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メーカー(鉄鋼・金属・非鉄金属) / インフラ(建設) / メーカー(住宅・建築)
最終更新日: 2007/10/01
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プロの仕事研究
新製品の性能を証明する「評定取得」で、使用価値を高めた製品開発のプロ。
技術系−製造技術開発・生産管理
製品開発課
小野川 章啓 (26歳) Akihiro Onogawa
入社3年目 / 豊橋技術科学大学大学院 工学研究科 建設工学専攻 出身

プロフィール
東京鉄鋼に勤める大学時代の先輩に、話を聞いたのがきっかけで同社に興味を抱くようになった。建設を専攻して学んでいたことと、物作りに携わりたいという想いで入社を決意する。入社後、製品開発課に配属。製品の評定取得に1年間携わってきた。現在は、新製品の開発を担当し、物作りのおもしろさを肌で感じている。

プロローグ
鉄筋と鉄筋の繋ぎ役となる「機械式継手」。東京鉄鋼が誇る製品のひとつであり、ビルやマンションの建設に多く使われている。近年、都市部では高層ビルや高層マンションの建設が進んでいる。それを支える外壁の柱に、多くの鉄筋を使用。しかし、一本の鉄筋で高層建築物を建てるには、何十メートルもの長さが必要になる。鉄筋を現場に運び込むこと自体、困難である。その問題を解決したのが、「機械式継手」。一本の長さを短く切断した鉄筋でも「機械式継手」で繋げることによって、一本の鉄筋と同様の役割を果たす。さらに、製品を溶かして繋ぎ合わせる圧接継手とは異なり、施工の簡易さが挙げられる。熟練された腕は必要ない。建設現場の施工性を高め、工期の短縮にも一役買っている製品である。

製品開発課に在籍する小野川は、製品の評定取得を担当していた。新製品が開発される度、法律の基準を満たした製品か、試験を通じて第三者機関に証明するのが評定取得の業務である。「機械式継手」は、工法に合わせて数種類の製品が市場に出ており、今回、新たなニーズによって新製品が開発された。評定を行う小野川の前に、その試作品が姿を現した――。

新製品の価値を高める評定取得のミッション。 1
「そろそろ開発の現場で実践してみるか」。先輩の一言に小野川は心躍らせた。入社して3ヶ月、同社の製品知識を書籍や資料から学ぶ日々が続いていた小野川にとって願ってもないこと。数日後、小野川は開発メンバーの一員に加わった――。

「小野川には、新製品の評定取得を任せる」。小野川は初めて責任の重さを感じた。評定を取得することは、第三者機関に製品の性能が認められるということ。それによって、製品の信頼性が向上して売上の拡大にも繋がるのだ。新製品の試験には、緻密な作業が求められた。小野川はまず、試験に必要な資材の発注から行った。性能確認用の試験体は、色々なパラメータを組み合わせて100体以上作製しなければならない。この性能試験は、「機械式継手」に鉄筋をはめて、試験機の力で引っ張っても問題がないかどうか判断する。鉄筋が抜けてしまえば、継手に欠点があるということ。実際に建設現場同様の条件にするため、それに合わせた数の鉄筋を発注した。

性能試験に失敗は許されない。 2
今回、開発された新製品は「機械式継手」に充填するモルタルである。このモルタルは、通常より流動性が優れている為、注入工法の拡大や施工性の向上が期待できる製品である。モルタルとは、骨材、セメント、水を練り混ぜたもの。新製品の性能確認用の試験体作製は、継手に鉄筋を挿入して隙間に開発したモルタルを充填する。その後、モルタルが一定の強度に達するまで、保温された部屋に試験体を置いて時を待つ。

――1ヶ月後、性能試験の準備は整った。「小野川、この試験機には莫大なコストが掛かっている。注意して扱ってくれ」。先輩の注意に、小野川は再度気を引き締めた。「このボタンを押すと・・・」と先輩が操作方法をつきっきりで指導してくれたが、操作手順の複雑さに小野川は不安を隠せなかった。ノートにメモしたことは、帰宅後にも復習し、試験機をイメージしながらシミュレーションを行った。その成果もあって、実際に試験機を扱う時には、物怖じすることなく試験を進めることができていた。

小野川の業務が、評定取得の鍵を握る。 3
試験機の扱いにも慣れ始めた矢先、小野川はボタンを押す順番を誤ってしまった。「ウィーン・・・ウィーン」。これまで見たことがない試験機の動作に、背筋が凍りついた。その瞬間――。試験機に設置していた鉄筋が、「く」の字に曲がってしまったのだ。試験機は、鉄筋を圧縮していた。小野川は、すぐさま先輩の所に駆けつけて状況を報告し、謝罪した。「鉄筋は、引っ張りには強いが、圧縮には弱い素材なんだ。勉強したと思って、今後同じミスを起こすなよ」。小野川はそれ以降、細心の注意を払い、残る試験体の強度を計り続けた。

――性能試験を終えた小野川が、次に取り掛かったのは報告書の作成。第三者機関となる建築の有識者に向けた資料である。性能試験の結果を元に、製品の用途から性能をまとめた報告書を60ページにわたり書き続けた。「この報告書も評定を取得する鍵になるはずだ」。新製品の評定取得に向け、小野川は報告書の構成から文章の表現など細部にもこだわった。

歓喜を呼ぶ、一枚のFAXが届く。 4
新製品に携わって3ヶ月が過ぎたある日。有識者を相手に、製品のプレゼンテーションを行う部会が開催された。小野川は、初めての参加になる。静粛な雰囲気に飲まれそうになったが、開発者の一員であるプライドが小野川を勇気づけた。製品について有識者から指摘が入る。開発側の視点では見えにくい実際の現場での施工性や建築物に利用したときに生じる問題点だった。1回目の部会で評定を取得できず、有識者の指摘を受けた点の改良を行った――。

――3ヶ月が経過し、ようやく3回目の部会で有識者の反応の良さが伺えた。「結果は、会社の方にFAXでお送りします」。FAXの音が鳴るたびに部署内の緊張感が伝わっていた。そして――。「評定書が届いたぞ!」。部署内は歓喜に沸いた。初めて見る評定書に、小野川は感極まっていた。「自分も新製品に貢献することができたんだ・・・」。

現在、この製品は様々な建設現場での作業効率を向上させている。開発者としての第一歩を踏み出した小野川の表情は、満足感に満ち溢れていた。

エピローグ
その後、製品知識と評定取得の経験を重ねた小野川は、部会で有識者に説明を行っている。「初めて部会に参加した時は、専門用語が飛び交い、ただ圧倒されるばかりでしたね。知識が無いと、有識者から質問されても答えることができないんですよ」。

現在は、新製品の開発に一から携わる小野川。「いつか、自分の開発した製品が知名度のある高層ビルに使用されたら嬉しいですね。自分が製品化に関わったんだと、自慢したいです」。新たな目標の実現に向けて、開発の手を緩めることなく日々奔走している。
小野川が操作しているのが、製品の性能を計る試験機。「一瞬一瞬の作業に気は抜けません」と入念な確認を怠らないことが信念。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
在籍していた研究室と共同研究を行っていた企業で、インターンシップを行っていた。その時に、社会人である目上の方々とコミュニケーションを取った経験が現在の仕事にも活かされている。分からないことがあれば、先輩に臆せず聞くことができるのも大学時代に築いた礎が役立っているのだ。
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