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最終更新日: 2007/10/01
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プロの仕事研究
閉店の危機を乗り越え、施設内に喫茶店をオープンさせた介護のプロ。
その他−公務員・団体職員
特別養護老人ホーム「ロングステージKOBE岡本」/生活相談員
山下 奈津子 (28歳) Natsuko Yamashita
入社7年目 / 甲南女子大学 文学部 英文学科 出身

プロフィール
大学時代は英文学科に所属。2002年4月に入所するまで福祉の専門知識を持っていなかった。特別養護老人ホーム「ロングステージKOBE岡本」に配属されて3年目、副主任に抜擢される。2006年には主任に選ばれフロア全体を管理する立場に。そして現在、2007年7月からは副主任生活相談員として活躍している。

プロローグ
「ここも福祉系専攻者のみの募集か…」。

2001年春、大学4年生だった山下は募集要項を見てため息をついた。「よし、他の業界も見てみよう」。気を取り直すも、浮かない表情をうかべる。彼女は就職活動の真っ只中にいた。自分に合った仕事が何なのか分からず、あらゆる業界、あらゆる職種のセミナーに参加したり選考を受けたりしていた。だがなかなか納得できる企業は見つからない。実は山下には、自分に“合う” “合わない” に関わらず、挑戦してみたい仕事があったのだ。それが、福祉系の仕事だった。大学の授業の一環で体験した児童施設での仕事が忘れられずにいたのだ。だが、なかなか専門知識を持たない学生を募集している施設はない。「このまま、一般企業に就職するのかな…」。

するとある日、全学部・全学科の学生を募集している施設に出会った。その施設の名は、ロングステージ。早速選考に臨むことにした。面接では、用意していた答えではなく、ストレートに自分の意見を伝えることができた。また専門知識を持たなくても、入所してからしっかりと学べる体制があることも判明。面接を受けた帰り道、山下の心はほぼ決まっていた。「私、ここで働きたい」。

「より良い介護をしていきたい」。スキルと知識を身に付ける。 1
「自分を飾らず、人と人とが向き合える仕事」。

これは、山下が大学時代の施設実習を通して得た印象である。そしてこの印象を魅力にも感じていた。2002年4月に入所した後も魅力が薄れることはなかった。彼女が配属されたのは、「ロングステージKOBE岡本」。介護職員として、ご利用者様であるゲストの生活をサポートする毎日を送っていた。実際に仕事をしてみると、専門知識がないこともあり、大変なことも多かった。仕事内容は、更衣から配膳、食事介助、入浴介助まで生活に関わる全てに及ぶ。独自の教育制度「ママベビー研修」により、一人の先輩職員に付いてスキルアップしていくのだった。

担当が持てるようになれば、独り立ち。といっても、分からないことは先輩職員に質問し、自己成長を図る。山下は、介護の現場でスキルを身に付けるだけでなく、福祉の専門的な知識をもっと持ちたいと考えた。そこで、社会福祉士の免許を取得することを決意。しかし、取得するには国家試験に合格しなくてはならない。「専門的な知識をつけて、より良い介護をしていきたい」。彼女はこの一心で、通信講座を受講するなど努力を続けた。

プロジェクトメンバーへの抜擢。期待で胸が膨らむ。 2
「新しい係りをしてみない?」。

2003年春、入社2年目を迎えた山下に寮母長が声をかけた。それは彼女の仕事に対する意欲的な姿勢を買っての抜擢だった。山下は、正直驚いていた。「まだ入社して1年しか経っていない。日々色んなことを勉強して、これからも覚えることはたくさんあるのに…」。しかし、一方で新しいことに挑戦することへのワクワク感が募っていた。寮母長の言う新しい係りとは、施設に喫茶店をオープンさせるプロジェクトメンバーのことである。実は、他の施設で成功しているプロジェクトを「ロングステージKOBE岡本」でもやってみることになったのだ。その背景には「若い職員にも新しいことに挑戦して欲しい」という施設の考えがあった。

山下はその期待に応えるべく、快諾した。メンバーは3人。山下と先輩職員2人である。彼女はその状況にどこか安心感を覚えていた。「先輩がいるし、大丈夫だろう」。しかしその思いは逆転することになる。喫茶店をオープンさせるべく、介護の仕事の合間に準備を進めていく。やるべきことは想像以上に多く、めまぐるしく時間が過ぎていくのだった。

ついに喫茶店がオープン。しかし、暗雲がたちこめる。 3
「後は、あなたたちに任せたわよ」。

プロジェクトに取り組んで数ヶ月が経過した頃、先輩職員の一人が突然、プロジェクトを脱退することになった。すると山下の立場は一変。これからは指示通りに動くのではなく、自ら段取りを決めることが必要になった。喫茶店をオープンさせるための起案書作りから、店舗運営の方法、そしてどんなメニューを置くのかなど、決めるべきことはたくさんあった。

起案書は何度も何度も書き直した。店舗運営の方法については、経理上の処理の仕方についても理解を深めた。また、メニューについては何かしら調理が必要になると衛生面での問題が発生する。そのためプリンやカステラ、アイスクリーム、コーヒー、紅茶など簡単なものを選定した。そうして2003年秋、ついに施設内に喫茶店がオープンした。

ゲストの反応はとても良かった。施設に訪れた家族と楽しく団欒する光景も見られた。山下は、そんな光景を嬉しく眺めると同時に店舗の運営に追われた。共に運営にあたってくれていたのは、学生ボランティア。しかし、継続的に参加してもらえるわけではないため、人手不足になり、店舗を一時休業させることが多々発生した。そんな状況を見るに見かねた寮母長はある決断をした。「喫茶店を閉鎖しましょう」。

「もう一度チャンスをください」。強い気持ちが寮母長、施設長を動かした。 4
「もう一度、喫茶店を運営するチャンスをください」。

閉店から数ヶ月、山下は新しい取り組みについてのアンケートにこう答えた。「喫茶店は、施設の中でも異空間。施設に居ながらにして、外出気分が味わえる。雰囲気を変えることによって、ゲストの気分もより良くなるはず」。中途半端な状態で終わらせたくないという気持ちもあった。しかし閉鎖後、ゲストだけでなくご家族からも喫茶店を再オープンさせる要望が出ていたのだ。「より良い生活のために」。彼女の強い気持ちが、寮母長そして施設長の心を動かした。

2004年春、喫茶店は再オープンを果たした。ボランティアは前回の反省を踏まえ、学生だけでなく一般の方からも募ることに。そうすることで、人手不足に陥ることを防いだのだった。オープンを心待ちにしていたゲストは大喜び。「お休みして、ごめんなさいね」。山下の言葉にゲストはこう答えた。「ううん。楽しみにしてたよ。ありがとう」。すると、彼女の胸に自然と熱いものがこみ上げた――。

エピローグ
「一生懸命頑張れば、結果は必ずついてくる」。

プロジェクトを通して山下が体得したことである。彼女は、この経験を糧に現場でも力を発揮。入社3年目には副主任に着任。入社5年目にはフロア責任者である主任に抜擢された。そして2007年1月、ついに念願だった国家資格「社会福祉士」を手に入れた。現在は、副主任生活相談員として地域のお年寄りの相談にも応じている。

入社前は専門知識がない山下であったが、現在は誰からも認められる介護のスペシャリスト。「仕事を任せてくれるロングステージだったから、ここまで来れた」。山下は成長の要因をそう語る。彼女の次なる目標は生活相談員の仕事を極めること。奮闘はまだまだ続く。
「ロングステージの雰囲気は和気あいあいとしているので、ゲストも職員も心地良さを感じているんです」。山下は笑顔でそう話す。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
英文学科に在籍していた学生時代、原語のままでシェークスピアの芝居をすることになった。その際に、舞台監督に抜擢され、総勢200名の学生をまとめ上げた。現在の「一度引き受けた仕事は最後まで全力でやり遂げる」という姿勢は、この経験を通して身に付いた力である。
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