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メーカー(鉄鋼・金属・非鉄金属) / インフラ(建設) / メーカー(住宅・建築)
最終更新日: 2007/10/01
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プロの仕事研究
取引先との商談から課題を把握し、施工法に応じた製品の提案をする技術営業のプロ。
営業・販売系−技術営業・システム営業
技術部/技術営業
山岡 美博 (26歳) Yoshihiro Yamaoka
入社3年目 / 千葉工業大学 工学部 建築都市環境学科 出身

プロフィール
大学では建築の構造について学び、基礎知識は理解できるようになっていた。在籍していた研究室の教授に薦められ、東京鉄鋼の説明会に参加。その時に感じた社内の雰囲気や事業内容に惹かれ、入社を決意。入社後は技術部に配属され、技術営業として、建設現場に必要な製品の提案を行っている。

プロローグ
「社に帰りまして、確認の上、再度ご連絡させて頂きます」。それが山岡の精一杯の返答だった。技術営業に配属されて、半年が経つ山岡の取引先との初めての商談だった。今まで、先輩の商談同行から取引先とのやり取りを学んでいたが、実際に自身で行う商談は、先輩のようにはいかなかった。「・・・その説明につきましては、後日ご連絡させて頂きます」。机の上には、製品カタログが並べられている。カタログに掲載されている製品の説明については、商談前に入念な準備をしてきたはずだった。しかし、質問の内容はその枠を超えており、製品を実際の建設現場でどう使用するのかまで、把握しきれていなかった。おろおろする山岡を見て、商談に同席していた先輩がたまらず救いの手を差し伸べた。「お客様、こちらの製品はですね――」。結局、商談の間、取引先の視線を自分に戻すことはできなかった。

「山岡、お前はお客様の質問を全部頭で覚えるつもりか。ノートくらい取れ!」。基本的なことさえ、疎かにしていた自分に、悔しさを感じるばかりだった。その日を境に、山岡の仕事に対する意識が変化し始めていた――。

独り立ちの瞬間は、いきなりやってきた。 1
初めての商談から2ヶ月が経過する頃には、商談を重ね、日増しに製品に対する知識が身に付いていた。同社の製品は、マンションやビルの建築に要する鉄筋や、鉄筋と鉄筋を繋ぐジョイントなど建築工事に欠かせない。山岡は、それらを一から覚えた。カタログに書かれている基礎知識はもちろんのこと、建設現場で使用する方法まで、商談を通じて取引先が欲しい情報の傾向を掴みながら学習していった。技術営業の仕事は、同社製品のニーズがありそうな企業に電話でアポイントを取り、製品の説明をして興味を持ってもらうことから始まる。さらに関心を示す企業には、建設現場に足を運び実務的な提案を行う。幅広い知識が要求される仕事である。

ある日、山岡は取引先のリストを確認する中で、気になっていた企業があった。「近々建築工事をするけど、その時になってみないと分からない」と製品の提案を先送りにしていたA社だった。山岡が近況を伺うと、「すぐに来てもらえるか?」とA社の現場担当者から切迫した返事が返ってきた。

頼れるのは、自分自身の知識のみ。 2
「すぐにお伺いします」と勢いよく返事した山岡だったが、部署内ですぐに外出できるのは山岡だけだった。まだ一人で取引先の元に足を運んだことはない。今まで、先輩が同行してくれていたことに、安心感があった。「山岡、行けるのか」。先輩の不安げな問いかけに、「大丈夫です、行きます!」と答え、日頃商談に持っていく資料だけをカバンに詰めて社を飛び出した――。

「本当に大丈夫なんだろうか」。現場に向かう途中、山岡は自問自答していた。初めての商談から成長を実感していたが、自らの提案で受注に繋がったことはなかった。「もう先輩に、甘えているわけにはいかない」。少しでも早く独り立ちして商談を成功させたい、という想いが山岡を奮い立たせた。

山岡の目の前に現れたのは、街の一角にひしめく建設現場。12階建てのマンションが建設される予定である。「いやぁ、山岡さん。よく来てくれたね」。A社の現場担当者は、山岡を待ち侘びている様子だった。

12階建てのマンションの建設に、山岡が提案した製品とは・・・。 3
「このマンションなんだけどね・・・」。山岡は、現場担当者が懸念している問題にじっと耳を傾けた。通常マンションやビルを建てる際、柱や梁に鉄筋を使用する。建物の高さや設計時の強度に応じて、鉄筋の本数や太さは異なる。今回、建設するマンションは12階。一般的に、10階以上のマンションは耐震性を考え、太い鉄筋を使用する。しかしこのマンションには、柱の幅を狭くすることが求められていた。柱や梁が接合する部分は、接合先の柱や梁に鉄筋をフックさせる形で曲げ加工を施さなければならない。しかし、太い鉄筋で曲げ加工を行うと曲げた部分の鉄筋同士が干渉してしまう。「耐震性を考えると、鉄筋の数を減らすわけにはいかないんだよ。だけど、施工に手間取って時間が掛かってしまう・・・」。現場担当者の苦悩な表情に、山岡は考え込んだ。――「プレートナットという製品をご存知ですか」。山岡は、鉄筋の端をネジ状の金物で納めることができる製品を提案した。この製品を使用すると、曲げ加工せずに鉄筋を定着させることができるので、施工の簡略化、時間の短縮にも繋がるのだ。山岡は、その後も製品の説明を続けた。

初めての単独商談が、初めての受注を呼んだ。 4
「この製品は、今回の施工にうってつけだよ」。現場担当者は、カタログを見ながらうなずくばかりだった。「よろしくお願いします。ご連絡いただければ、見積もりをお持ちします。」――現場からの帰り道、山岡は緊張から解放されていた。「一人で無事に提案することができた・・・」。安堵の表情で社に戻ったのだった。

――「山岡、A社からプレートナットの発注が来たぞ」。デスクワークをしていた山岡の元に吉報が届いた。マンションの施工法に合わせて製品を提案し、メリットを講じてくれた山岡だったからこそA社は発注を決めたという。朗報を聞いた山岡は、デスクで一人胸を撫で下ろしていた。「とりあえずよかった・・・」。初めて一人で商談を行った案件が、山岡の初めての受注になったのだった。製品を販売した後のアフターフォローも技術営業の仕事。使用方法に関する電話が入れば、すぐに現場へと駆けつける。現在、マンションは完工しており、人々の生活空間となっている。住人が安心した生活を送る陰には、山岡の存在があるのだ。

エピローグ
「製品の知識を学ぶだけでなく、お客様が何に関心を持っているか知ることが必要なんですよね。だから商談では、お客様のぽろっと言った一言が、今まで気付けていなかった製品の提案に繋がったりします。商談では、お客様にどこに関心を持っているのか素直に聞くことも大事なんです」。

山岡は商談の度に、自分の提案の仕方について省みる。一つひとつ、改善点を洗い出し、次の商談に活かすことを続けているのだ。「見直すところが見つかるということは、自分がまだまだ成長できるということ」。製品と知識を活かして建築物を支えていく技術営業の魅力を感じながら、仕事に汗を流している――。
「何十階もある高層ビルに携わることが目標ですね。当社の製品と私の知識で、建設に一役買いたいです」と山岡は言う。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
学生時代は、建築を専攻していた山岡。建築物の構造について、実験しながら学ぶ日々が続いた。実際に鉄筋を配筋し、コンクリートを打設して試験体を建てる。その過程の中で、建築の基礎知識を培うことができた。おかげで、商談中の会話に幅が広がり、製品を提案する上で助けになっている。
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