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メーカー(自動車・輸送機器)
最終更新日: 2007/10/11
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プロの仕事研究
「自動車部品は人の命をのせている」と気づき、さらなる技術追求を誓った開発のプロ。
技術系−機械・機構設計
第1開発部開発2課
塩澤 秀基 (27歳) Hideki Shiozawa
入社4年目 / 豊橋技術科学大学 出身

プロフィール
2005年4月、武蔵精密工業に入社。BTC(現・技術2課)に配属となり、試作業務を担当。2005年10月、第1開発部開発1課に異動。自動車の足廻り部品の開発に参加。2007年4月、第1開発部開発2課に異動となる。プライベートでは、これまで購入した車が4台ともホンダ車という熱狂的なホンダファン。

プロローグ
大学時代、姉が乗っていたホンダのスポーツカーに一瞬にして目を奪われた。美しいボディ、フロントの目つき、リアウイングの威圧感、そして圧倒的な加速力…。すべてが塩澤にとって理想の車だった。姉から譲り受けてからも、印象は変わらなかった。そんな塩澤がホンダ車の開発に参加したいと考え始めたのは、自然の流れだった。「どの部分でも構わない。とにかくホンダ車の開発を手がけたい」。

とりわけ塩澤の興味を引いたのが、ホンダ車の足廻り部品を手がけている武蔵精密工業である。大学時代に住み慣れた豊橋に本社を構えていること、そしてカナダやアメリカ、英国などへ積極的な海外展開を行っていることもまた大きな魅力だった。「ここでなら、自分のやりたいことが実現できそうだ」。期待に胸を膨らませた塩澤は無事内定を獲得。見事、念願のホンダ車開発への道を自らの力で切り拓いたのである。喜ぶ塩澤だったが、まだ社会人になったばかりの彼には、自動車部品をつくることの本質が分かっていなかった。そんな塩澤が入社後にもがきながらも大きく成長していった軌跡を追う。

学生と社会人はまるで違う。学びの連続。 1
2005年4月1日。入社式当日、塩澤は今さらながら驚いていた。まわりに目をやると、社長をはじめ複数の役員や幹部が式典に出席している。参加している社員も何百人といる。「武蔵精密工業って、実は大企業なんじゃないか。とすると自分は、この大企業でホンダの車づくりに携わるんだ…」。塩澤は、同期入社の皆と共に、社長が壇上で語る新入社員への期待を耳にしながら、これからの日々に胸を躍らせた。

最初の6ヶ月間は、いわば研修期間。BTC(Balljoint Technical Center/現・技術2課)に配属となり、前半3ヶ月を生産現場で過ごした。この間に手がけたのが試作業務である。主にステアリング部品の製造や品質検査に携わった。「なるほど、こうやって製品がつくられるのか…」。大学時代に学んだ内容とまるで違い、塩澤の目にはすべてが新鮮に映った。その後の3ヶ月で、製品を製造するために必要な機械のメンテナンスや管理に携わった。これらの経験を通じて、どんなラインでどんな製品がつくられるのかを、塩澤は目で見て手で触って一つひとつ自分のものにしていった。

自分が関わる製品がホンダ車に搭載される。念願のプロジェクトに参加。 2
少しずつ経験を積み、開発1課に配属された塩澤に、大きな転機が訪れる。2007年秋に発売となる、ホンダ車の足廻り部品開発プロジェクトに参加することになったのだ。自分が手がけた部品がホンダの人気車種に搭載される。そしてその車が街を駆け抜ける…。その姿を想像しただけで思わず口元に笑みが浮かんだ。

プロジェクトの期間は約1年半。その中で塩澤が担当するのが、製造した足廻り部品を車に取り付けて正常に走行するかのテスト業務、そしてテストで必要となる部品の設計である。一口にテスト業務といっても、内容は幅広い。なぜなら、車は様々なシチュエーションで安定した走行が要求されるからだ。急ブレーキを踏まれることも、荒れた路面を走ることもある。ときには山道を上ったり、川を渡ることもある。だからこそ、テストは入念に行われる。部品は、いったいどの程度の衝撃を与えれば破損するのか、どの程度の圧力をかければ変形するのか。他にも、部品に水を噴きつけて内部に水が入っていないかを調べたり、耐久機にかけて24万キロメートル走行した状態をつくり出したり…。仕様が変わるたび、満足いく値が得られるまで、何度も繰り返し行うのである。

何度もテストや図面設計をやり直す。投げ出してしまいたくなる日々。 3
塩澤にとって、これほどのプロジェクトは初めての経験。覚えなければならないことが多く、焦りが焦りを生んだ。何が分からないかも分からないままテストを行い、何度となく失敗を繰り返した。たとえば、製品を機械にぶつけて破損したり、測定器の読み方を間違えて寸法を誤るなど、普段ならあり得ないケアレスミスを起こすほど、平常心を保てなくなっていた。しかも、苦戦したのはテスト業務だけではない。テストのために必要となる部品の図面を設計したときなどは、1枚の図面につき10回以上も先輩に描き直しを命じられた。「これじゃダメだ。再提出」と図面を差し戻されるたびに、何度も投げ出したくなった。

そんな塩澤を支えてくれたのが、2つ年上の先輩社員である。落ち込む塩澤に「もっとこうしたほうがいいんじゃないか?」とアドバイスしてくれた。立ち直ってきた塩澤には「失敗してもいい。だが失敗したときは言い訳せずに、どうすべきかを自分で考えるんだ」とエールを送ってくれた。そうして冷静さを取り戻してきた塩澤は、自分に何が足りないのかを見つめ始めた。

自動車部品をつくるということ。その本質に開眼する。 4
自動車とは人の命をのせて走るもの。ならば当然、自動車を構成する部品もまた、人の命を預かる重要な部分である。大きな責任を伴うことは間違いない。にも関わらずそれまでの塩澤は、ホンダ車の開発に携われる喜びが先走っていた。そして失敗が重なり始めてからは、基準値を満たすことだけを目的にテストを繰り返していた。しかし、それは本質ではない。より安全で快適な走りの実現を目指して取り組む姿勢。それこそが、この仕事でもっとも必要なのだ。この考えに至り、塩澤は目覚めた。以前とは異なり、このテストは何のために行うテストか、次にどう動くべきか、といったことが見え始めてきた。その頃には、先輩社員のアドバイスを待つのではなく、自ら動いて自分の考えを実践できるようになっていた。

プロジェクトが終盤を迎える頃、塩澤の表情からは「ホンダ車のどこでもいいからつくりたい」という憧れだけで仕事に向かっていた甘さは消えていた。人の命の重みを理解して与えられた仕事を全うする意欲、そしてより優れた製品をつくっていきたいという固い意志に満ちていた。そして2007年9月――。ついに彼は、このプロジェクトを完遂させたのである。

エピローグ
「もっと環境に配慮した、もっと優れた品質の自動車部品が必ずつくれると思っています。僕はそれを追究していきたいんです」。そう語る塩澤の表情には、仕事に全力で取り組み、成果を挙げてきた技術者だけがもつ自信が漂っていた。塩澤が携わった足廻り部品を搭載したホンダ車は、2007年秋にここ日本でリリースされる。そして、彼が今携わっている足廻り部品は、中国や欧米向けのホンダ車に搭載されるという。自動車部品づくりの本質に近づいた塩澤。彼の活躍のフィールドは今後、世界を舞台に広がっていく。

そんな彼は今後も「I LOVE HONDAであり続けます!」と語る。プロの技術者は、子どものような心も持ち合わせている。
数々の失敗を乗り越えてきた経験は、今の塩澤を強くした。プレゼンテーションの言葉にも、自信がみなぎっている。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
「自分で考えて行動しなければ、埋もれてしまう校風でしたね」。そのように塩澤は学生時代を振り返る。卒業研究では、近隣のおよそ1000世帯にアンケートを行って、なんと7割以上の回答を回収したという塩澤。まさしく、本人の言う「自ら考えて行動した」経験が、今の仕事でも活きている。
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