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メーカー(紙・パルプ) / 商社(専門商社(紙・事務機器・OA関連)) / マスコミ(印刷)
最終更新日: 2007/10/22
(マークの説明) 正社員 理文不問
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プロの仕事研究
“データ”を提示することで、大手商社への値上げ交渉に成功した段ボール営業のプロ。
営業・販売系−営業(法人・ルートセールスが中心)
営業本部
高橋 泰輔 (37歳) Taisuke Takahashi
入社14年目 / 立教大学 経済学部 経営学科 出身

プロフィール
神奈川県出身。「消費者の目に直接ふれる製品を作るメーカー」に的を絞って就職活動を行い、1995年に当時の本州製紙に入社。業界再編により、その後の所属会社名は変更となるが、部門としては一貫して段ボール部門の営業を担当した。札幌工場での営業を経て、現在は王子チヨダコンテナー本社営業の中核を担う。

プロローグ
1995年12月。入社1年目の高橋は札幌の地に降り立った。関東で生まれ育った彼を、到着早々の大雪が手荒く歓迎する。これから始まる厳しい日々を予感させるような、寒い日だった。

メーカーを中心に就職活動をしてきた高橋。「機械ではなく人を相手にする仕事」「多くの人に喜ばれる仕事」という観点で企業を回り、「消費者に近い方々へ直接営業をしたい」という願いを熱心に聞いてくれた、当時の本州製紙に入社した。入社後、約8ヶ月間の新人工場研修を経て段ボール部門への配属が決定。消費者がそれ自体を消費することはまれな段ボールだが、売り場等で目にする機会は多く、メーカーの製品作りの現場まで目の行き届いた営業が必要になる部門だ。高橋の希望が叶う可能性も高い。

本勤務地に決まったのが札幌工場。平らな紙と波型の紙、構造の異なる紙を貼り合わせる「貼合(てんごう)」と、印刷・打抜などを行う「製函(せいかん)」、この2工程が段ボール製造の主な流れだ。事務業務も経理、原紙手配、工程管理、得意先からの受注など多岐にわたる。製造と事務、札幌工場全体の流れを約1年間かけて学んだ後の1997年1月、高橋は札幌工場営業部に配属される。

突然起きた、『原紙』の値上げ。 1
小さな失敗は数知れないが、札幌工場営業部での生活も丸3年が過ぎようとしていた。そんな2001年12月、高橋に前代未聞のピンチが訪れる。初めて直面する“値上げ”だ。原料である『原紙』が値上がりし、段ボールの値上げが回避できない状況となったのである。

原紙とは、多層構造である段ボールを貼り合わせる前の主原料で、巨大な巻き紙のようになっている。原紙の原料である古紙や原油の値段が上がり、原紙1kgにつき10円の値上がり、20〜30%も高騰していた。いくら社内努力をしても、製品価格10%以上の値上げは避けられなかった。

それ以前は比較的価格が安定していた段ボール。もともと安価なイメージがあり、10%以上もの値上げは、「突然で理不尽な申し出」だと感じられてしまうに違いない。また、シンプルな構造と工程で完成する段ボール製品の原価構成は、原紙の割合が多くを占める。値上げができなければ、自社の加工賃が大きく削られ、工場の収益悪化につながってしまう。高橋は頭を抱えた。

段ボールの値上げは、取引先製品の値上げ。 2
高橋は値上げ交渉を始めた。「原紙が値上がりするため、段ボールの価格は10%以上アップします」。そう高橋が話しても、「事情はわかりますが、段ボールの値上げはうちの製品の原価も上がることになるんですよ。簡単には承諾できません」という返答。予想以上に交渉は難航した。

高橋が担当していた得意先はビール会社、製菓会社など計40社ほどあったが、最も難航したのがある総合商社。農産物、水産物から工業製品まで膨大な品目を扱うその商社には、部門別に担当者が十数人、その先に数十社の取引先がある。このすべてを高橋一人が窓口となって説明して回ったが、何度も足を運び丁寧に解説をしても理解してもらえなかった。

「なぜだ……」。悩んだ高橋は、あるヒントにたどりついた。段ボールは寸法、形式、材質、デザイン、加工内容などすべてオーダーメイドである。得意先やアイテムによって納入ロットは数百枚〜数万枚とケースバイケースである。同じ製品でもロットが変われば原価も変わる。だから現実には、個々のアイテムごとに原価構成は異なる。「“10%以上”と、値上げをごく簡単に説明していた自分は、大ざっぱすぎたのではないだろうか?」。

値上げの必要性を理解してもらうための、打開策。 3
こうして高橋は、ある打開策を導き出した。「何千アイテムもある段ボール、その原価構成を一つずつ厳密に分析して、目で見えるデータにしよう」。全アイテム別に、原紙代・加工賃・利益の割合がひと目でわかる資料を作ることに決めた。

「原紙の値上がり分はいくらで、その段ボール製品の原価に占める原紙代は何割だから、製品としての値上げはいくら」。こうして金額を算出していく。原紙アップ分を単純に加算して新しい原価構成になる製品もあれば、加工賃についても少しメーカー負担が増えないと採算が取れなくなる製品もある。納入時のロットの大小によっても製造時の原価構成は変わるため、価格も変わる。全て個別にデータを算出していかなければ、正確な状況を伝えられないのだ。

通常業務を終えた夜、高橋は黙々とパソコンに向かい、データを分析する。ひと晩で数百アイテム分のグラフを作っても、のべ数千にものぼる全アイテムの作業量はあまりに膨大で、終わりはなかなか見えない。気づけば時計の針は午前3時を指し、夜が明けてしまう日もしばしば。孤独でつらい作業だったが、高橋は歯を食いしばり、やり通した。

論理性の高いデータが、取引先の信頼を勝ち得た。 4
ようやく、数千アイテム分の膨大なデータが完成し、高橋は先方に資料を提示した。先方の統括課長が資料に目を通すと、「わかりました。これだけ具体的で正確なデータがあれば、うちの営業たちも各取引先にきちんと説明できますよ」と納得してくれた。そして、営業全員に「今回の段ボールの値上げは、高橋君の言う通りに動くように」と指示を出してくれた。これは、諦めることなく、根気よく作り上げた高橋オリジナルの資料が、値上げの必要性を論理的に訴え、頑なだった先方の心を溶かした瞬間だった。最初に話を切り出してから約4ヶ月。こうして、高橋はすべての値上げを受け入れてもらうことに成功した。

高橋とその商社の間にはいつしか厚い信頼感が芽生え、職場以外での交流も生まれた。夏には大通り公園のビアガーデンでジョッキを合わせ、高橋の東京への異動が決まった際には、若手社員が中心となった送別会まで催された。「取引先の方の送別会をするなんて、今までにありませんでしたよ」。そう言って別れを惜しんでくれた札幌の人々の笑顔を、高橋は今もことあるごとに思い出す。北の大地の、さわやかな風の感触と共に――。

エピローグ
2004年夏に東京へ異動し、本社営業となった高橋。現在は全国規模の飲料メーカーなど大企業を相手に、より大規模な営業活動を展開中だ。「段ボールはすべての商品に必要不可欠なもの。食品にも工業製品にも梱包材として必ず存在する段ボールは、言わば全産業のバロメーターのようなものだと自負しています」。

“エコロジー”など時代の新しいニーズを見据えた、新たな企画・提案も高橋の仕事。今後は設計部門と連携し、構造の簡素化や廃棄物再利用など、より環境負荷の少ない段ボールを提供していきたいと願う。「エコロジー対応はコストダウンにはつながりにくいが、企業のイメージアップになる。成長するはずだ」。高橋はそう確信している。
新しいデザインの段ボールを前に商談。時代の流れに合わせ、環境負荷の少ない段ボールも次々に生まれている。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
大学4年間、練習の厳しい体育会系テニスサークルに所属。時間厳守、声出し・球拾いの徹底など、社会人にも通じる礼儀が身についた。またサークルの中で、コート手配や大会出場メンバー選定、練習内容決定などを担当。集団の中でまとめ役を担ったことは、多くの人間との折衝が主となる営業業務に役立っている。
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