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商社(専門商社(アパレル・ファッション)) / 流通・小売(専門店(ファッション))
最終更新日: 2007/12/06
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プロの仕事研究
イタリア生まれの『ETRO』ブランドを名古屋に広める、ショップ運営のプロ。
営業・販売系−店長
ジェイアール名古屋タカシマヤ エトロブティック/店長
脇山 麻里 (31歳) Mari Wakiyama
入社11年目 / 大阪国際女子短期大学 家政科 (現:大阪国際大学短期大学部) 出身

プロフィール
『ETRO』の上品なデザインにひかれて入社した。ファッションアドバイザーとして『心斎橋店』の配属となり、3年目から店舗のサブリーダーを務める。2004年より店長として名古屋に異動。毎月、前年同月比を越える売上を上げる店舗へと成長させた。2007年からは、イタリアでの商品買付けも任されている。

プロローグ
20万人近くの人々が日々行きかうJR名古屋駅。この東海エリアの主要ターミナルに直結した大型百貨店の中に、『エトロブティック』がある。黒を基調としたシックなたたずまいの店内には、イタリアのファッション・シーンを席巻した『カシミール模様』や『ペイズリー柄』の独創的な商品が並んでいる。エトロジャパンが展開する全国の店舗の中でも、3ヶ所しかない強化店舗の一つに指定されている名古屋店。その店長を務めているのが、脇山麻里である。

「自分の手でブランドを広めたい」。それが脇山の入社理由だった。海外の高級ブランドがどう日本に浸透していったのかを知るにつれて、奥深いブランドビジネスに携わりたいという想いに突き動かされた。そして出会ったのが、『ETRO』ブランド。配属された大阪・心斎橋店では、自分が心ひかれた生地やデザインを一人ひとりのお客様に伝えていった。それは商品を通じて、『ETRO』ブランドを広めていくということ。想いは結果へとつながり、3年目にはサブリーダーを託された。そして、「名古屋の店長を任せたい」という打診を受けたのは、脇山が入社7年目を迎えた26歳の春のことだった。

ブランドを広めるため、ショップの売上増を託される。 1
生まれ育った大阪を離れ、初めて名古屋に住み、初めて店長を務める。不安もあったが、期待も日増しに大きくなっていった。全国のエトロショップの中でも名古屋は高い売上を誇っており、「もっと売上を伸ばせる」と本社は見ていたのだ。名古屋駅という大型ターミナルと連結しているため、人通りが絶えることはない。販売実績を見ても、衣類からアクセサリーまで偏りなく幅広い商品が売れていた。ポテンシャルのあるショップを任されたことはうれしくもあり、同時にプレッシャーも感じていた。

名古屋店のスタッフは5名。みな女性だ。年齢も近いため、脇山はすっとその輪に入ることができた。スタッフと一緒に荷ほどきをして、開店すると積極的にお客様に話しかけた。「一見ベーシックなスタイルですが、襟の裏地を変えているんです」など、『ETRO』の良さとこだわりを伝え、スタッフの接客を見ては自らの経験を活かしてアドバイスをする。さらに働きやすい環境づくりも進めた。例えば、商品台帳の整理。「この商品、ある?」とお客様から聞かれても、スタッフが即答できていなかった。それを見た脇山は休日にラベルシールを買い込み、台帳を分類・整理して効率化をはかっていったのだ。

店長となった初めての月、売上目標を外してしまう。 2
「自分自身が本当に好きな『ETRO』というブランドを、その商品を、一人でも多くのお客様に知ってもらいたい」。入社した時から、脇山の想いは変わらない。ただ「自分ひとりでできることは限られている」と脇山は考えていた。だからこそ、一緒に『ETRO』ブランドを広めてくれるスタッフへの感謝の想いがあったのだ。店長だから何もしないのではなく、準備から接客までスタッフと一緒に同じ目線に立って取り組んでいった。順調なスタートを切ったかに見えたのだが…

接客と店長の役割を同時に進めなければならず、売上の責任を負うプレッシャーもある。思うように仕事が進まず、店内の動きもどこかギクシャクしていた。それは売上にも表れ、初月の売上目標を外してしまったのだ。月ごとの売上は本社で集計され、その数字はショップの実績として残る。店長としての評価にも直結する。「これからです。見ていてください」と、悔しさをかみしめながら本社に報告する脇山。だが、同じ危機感を持っているスタッフはいなかった。目標や売上といった『数字』への意識が弱く、中には売上目標を把握していないスタッフもいた。スタッフの意識変革という課題が脇山にのしかかった。

スタッフの意識を変え、毎月売上が伸びるショップへ。 3
意識を高めるために脇山がとった行動は、数字を言い続けること。翌月からは1日あたりの売上目標を算出して開店前に発表していった。だが、ただ数字を押し付けるのではない。「どう思う?」とスタッフの意見もくみ取って商品の案内の仕方やディスプレイを工夫。「売れて良かったね」「あのお客様、こんなに買ってくれたね」とスタッフの成功を祝福し、モチベーションを上げる。同じゴールを目指して、一緒に工夫し、喜びをわかちあう雰囲気をつくっていったのだ。

その結果、翌月の目標を見事達成し、脇山はスタッフと喜びをわかちあった。売上が伸びたということは、それだけ多くのお客様に『ETRO』の良さを知ってもらえたということ。それが何よりもうれしかったのだ。この結果が自信となり、スタッフに『数字』への意識が芽生えていった。その後も一度も目標を落とすことなく、常に前年同月の売上を越えるショップへと生まれ変わったのだ。

―― そして、2007年、脇山たちの実績が認められ、名古屋店はエトロジャパンの強化店に指定された。全国でも、東京の新宿店、銀座店についで3店目。今まで以上に幅広い商品を扱えることになり、より大きなミッションが託されたのだ。順調に業績を伸ばし続ける脇山たちであったが、同年秋、大きな壁が立ち塞がった。近隣エリアにライバル店がオープンするのだ。

『ETRO』ブランドを発信し続けるショップが生まれる。 4
ライバル店オープンの影響は数字に如実に表れ、月末に近づいても売上は伸び悩んでいた。「ここで売上を落とせない」。脇山をはじめスタッフ全員の共通する想いであり、諦めているものは誰ひとりいなかった。「絶対達成しましょう。脇山さんに恥をかかせないためにもがんばります」というスタッフの言葉に、脇山の胸はうちふるえた。目標を達成するために全員で考えたアイデアが、お客様一人当たりの売上単価を上げること。上下の服にアクセサリーなどコーディネートを考えてセット販売を進めた。さらに個人個人が自ら売上目標を設定して、接客に臨んだのだ。閉店後は達成者をほめたたえ、全員で月末の最後の一日まで目標を追いかけていった結果…

「今月の売上は、前年同月比120%で達成です」と発表する脇山の声は、スタッフの歓声にかき消された。どんな状況でも、売上目標を達成するショップをつくりあげた脇山。それは、『ETRO』というブランドを、人々に発信し続けるショップをつくりあげたということなのだ。

エピローグ
脇山が名古屋店の店長となって4年目、スタッフは大きな成長を遂げ、ショップは脇山の手を離れて自然と回るようになっていた。そして、脇山も次のステップへ歩み出していた。社内公募を通過し、全国で3名しかいないイタリアでの商品買付けメンバーに選ばれたのだ。

「お客様の声を知っているのは現場の私たち。その経験を活かして、買付けの段階でデザインや色目についてMDに意見を伝えています。高級ブランドということもあって年配のお客様が多いのですが、若い方にも合う商品を増やしていきたいですね」と語る。脇山の想いは今も昔も変わらない。『エトロの良さを多くの人に知ってもらう』ために、脇山は新たなキャリアを歩み始めている。
「細部にまでこだわってつくりこまれたエトロの商品。どう伝えたらその良さが伝わるか。レイアウトも含めて、工夫しています」。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
大学で『秘書士』について学び、卒業と同時に資格を取得したという。「高級ブランドである『ETRO』には、年齢層もステータスも高いお客様が多くいらっしゃいます。店舗では商品以上に、私たちの立ち居振る舞いが見られるもの。『秘書士』の講義を通じて学んだ、人との接し方や言葉づかい、マナーは今も活きています」。
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