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最終更新日: 2007/11/26
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プロの仕事研究
迅速な情報発信を可能とする地震観測システム用装置を完成させた、開発のプロ。
技術系−電気・電子設計
東京事業本部 システム開発グループ
坂田 稔 (30歳) Minoru Sakata
入社11年目 / 九州電子技術専門学校 電子工学科 出身

プロフィール
1998年に入社。当初は、通信会社をメインユーザーとする伝送装置などの開発プロジェクトに参加する。通信系の基板や装置と同時に、航空計器や放送局向けの各種装置の開発も推進。2006年の終わりから地震観測システムの各種装置開発に注力している。

プロローグ
日本で暮らす上で、“地震”は密接に関わってくるもの。ここ数年、各地で大地震が発生し、人々は地震予知や観測態勢の強化に期待を寄せている。この地震観測システムの一部として中継伝送装置がある。海底奥深くに地面の揺れを感知するセンサーが沈められ、随時、微動な揺れを感知しては伝送装置にデータを送っていく。伝送装置はその名の通り、光ファイバーケーブルなどを経由して、地上の観測所へ瞬時にデータを送信。地震に関する各種の情報をタイムリーに収集し、場合によっては社会に向けて発信できるという仕組みだ。

坂田稔にとって、地震観測システムに関わる案件を担当することは、初めての経験だった。ただし、すでに10年近くのキャリアを積み重ねてきたエンジニアである。提示された仕様を見て、回路の大まかな構成はすぐにイメージできた。それでも、実際の開発がスタートすると、いくつもの難所が待ち構えていた。当初のゴールは、試作品レベルでの供給。その後はユーザーとなる専門組織で試験運用されることから、本番機並みの性能が求められていた。そして、最も苦しめられたのは時間との戦い。高度な開発を進めるためには、決して十分ではなかった。

高速な伝送と装置のコンパクト化を実現する。 1
2006年の秋も深まる頃だった。当時の坂田は現状の開発案件が終わりを告げる間際であり、それを知った上司が次の開発プロジェクトのオファーを出した。「地震観測システム…?」。これまで携わったことのない分野だった。だが、概略を聞くと、返答は早かった。地震を感知するセンサーなど周辺機器に関してタッチすることはなく、中継伝送装置の開発に注力すれば良い。伝送装置の中身も以前関わった開発案件と同じ技術が採用されており、その応用で何とかやりこなせると考えた。

伝送装置には、SDH(同期デジタルハイアラーキ)と呼ばれる、光ファイバーによる高速通信方式が採用されることが決まっていた。これは150Mbpsの伝送速度を持ち、パケット単位で伝送できる国際規格だった。この機能を十分に発揮させるだけでなく、装置のコンパクト化も求められていた。この具現化で、カギを握るのはデバイス。そこでFPGA(Field Programmable Gate Array)の採用が決まり、これについても、坂田は開発経験を持っていた。あとはシステムの全容を予備知識として蓄積するのみ。開発で必要な技術的な情報は、ほぼカバーできていた。

仕様が煮詰まるに従い、回路図が複雑になる。 2
3人でチームは構成されていたが、実際の作り込みは坂田の主担当。開発期間は実質3ヶ月間。通常よりもはるかに短いスパンだった。装置の要となる基板の構成。特にコンパクト化を目指すことにより、回路設計での工夫が必要とされた。さらに確実に基板を動作させるFPGAの内部構成も含めて、皆で熟慮を重ねた。装置は地震センサーとつながる8つの入力ポートがあり、これらが基板とつながってデータを集束し、伝送する仕組みになっていた。また、装置は海底に沈められるために、内部を構成する部品は耐久性などを考えての選定が大切。これも坂田に託された役割の一つだった。

開発が始まった。時間を有効利用しようと、仕様の詳細を煮詰めながら、設計も推進させた。大まかな回路図を策定した。8ポートから入力されるデジタル信号は何百本とあり、それがFPGAで集束されていく。一瞬にして図面上が線の迷路になった。さらに、地震観測では特に避けたいノイズを抑制する回路設計も肝心。ノイズによる波形の狂いで、正確な情報を伝送できない可能性がある。そのため、この点は慎重に検討を重ねていった。時間は刻々と過ぎ、早くも1ヶ月が過ぎていた。

微少なスイッチングノイズという大きな問題。 3
CADの前で試行錯誤を繰り返しては、図面を画き直していく。気持ちとしては、長く地道な作業が続くようだった。既存製品や評価版さえも存在せず、すべてが一からの構築。不安とやりがいが交錯した。あとから思えば、ポートから入力される信号を整理して集約するなどの工夫もできたかもしれない。しかし、この時はそれも未知数で、すべての信号をFPGAに取り込もうとして、配線が複雑化した。加えて随時、仕様変更も飛び込んできた。これは従来の案件でも経験済みで、とにかく正確、かつ迅速に眼前の課題をクリアした。

そして、回路図作成の中、坂田の頭を悩ませたのは電源系の回路構成だった。外から入力される電気を、コンバータで装置用の電気に変換しなければならない。その際、変換用デバイスから微少なスイッチングノイズが発生し、それを防ぐ必要があった。そこでこのノイズの周波数を基に、コンデンサ等を用いて問題の解決に取り組んだ。ようやく回路図の作成が完了し、坂田は本格的な作り込みへ移行した。次のハードルとして立ち塞がったのが、基板上への各部品の実装方法。海底という不安定な場所への設置に、アイデアが求められた。開発は山場を迎えようとしていた。

部品の実装で浮上した揺れに対する課題。 4
海底に沈めるという点から、坂田は基板制作でいくつかのアイデアを提案した。水温や水圧は基板を収める筐体側でコントロールできる。注視すべきは基板の各部品を固定すること。船から沈め、海底に落される時に基板が衝撃を受ける。それによる誤動作を防ぐために、しっかりと各部品を実装しなければならない。坂田は実際の製品化の際に、SMD(表面実装部品)ではなく、DIP(基板にピンを通し、そこへ部品をはんだ付けして装着する方法)を使用するように提案した。これならば、SMDに比べ安定していて、船から沈める際の衝撃にも耐えられるからだ。もちろん、装着用のはんだは環境保全を考慮して、鉛フリーな材料を使用する。そうした提案の後に、基板の詳細な仕様を固め、坂田は協業会社へ基板制作を依頼した。その間、FPGAを機能化させるプログラミングに取り組んだ。

これらで約1ヶ月間を費やし、ついに供給前の製品評価が始まった。供給前の最終評価では、仕様決めの段階で想定しなかった問題がいくつか浮上した。だが、立ち止まらずにスピーディな対応でクリアした。納期間際になって開発は終了した。坂田はホッとひと息をついた。

エピローグ
供給された伝送装置はあくまでも試作品であり、現在はユーザー側でテストが繰り返されている。じっくりと不具合や改善点が洗い出され、正式な製品化の際に活かされていく。坂田は今、別案件に携わっているが、この伝送装置の製品化にも関わりたいという。供給後に、開発を振り返っての反省点やアイデアが頭の中でイメージでき、それらを盛り込みたいと考えているからだ。もちろん、新たな収穫もあった。短納期でお客様を満足させる製品を、いかに効率良く開発できるのか――開発スケジュールの組立、問題の迅速な解決力などが、さらに早くなったと実感している。10年のキャリアを誇るとはいえ、成長に対するどん欲さは失っていないのだ。
地震観測システムの装置開発に今も尽力する坂田。高度な技術力を駆使して、今後も社会に貢献を果たす技術を作り出していく。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
高校の頃からコンピュータの内部構造に興味があり、友達と調べる中で装置の仕組みを知り、その知識が今の仕事に取り組む上でのベースになっている。そして、専門学校では電子回路の知識や、開発の基本的な考え方を学べた。また、高校の学園祭で電化製品の販売等を体験し、コミュニケーションの基礎を吸収できた。
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