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サービス(レストラン・フードビジネス)
最終更新日: 2008/09/11
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プロの仕事研究
新業態をゼロから立ち上げ、自社を代表する新ブランドへと成長させた店舗開発のプロ。
営業・販売系−店舗開発
取締役 営業本部長
宇佐美 准 (36歳) Jun Usami
入社6年目 / 服部栄養専門学校 出身

プロフィール
幼い頃から料理人に憧れ、料理の世界へ。料亭や居酒屋に勤務した後、2003年、柚原社長との出会いを機に一六堂に入社し、『天地旬鮮 八吉 八重洲店』の総料理長に就任する。その後、『八吉』の事業拡大に伴ない全店舗の立ち上げに参加。現在、取締役営業本部長として、一六堂が運営する全46店舗の統括を担っている。

プロローグ
一六堂が展開する『天地旬鮮 八吉 八重洲店』は、東京駅から徒歩2分という充実したアクセスに加え、オフィス街の中心ということもあり、週末は多くのお客様で賑わう繁盛店である。店の自慢は、北陸直送の新鮮な魚介類。“買参権”と呼ばれる、漁業組合から直接鮮魚を買い付ける権利を有しているため、鮮度へのこだわりは半端ではない。和洋折衷を盛り込んだ独創的なメニュー構成も受け、幅広い客層から支持されている。そんな人気店がオープンしたのは、2003年6月のこと。しかし、当時の『八吉』は、いまの賑わいが嘘のようだった。

「注文した料理が出てこない。一体、どうなっているんだ!」
「今晩予約したはずだけど、席が満席ってどういうことなの?」

お客様の声が、店のあちらこちらから聞こえてくる。「大変申し訳ございません。いますぐに…」。その都度、スタッフが頭をさげる。その光景を目にするたび、総料理長として店舗の立ち上げにかかわっていた宇佐美の心は痛んだ。「彼らもあんなに頑張っているのに、どうして店が回らないんだ。この店の、何がダメなんだ…」。その答えがなかなか見つからないまま、月日だけが過ぎていった。

これまでにない新業態 ―― 『天地旬鮮 八吉』の誕生。 1
2003年3月、『八吉 八重洲店』は、一六堂にとって8つ目の新業態としてオープンに向けた準備が始まっていた。コンセプトは、“鮮魚をつかった和食ダイニング”。その総料理長に就任したのが、宇佐美だった。以前は別の会社でウデをふるっていた宇佐美だが、一六堂に対してもメニュー提案などを行なっており、その評判は前々から社長の耳にも入っていた。そこで、新業態の立ち上げに伴ない、宇佐美に白羽の矢が立ったのだ。社長の人柄に惚れこんでいた宇佐美は、このオファーを快諾。早速メニュー開発に取り掛かった。

メニューの開発にマニュアルなど存在しない。その都度、自分の足であらゆる店を訪ね、自分の舌で味の研究を行なう。美味しいと思ったら、アイデアを持ち帰り、自分流にアレンジ。ときには、和食以外のレストランにも通うこともあった。料理は店の顔となるだけに、社長もメニュー開発にずっと付き合ってくれた。物事の良し悪しを明確に示してくれる社長だからこそ、宇佐美のウデも披露しがいがある。「これは若い女性に受けるかと思います」「食事の締めに、麺はどうでしょう」「これなら焼酎にもワインにも合いますよ」という風に、試作を重ねる二人。こうして、約60種類のメニューが完成した。

全てがゼロから創りあげる。それが、一六堂のモットー。 2
スタッフ全員で、ゼロから店を創っていくのが一六堂のモットー。メニューだけでなく、内装やロゴ、ユニフォームのデザイン、料理の値段、メニュー表の書き方にいたるまで、一つひとつ社員の声で決まるのだ。たとえば、好きなお通しが選べたり、ワゴンに新鮮な魚を乗せて店内を練り歩いたり。こうした『八吉』のオリジナルサービスも、全て社員のアイデア。宇佐美自身も、料理がさらに映えるようにと、岐阜県の多治見市まで足を運び、店内で使う全ての食器を社長と共に吟味。オープンに向けて、準備は着々と進んでいった。

『八吉 八重洲店』は、『八吉』の記念すべき一号店ということもあり、新業態の今後を左右していることを意味していた。オープン当日までは、ミーティングの嵐。しかし、それは決して苦ではなかった。みんなで『八吉』を創っているんだという意識。みんなで『八吉』を一番の店にするんだという決意。そこには、強力な絆が芽生えていた。なんとも言えぬ一体感が最高潮に達した時、ついに2003年6月、『八吉 八重洲店』はオープンした。

―― しかし、現実はそこまで甘くはなかった。オープンから1ヶ月、この後『八吉 八重洲店』は迷走を続けることになる。

「オープンしたのに、店がうまく回らない…」―― 試行錯誤の日々。 3
「さっき注文したドリンク、まだなの?」
「これ、頼んだメニューと違うんだけど、どうなってるんだ?」
「宴会の予約をしたのに、店が満席って、一体どういうわけ?」

新店ということもあり、店は繁盛していた。だが、それゆえスタッフの対応が追いつかず、トラブルやミスが頻発してしまっていたのだった。明らかに店がうまく回っていない。

「大変申し訳ありません。いますぐに…」

頭を深々とさげるスタッフ。「彼らはあんなに頑張っている。どうしてあげればいいんだ…」、これまでオープンに向けて一緒に奮闘してきた仲間だからこそ、その姿を見て宇佐美の心は痛んだ。しかし、立ち止まっている暇はなかった。現状を変えなくては、お客様の満足など得られない。そこから『八吉 八重洲店』の変革が始まった。

まずは、オーダーミスをなくすため、提供方法を刷新した。それから、予約の取り方に関しても、確認を重ねてスタッフ同士の連携を強化。オーダーが伸び悩んでいる料理はすぐにメニューから外し、それに代わる新メニューを次々と開発した。そこには、店が上向くことを祈り、ひたすら試行錯誤を繰り返す宇佐美がいた。

長かったトンネルを抜け、見えてきたのは“お客様の笑顔”。 4
“絶対に、うまくいく” ―― そう自分に言い聞かせてから、1ヶ月が経とうとしていた。失敗のたびに改善を重ね、とにかく店をよりよくすることに奮闘する宇佐美。前だけを見て進むその姿に、スタッフたちも必死で応えようとしていた。他店舗からは、噂を聞きつけた多くの社員が手伝いに来た。社長も、毎日様子を見に来ては「大丈夫か?」と声をかけてくれた。このとき、全員の心に生まれていたのは「この店を、何があっても成功させるんだ」という気持ち。宇佐美の気迫が、全員に浸透していった証だった。

それに応じて店の運営は徐々に安定感を増していく。店内にはスタッフの活気ある声、そしてお客様の明るい笑顔。一つひとつの欠点を確実になくしていくことで、『八吉』が提供するサービスのクオリティは研ぎ澄まされ、洗練されたくつろぎの空間が完成したのだった。

―― 第一号店のオープンから4年。いまや『八吉』は、全国に20店舗以上を数える一六堂の代表的ブランドとなった。それも、第一号店の立上げに関わった全社員の汗と涙の奮闘劇があったからこそ。“何があっても、絶対に諦めない”、この想いのもと、今日も多くのお客様の笑顔を生み出している。

エピローグ
「正直、夕方5時になって店を開けるのが辛く感じるときもありましたよ。でも、あの大変な時期を乗り越えられたのは、逃げたい気持ちを抑えて一緒に戦ってくれた仲間がいたからこそ。決して、一人では実現できなかったと思います」と、感慨深げに当時を振り返る宇佐美。現在、『八吉』の全店舗の立上げに関わる一方で、一六堂が運営する全業態(約50店舗)の統括も担っている。

「一六堂に入社していなかったら、人生が変わっていた」とも豪語する。その言葉は、ここで出会った仲間、そして手にした経験が及ぼす影響の大きさを表している。何事もやり遂げることの大切さを知った今もなお、新店舗・新業態の開発に向け、日本中を奔走する日々だ。
「仲間というより、家族のようなものですね」と宇佐美。取締役に就任後も、自ら厨房に立ち、スタッフと一緒に汗を流している。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
料理人として駆け出しの頃、スイスのレストランで修行を積んでいた。言葉も通じないなか、料理に国境はなく、多くの人を笑顔にできることを、当時のオーナーや料理長から学んだ。美味しい料理を作るためには、自ら枠を設けず、全てのアドバイスを受け入れる柔軟性が必要であることを知り、その想いは今に繋がっている。
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