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サービス(レストラン・フードビジネス)
最終更新日: 2008/09/11
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プロの仕事研究
自ら状況に応じて動けるスタッフを育てあげた、店舗運営のプロ。
営業・販売系−販売スタッフ・サービス
八吉 新橋店/店長
山田 直子 (27歳) Naoko Yamada
入社4年目 / 上智大学 文学部 心理学科 出身

プロフィール
大学院への進学も考えた。だが、「専攻を活かせる職種は少ないのでは」と思い、就職を決意。ヒトに直接かかわれる飲食業界を志望する。同社の社長・柚原に出会ったのは説明会でのこと。その人柄に感銘を受け、入社を決意した。現在山田は、3年目にして店長に抜擢されるなど、同社の次代を担う期待の若手社員として活躍中。

プロローグ
2006年3月。一冊のタウン情報誌に、大勢の社員やアルバイトスタッフたちが群がっていた。「あっ、載ってる!」。嬉しそうに覗き込む山田。だが同時に、スタッフたちから不安そうな声があがった。「本当に、これでお客様が来るのかな…」 「どうだろう」。記事による集客を、あまり期待していない様子。

その反応に無理もない。山田が任せられている『自然食ビュッフェレストラン さんばし 浦和ワシントンホテル店』は、1月末にオープンしたばかり。新規出店ということもあり、広告には力を入れ、何千枚ものビラを配っていた。だが、オープン以来、お客様の入りは、予想をはるかに下回っていたのだ。「まさか、これで今まで以上にお客様が来ることもないだろう」。山田も正直、それほど集客効果には期待をしていなかった。

翌日、いつものように、開店の準備を進めていく。「えっ!? ちょっと見てください!」。スタッフが驚きの声をあげた。「どうしたの?」。駆け寄って外を眺めると、そこには長い行列ができていた。「こんなに!?」。驚きと同時に、嬉しさがこみ上げてくる。だがこの日を境に、店内は大混乱に陥ることになる――。

入社1年目にして、新業態の店舗づくりへ挑む。 1
今まで居酒屋業態の店舗がメインだった株式会社一六堂。新たに、女性客や家族連れをターゲットにした業態を生み出そうと考えていた。そこで立ち上がったのが、『さんばし』。自然食をテーマにしたビュッフェ形式のレストランである。この店舗への配属が決定したのは店長を含め4名。そのうちの1名が、まだ入社1年目の山田だった。誰がどうみても異例の抜擢。山田自身も、驚きを隠せないでいた。中でも、2名の社員が厨房を担当し、店長は厨房とホールを兼任することに。事実上、山田が中心となってホールをまわさなければならない。「頑張らなくては」。――2週間後、『さんばし 浦和ワシントンホテル店』がオープンした。

一六堂にとってビュッフェ形式のレストランは初めて。オープンはしたものの、未完成な部分も多かった。そこで山田は、「もっとこうしたほうがいい」と気付いたことを、すぐに店長に相談した。「女性向けの料理なら、ジャガイモは一口サイズにすべきです」 「このコーヒー、味が薄くないですか」。賛同してもらえたら、翌日すぐに実践する。日々、改善されていく『さんばし』。だがお客様の入りは決してよくなかった。

かつてない賑わい、消えゆくスタッフの笑顔。 2
オープンして1ヶ月が過ぎようとしていた頃――「こんなに!?」。大勢のお客様を目にし、戸惑う山田。あるタウン情報誌に『さんばし』が取り上げられ、その記事を目にしたお客様が殺到したのだ。「3名様ですね、かしこまりました。こちらの席になります」 「4名様ですね、では、こちらの席に」。嬉しさのあまり、お客様を次々と案内していく。あっという間に店内は多くのお客様で埋め尽くされた。だが――。

「この料理、さっきからずっと空だぞ!」 「出ているメニュー、これだけか?」 「ドリンクが終わっているんですけど!」。取り皿に料理を盛ろうとしていたお客様から、次々とお怒りの声が聞こえてきた。突然の活況ぶりに、店内は一気に大混乱に陥ってしまったのだ。「申し訳ありません。ただいま、料理をお持ちいたしますので…」。慌てて対応に伺うスタッフたち。その表情から、次第に笑顔が消えていった。

閉店後――連日に及ぶ、深夜ミーティング。 3
山田が特に気になったのは、「いらっしゃいませ」という声だった。お客様が店舗にいらしても、スタッフたちの声が聞こえないのだ。よくよく耳を澄ませて聞いてみるとたしかに声は出している。だが、元気がないため、くぐもった声しか出ていない。それでは、お客様の耳に届いていないも同然。「いらっしゃいませ!」。そんな状況の中、山田は一人で声を出し続けた。山田の声を聞き、慌ててお腹から声を出すスタッフたち。また山田は、「笑顔ないよ!」と声をかけ続けた。ときには、「大丈夫? 疲れた?」とスタッフを気遣うことも。「はい、大丈夫です!」 「その調子で頑張って!」と会話を増やしていくことで、スタッフたちに笑顔を呼びかけた。

さらに、店長にも相談し、アドバイスをもらった。「もっと、厨房とホールで、状況を把握しあわないと」 「料理が出ていない状況で、お客様を案内しても、不満が募る一方。案内するお客様の人数を調整する必要がある」。ホールのまとめ役は山田である。店長からもらったアドバイスをまずは自分で実践し、そしてスタッフたちに教えていった。「このお店を任せてもらえたからには、どうにかして盛り上げなければ…」。新しい業態に1年目から携わることができた山田。だからこそ、どんな状況でも「精一杯頑張らなければ」という強い信念は揺らぐことはなかった。

スタッフたちに、心のゆとりが戻ってきた。 4
「この料理、終わりそうです。いつ頃、できますか?」。スタッフたちは、徐々に厨房とのコミュニケーションも自らとれるようになった。「大変申し訳ございません。ただ今、大変混雑しておりまして…」。さらに、席の空き具合だけでなく、料理の出るスピードをチェックしてお客様をご案内してく。徐々に、スタッフたちが状況に応じて、率先して動けるようになってきた。そして、何より笑顔が戻ってきた。「いらっしゃいませ!! 3名様ですね!」 「いらっしゃいませ!! こちらのお席へどうぞ!!」。忙しいときでも、意識して声を出そうとする。店内にスタッフの活気が戻ってきたのだ。

そして、3月末を迎えた頃。卒業式のお祝いも兼ねて、4月から中学生にあがるお子様をお連れのお客様が増えてきた。『さんばし』は再び、長蛇の列ができるほど賑わうことに。「大丈夫だろうか?」。この活況ぶりに、再び店舗が大きな混乱状態に陥るのではないかと心配する山田。だが、それは杞憂に終わった。スタッフたちは、スムーズに接客をこなしていた。「よかった…」。ひとまわり成長したスタッフの姿がそこにあった。

エピローグ
2006年10月。山田は次なる店舗への異動が決まった。「また、新しい環境にチャレンジできる」。だが、一つ気がかりなことがあった。「私が異動したら、店長が一人でホールをまとめなければならない」。

そこで山田は、翌日からいちスタッフとして動くよう徹底した。「まとめ役がいなくても、スタッフたちが動けるように」との考えからだ。だが、スタッフたちは声をかけ合い、状況の応じてしっかりと動いていた。

その様子を前にして、一抹の寂しさを覚える山田。「もう私がいなくても、スタッフたちは十分に動ける」。だが同時にそれは、大きな喜びでもあった。「これで、大丈夫」。安心して、次の店舗へと向かっていった。
スタッフの表情を確認しながら、朝礼を進める店長・山田。異動してきた当初から比べると、売上も順調に伸びている。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
中学時代からずっと演劇を続けており、大学ではダンスサークルに所属。準備期間に比べるとほんの一瞬の舞台。だがそのために、仲間たちとともに何ヶ月も汗を流しながら練習を重ねていった。「お店の開店は舞台の幕開けと一緒」と語る山田。開店時間の前に、スタッフたちと協力して準備を進めていく大切さを実感している。
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