデザイン&DTPのハウスプロダクションとして分社。その後代表取締役に就任する。趣味はギター(時々ライブも)、テニス、料理、DIYと幅広い。
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出版物の企画・デザインからDTP・製版に至るまで、印刷に用いるデータ作成の一連の工程を担うインフォビジョン。同社の指揮を執る代表・中井氏の経歴は「デザイン一筋」かと思いきや、意外と「遅咲き」だった――。そんな同氏の仕事観、そして新しく迎え入れるルーキーへのメッセージを伺った。
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はじまりは、自分で和紙を買ってきて切り貼りした「コラージュ」だった。
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デザインとの出会いについて、教えてください。
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今から23年前、30歳の時です。当時、アパレルメーカーで営業をやっていた私は、クライアントであるブティックとインポートブランドのタイアップイベントを開催するにあたり、集客につながる仕掛けを考えていました。ふと思いついたのが会場に飾るボードやパネルなどの販促物。それで、実際に自分で作ってみたところ、思いのほか反響が良かったんですね。特に凝ったことをやったわけではないんです。簡単なグラフィックにブランドのロゴ、日程を描いただけ。「何もないよりは、いい」程度のものでした。
それで味をしめて(笑)、翌年にはダイレクトメールも試してみました。“展示会に来てください”という招待状を作ったんです。絵の具は使いこなせないので、原画は紙のコラージュでした。結局どれくらいの動員効果があったかはわかりませんが、お客様からはものすごく喜んでいただけました。当時はまだダイレクトメールなんて珍しかったせいか、出来はともかくモノ自体がインパクトあったようです。何より、やってる自分が一番楽しんでいましたね。画材屋で和紙や糊を塗る刷毛を選んだり、コンパネを切ったり、そんな作業すべてが単純に嬉しくて。仕事が終わった後、徹夜して作りましたよ。今思うと、これが私にとっての「“デザインすること”との出会い」です。
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35歳、デザイナーとしてのデビューを切る。そして50歳、経営者へ。
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ちょっと遅めのスタートだったんですね。
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そうですね。その4年後にはアパレルメーカーを退社して、デザインの専門学校に通いました。学校からの紹介とかコネを狙って入ったんですが、これがまったくダメ。で、焦って求人誌をめくってはいろんなプロダクションを回っていたんです。でも、まったく相手にされなくて。なんとか小さなプロダクションにもぐり込みました。版下といって、印刷用の最終段階の原稿を作る会社だったんですが、そこでやっていたのはトンボを入れて版下台紙を作ったり、写植という、印刷用の文字を貼り付けたり。もちろんMac以前。まあ、デザインとはほど遠い仕事でしたね。
結局1年位働いて、企業のデータ管理ビジネスを行なう会社に転職しました。手がけていたのは大手鉄鋼メーカーや家電、官公庁など、大手有名企業の会社パンフレット。「デザインで食っていく」とはどういうことなのか、そこで初めて知りました。
そして42歳の時に共立印刷に再転職しました。職種名は「マルチメディアプランナー」。今で言う“クロスメディア”ですよ。「マスからワン・トゥ・ワンへ」など、マーケティング手法のトレンドでした。ただ、理屈はあっても実態がないから、好きなことが言える。で、「うちならこんなことができますよ」と提案するための企画書づくりとプレゼンテーターをしていました。
その後しばらくして、共立印刷内で事業部ごとに分かれていたデザイン部署を統合することになり、DTPなどプリプレス全体を加えてインフォビジョンとして分社。なんか、実にいろいろなことをやってきた感じです。
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大切なのは、アートではなくビジネスとしてのデザイン。
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経営者になって、デザイナーに対する考え方は変わりましたか?
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「プロジェクトを動かすワンピース」という見方が強まったように思います。デザインは「アート」でもあるのですが、デザイナーに必要なのは、「アートではなくビジネスなんだ」という自覚です。仕事はクライアントが求めることを理解し、決められた期日内に絵を描くことです。それがアーティスティックなものであれば、ありですが、いつもそういうわけではない、ということを理解しようという気持ちが大切だということです。綺麗な絵は描くけど、崩れた絵は描かないとか、自分の好き嫌いで仕事をすることはできます。ただ、何の実績もなくそれをやっていると仕事の方がついて来なくなりますよ。要は、理解と対応の問題なんですけどね。かたや、そういう場合にこそ必要とされるのがディレクション能力であって、クライアントの要望に応じ、その都度最適なスタッフをキャスティングするセンスをディレクターが持っていればいいわけです。
プロフェッショナルとしての仕事ができるクリエイターと、適材適所の人選ができるディレクター。両者がいてはじめて仕事が成立するというのが、自分たちのデザインビジネスだと思ってます。
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では、貴社の強みはどういうところにあるのでしょうか。
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一言で言えば、「現場」が多いということでしょうか。デザインからDTP、製版まで、プリプレスセンター的な編成を持っているので、「印刷媒体ができ上がるまで」トータルに携われます。また、DTP部門においては、最新の機材やソフトを扱える点も強みだと思います。システム系の専用ソフトを使った誌面制作など、中小のプロダクションでは経験できない領域にも踏み込めますしね。まんべんなくスキルを磨けるということは、将来の進路を考えた時の選択肢の多さにつながります。
顧客にとってのメリットとしては、デザインだけ、とか印刷データ作成だけ、と作業が分断されない分、仕事を任せやすい点でしょう。小さな専門店より、何でも揃うショッピングモールに行ったほうが便利という気持ちと同じです。実際、仕事の依頼はフィニッシュまで通しという形が多いですね。
そして、多様な媒体を経験できることは、個人にとっても強みになるはずです。緻密なDTP作業を要する専門カタログもあれば、デザイン要素の多い通販誌の仕事もあります。最初の1年間は、何でもやっていただきます。まず、業界について、仕事について、幅広く知ること。それが将来への第一歩だと思うからです。
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ディレクション力、プロデュース力の強化が、会社の成長になる。
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今後のビジョンについてお聞かせください。
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ディレクション力とプロデュース力を強化していきたいと考えています。具体的には、自社のリソースを用いて「できること」と「そうでないこと」を明確化し、確実にビジネスへつなげていける人材の育成ですね。今回入社される方には、そういったミッションを目指す道をご用意しています。
とはいえ、DTPオペレーターにせよ、デザイナーにせよ、ただ長く続けているだけで次のステップに進めるとは限りません。たとえばアートディレクターになるには、次の4つのスキルが必要です。まず、クリエイティビティ。次に、営業的なセンス。そして、クライアントの求めるものを確実にデザイナーに伝えるコミュニケーションスキル。そして最後に、適材適所でクリエイターを指名できる選択眼。
これらを養うには、何はさておき場数が必要です。まずはデザイナーとしての経験値を上げていかないと厳しいでしょう。少なくとも4年から5年はかかります。入社後、オールマイティに携わっていただくと申し上げたのはそういった理由からです。逆を言えば、4〜5年後には必ず「私はこうありたい」というものを見極めていただきたいと思っています。
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4〜5年後には、「将来」をその手でつかんでほしい。
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「自分はこれがやりたい」と言えることが大切だ、ということですか?
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そうです。リミットは、25歳か26歳ですね。その年齢を迎える頃に将来の方向性を語れるか否か、それがその後の人生を決めると思います。これはスロースターターだった私自身、身をもって感じていることです。もっと早い段階で「自分の仕事はコレだ!」と気づけていたら、もっと刺激的な仕事ができたかも知れない…などと勝手に思ってますが、残念ながら時間は取り返せない。これ、大事ですよ。
そして、将来の方向性を決めたとき、もしインフォビジョンの中になければ外へ飛び出すべきです。誰しも可能性はあります。やりたいことをやるのがイチバンでしょう。自分もそうしてきましたから。そのために経験を積み、やり通せる力を身につける。そうなったら「卒業」ですよ。次の現場に移ってさらに自分を磨くべきです。そうなるためのバックアップを私がしてあげないと、と思っています。自分の人生は自分の意思で切り拓く。そのことを念頭に置きつつ、この世界に飛び込んできてほしいですね。
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ありがとうございました。最後に学生に対するメッセージをお願いします。
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今、就職活動中の学生さんに伝えたいことは「何でも経験してきてほしい」ということです。20歳には20歳の、22歳には22歳の感性があります。その時にしかできないことを、精一杯やっていただきたいのです。デザインにはその人の“人となり”が出ます。そして“人となり”というのは、今までに何を考え、何をやってきたか、つまり体験の総量で決まると思うのです。恋でもいい。音楽でもいい。すべて自身の五感で感じとったことを、これからのベースとしてほしいですね。
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