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メーカー(自動車・輸送機器)
最終更新日: 2007/10/11
(マークの説明) 正社員 株式公開
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プロの仕事研究
社内初の製品立ち上げに弱冠25歳で挑み、見事成功を収めた生産技術のプロ。
技術系−製造技術開発・生産管理
生産技術部
松井 聡一 (28歳) Soichi Matsui
入社6年目 / 豊橋技術科学大学 出身

プロフィール
石川県出身。大学卒業後、将来は地元に戻りたいとの考えから、能登工場を構える武蔵精密工業に入社。もともと車好きだったことも気持ちを後押しした。入社後はBTC(現・技術2課)に配属となり、試作業務を担当。2005年10月、海外工場で製造される新規製品の立ち上げを任され、見事量産体制の構築に成功する。

プロローグ
「タイ工場に、二輪車のカムシャフトケースの生産ラインを立ち上げてくれないか?」。入社2年目の松井はある日、上司から驚くべき打診を受けた。一瞬何を言われたのか分からなかったが、次の瞬間に頭をよぎったのは「無理」の二文字。なぜなら、四輪車ならともかく、二輪車のカムシャフトケースの製造は、武蔵精密工業にとって初めての試みだったからだ。しかも、生産開始までの期間は短いうえ、会社側の期待も相当高いときている。若い松井でなくとも、この打診に言葉を失うのは無理もなかった。

カムシャフトケースとは、文字通りカムシャフトを固定するケースを言う。カムシャフトとは、回転することにより、吸気バルブと排気バルブの開閉をコントロールする金属製の軸。ホンダ車のVTECエンジンなどに採用されているため、ホンダと長年取引を続けている武蔵精密工業にはノウハウがあった。とはいえ、四輪と二輪では勝手が違う。打診を断るのは簡単だが、果たしてそれでいいのか……。松井はしばらく逡巡した後、静かに口を開いた。「やってみます」。

まったくゼロからのスタート。 1
カムシャフトケースに限らず、新製品を立ち上げるには、生産予定数から新しい設備が必要か、既存の設備で間に合うかなどを慎重に検討することが必要だ。また、検討内容に応じて、新しい生産ラインを立ち上げるための手続きや既存設備を改造する段取りも組まねばならない。だが、もちろん、いきなり新規製品の生産ラインを立ち上げられるはずはない。まず松井は、現地(タイ)から自分の手元に届いた製品の図面をもとに、試作品をつくるところからスタートした。

予想に違わず、図面通りに試作品を仕上げるのは困難を極めた。なぜなら、30におよぶチェック項目で、寸法のバラつきを±100分の3ミリ以下に抑えなければない部品もあったからだ。その上、じつは松井にはこのプロジェクトが始まるまで、旋盤やNCなどの工作機械を使用して金属を加工した経験があまりなかった。そう、彼にとっては、加工業務を行うことすらもほぼ初めての挑戦だったのである。

寸法の精度がいっこうに上がらない。 2
戸惑いながらもなんとか工作機械の使い方を覚えつつあった松井だが、いっこうに製品の精度は上がらない。金属を削る刃物をこまめに代えた。切削条件を変えて加工を行った。直進性に優れたドリルを試した。穴を開ける場所を少しずつずらした。ドリルのスピードを速くしたり、遅くしたり…。何度も工夫を重ねた。問題が起これば原因を探し、改善につながる仮説を立てて実践した。だが、改善される気配すら感じられない。タイに生産設備を据え付けに行く期日は迫りつつある。焦りは募るばかりだった。

自分の力だけでは難しいと考えた松井は、上司や先輩だけでなく、設備メーカーの方々にもアドバイスを求めた。彼らは、素直に耳を傾ける松井に好意的だった。松井が迷い、誤った仮説を立てそうになったときには、理にかなった意見を述べて、正しい方向へと導いてくれた。教わった内容を吸収し、咀嚼する松井。すると、それまでなかなか出なかった寸法の精度が、少しずつ高まり始めた。

次に立ちはだかったのは、加工時間の短縮。 3
たしかに時間はかかったが、寸法の精度にはある程度目処がついてきた。このまま行けば、目標としている基準値をなんとか満たせそうだ。だが、それでもまだ折り返し地点に過ぎない。なぜなら、松井の行く手にはもう一つの問題が立ちはだかったからだ。それは加工時間の短縮である。年間の目標生産数から逆算して、一月あたり、一日あたりの生産数を算出。さらには一つの部品をつくるのに何秒間かかるかまでを割り出して目標時間を設定する。この目標時間にいかにして到達するか。まわりの協力を仰ぎながら日々仕事に打ち込むが、ゴールはまだ遥か彼方にあり、なかなか見えてこない。焦れば焦るほど空回りし、時間は無情にも過ぎ去っていく。そして日1日と期限が迫ってくる…。

結局、日本国内では完璧な生産ラインを立ち上げることはできなかった。やり残した分は、舞台をタイ工場へ移してやり切るしかない。松井は気持ちを切り替えて、タイの工場で生産ラインを立ち上げるため、中部国際空港からバンコクへと飛んだ。

なんとか量産にこぎつけた理由。それは――。 4
「なんとしても日本での遅れを取り戻さなければならない」。タイの工場に着いてからも松井は必死だった。うだるような暑さだったが、構ってなどいられない。到着後さっそく、国内にいる上司や現地の駐在員、そして共にタイに渡った先輩社員の協力を得て、加工時間の短縮を試みた。同時に、松井は、現地の従業員に生産ラインの動かし方を教えるミッションも抱えていた。言語が異なるため、コミュニケーションはすべてジェスチャー。一つひとつの設備の使い方、注意点などを、時間をかけて根気強く教えていく。そして、タイで過ごした時間が2ヶ月を過ぎる頃、一通りの仕事を教え切り、タイのスタッフは設備を扱えるようになった。その頃、目標加工時間を満たす方法もついに見つけ出し、あとは現地のスタッフに指示するのみとなっていた。

いよいよ日本に帰国する前夜。ささやかながら、現地の駐在員やスタッフたちが懇親会を開いてくれた。松井は、今日という日を迎えるまでの1年半を思い起こしていた。「まわりの助けがあったからこそ、やり遂げることができたんだ…」。食べなれたタイ料理、タイのビールが、その夜はやけに沁みた。

エピローグ
「最初にこの仕事を言い渡されたときはめちゃめちゃ不安でしたし、最後までどたばたでしたよ(笑)」。と当時を思い出して微笑む松井。「無事に量産体制を築けたとはいえ、本音を言うと、若干消化不良かもしれません」と振り返る。

だが、この経験は彼にとって大きかったに違いない。一つには、まわりの協力を仰ぐ大切さが学べたから。そしてもう一つが、もっと加工業務や設備について学ぶ意識を持てたからだ。現在は国内で新しい部品の立ち上げプロジェクトに携わっている松井。共に働く人から学ぶ意識と、自己勉強を欠かさない彼ならばきっと、今携わっているプロジェクトを満足のいく形でやり切ることだろう。
「先輩や上司のサポートがあったからこそ、今の自分がある。自分もいつか誰かの力になれるよう、頑張るのみです」。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
学生時代は剣道部に所属。上級生への言葉づかいやあいさつなどの礼儀作法を身につけたことが現在、先輩社員との接し方に活きている。実際、多くの先輩社員たちが、松井とのコミュニケーションを頻繁にとってサポートしてくれている。ちなみに、剣道は三段の腕前。団体戦では中堅を任されたほどの実力派である。
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