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最終更新日: 2007/11/12
(マークの説明) 正社員 理文不問 3年増益
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プロの仕事研究
突如差し込まれたイレギュラー案件に、短納期で応えた制作コーディネートのプロ。
専門職系−まだまだある専門職
開発部
石垣 恵一(仮名) (28歳) Keiichi Ishigaki
入社4年目 / 獨協大学 外国語学部 英語学科 出身

プロフィール
「言葉そのものに深く関わりたい」との想いからホンヤク社を志望する。「言葉は人と人とをつなぐもの。分野・メディアに捉われることなく様々な翻訳を扱っているここでなら、きっと言語と自分の可能性を追求できる」と思えたことが決め手だった。入社後は制作コーディネータを経て、現在は開発スタッフとして活躍中。

プロローグ
制作コーディネータの石垣には、毎朝、出社後に必ず行う仕事があった。

それは、ある独立行政法人が配信するプレスリリースの、和文英訳に関する業務。その日、日本語でリリースしたニュースを、次の日までに英文にして返す、というものだ。毎朝、9時半までに届いた和文を、10時半までに翻訳者に送る。翌朝には、英訳が翻訳者から送られてくる。それを確認してクライアントに納品。そして翌日リリースする和文をまた翻訳者に送る、という具合だ。

手慣れたいつもの業務。さして負担ではない。経済に特化した独立行政法人のプレスリリースだけに、記事は経済系の内容で埋め尽くされているが、担当の翻訳者も経済に詳しいスペシャリスト。毎日の翻訳で、その案件専用の用語も、クライアントの要望する表現、ニュアンスも、しっかりと理解している。「よろしくお願いします」。そう一言伝えておけば、翌日には完璧な形で仕上がってくるのだ。

2007年1月。その日も、そうなるはずだった。いつものように出社して、完成した英訳を読み、問題がないことを確認。翌朝リリースする記事を翻訳者に送って、それで終わりと思っていた。ところが――。

記事の内容が、いつもと違う。 1
異変に気づいたのは、翻訳者に翌日分の記事を送り、しばらく経過した頃だった。突然、石垣の電話が鳴った。翻訳者からだった。

「あの…、内容がいつものものと違うんですが…」。

「えっ?」。嫌な予感がした。「どういうことだ?」。何しろ毎日のことだ。最近は、翌日分の記事に目を通さず、翻訳者に送ることも多くなっていた。「それが良くなかったのか」。記事を読んでみる。「何だ、これ!?」。そこには、経済についてではなく、エネルギー関連の内容が記されていた。

「マズイな…」。翻訳者には、それぞれ得意、不得意なジャンルがある。この翻訳者は、経済に造詣は深いが、エネルギーの分野に詳しいという話は聞いたことがなかった。一応依頼をしてみるも、やはり反応は鈍い。「やって頂けませんか?」 「…すみません、ちょっと自信がないです」。いつも担当しているだけに、クライアントの要望、好みは分かる。だが、専門知識がおぼつかないとのこと。無理もない。食い下がってはみたが、結局は断られてしまった。

思い返してみれば、この案件を担当することになった時、「エネルギー関係のニュースもある」と聞いた記憶はある。だが、担当になって約10ヶ月、これまで一度もなかった。それだけに、まさかという気持ちは強かった。

登録翻訳者の中から、適任者をピックアップする。 2
「さて、どうするか…」。いつもと勝手が違おうと納期は同じ。翌朝には納品しなければならない。こういう時こそ、制作コーディネータである石垣の手腕が問われるのだ。

ホンヤク社には、約700名の登録翻訳者がいる。この中から、エネルギー分野の知識に明るく、かつ、短納期の案件に対応できる人をピックアップしなければならない。いつもお願いしている翻訳者と、遜色ないクオリティを出せる人物であることもポイントだった。

「誰にお願いしようか」。石垣の頭には、すぐさま2名の翻訳者が浮かんだ。両名ともエネルギーの分野に強いと聞いたことがある。その上、実力もあり、仕事も速い。まさに適任だった。しかし、急な依頼だ。力のある翻訳者のため、仕事が埋まっている可能性はある。こればかりは、運に頼るほかない。連絡を取ったところ、一人目はやはり仕事が入っているため無理とのこと。頼みは、あと一人だけだった。

「プルルル――」。祈るような気持ちで電話をかける。「はい」 「こんにちは、ホンヤク社の石垣です。お世話になります。実は、緊急でお願いしたい案件がありまして…」。記事のこと、納期のこと、仕様のこと。石垣は、事の詳細を説明した。「急に言われましても…」 「そこを何とか! できる限りのサポートはします。ですから、何とかお願いします!」。

「…分かりました。やってみましょう」。

クオリティ維持のために考えた、3段階のチェック体制。 3
「ありがとうございます! 助かりますっ!」。

どうにか翻訳者は確保できた。あとは、どれだけクライアントのニーズに適した形に仕上げていくことができるかだ。石垣はまず、用語や文章のトーンといった、この案件に関して守るべきルールを新たな翻訳者に伝えた。

クオリティに関しては、ある程度は翻訳者の力を信じるしかない。それでも初めてだけに、戸惑いはあるはず。それをいかにしてカバーするか。「どうすればクオリティを維持することができるのか」。納期は刻一刻と迫っている。焦りと不安の中、石垣はそればかり考えていた。

「チェックの工程を3段階にしよう」。石垣が考えたのは、チェック体制の強化だった。いつもは自分だけが英訳をチェックしている。だが今回は、それだけではさすがに心もとない。そこで、普段翻訳を担当している翻訳者、文章が英語らしい表現になっているかどうかをチェックするネイティブチェッカーの協力を仰ぎ、自分を含めた3度のチェック作業を行うことにしたのだ。

体制は決まった。あとは、全てが時間通り進むことを願うのみ――。

英訳が完成。残すは3人によるチェックのみ。 4
「まだか、まだか…」。石垣はやきもきしながら、英訳の完成を待っていた。18時までに英訳を完成させ、普段翻訳を担当している翻訳者に、文章のトーンやニュアンスをチェックしてもらう。その後、翌朝までにネイティブチェッカーが表現をチェックし、最後に自らが抜け漏れ、数字などをチェックして、翌日の9時半までにクライアントに納める。もちろん、納期の遅れは許されない。今は、1分1秒が惜しかった。

「よしっ! 英訳が来た!」。息つく暇もなく、チェックに回す。「ここで大きな修正が入るようなら、もう間に合わない」。不安はあった。だが、完成した英訳のクオリティは高く、2人のチェックも無事終了。あとは石垣のチェックを残すのみとなった。

「ここはOK…、ここも間違いない」。最後の最後でミスをするわけにはいかない。焦る気持ちを抑えながら、石垣は慎重にチェックを行った。「よしっ。これで大丈夫だ!」。メールの送信ボタンを押し、納品は完了。どうにか間に合った。「終わったぁ…」。ようやく、石垣の顔にも笑みがこぼれた。

エピローグ
数週間後、同じクライアントから再びエネルギー関係の英訳依頼が舞い込んだ。この時、クライアントから「この間のプレスリリースの翻訳、良かったよ」という言葉を頂いた。「これは嬉しかったですね」と、石垣は振り返る。

「翻訳者の方に最高のパフォーマンスを発揮してもらうために、コーディネータは常に最良のフローを考えなければならない、ということ。そのために、翻訳者の特性、長所短所をしっかりと把握しておかなければならない、ということ。それらを学びました」という石垣。現在は開発部にて、営業や制作の支援にあたる。「言葉は人と人をつなぐ大切なもの。翻訳という仕事を通じ、人と人をつなぐ架け橋となれたら良いですね」。
開発部のスタッフと。「最近、こんなことがあってね…」。打ち合わせ中も、ついつい話は脱線しがちだ。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
学生時代から英語への興味は強かった。高校時代はオーストラリアに1年間留学したし、大学時代には友人を手伝い、論文を英語で書くなどしていた。通訳のアルバイトをしていたこともある。そうして培った語学力は、ダイレクトに現在の仕事に役立っている。
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