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最終更新日: 2007/10/01
(マークの説明) 正社員 3年増益 株式公開
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プロの仕事研究
周囲の誰もが手がけたことのないミャンマーへの鉄鋼の輸出を実現した商社営業のプロ。
営業・販売系−営業(法人・新規開拓が中心)
貿易本部第一部鋼板室
斉藤 広志 (28歳) Hiroshi Saito
入社4年目 / 一橋大学大学院 言語社会研究科 出身

プロフィール
就職活動時、海外とのやり取りを通して、幅広い知識と経験を得られることに魅力を感じ、商社を志望。その中でも一人ひとりが大きなプロジェクトを持って、仕事ができることに魅力を感じ、岡谷鋼機へ入社。現在、アジア各国への鋼板の輸出と三国間貿易を担当。様々な新規取引の実現に取り組んでいる。

プロローグ
「ミャンマー? 確かに輸出はできるけど、銀行間での資金決済が禁じられているよ」。ミャンマーへ鉄鋼を輸出した場合のお金のやり取りについて相談に来た斉藤に対して、経理部の担当者は言った。「つまり取引はできないってことだよ」。ミャンマーの軍事政権に対して、アメリカをはじめとする欧米諸国は経済制裁を加えており、ミャンマーとの資金のやり取りができない。周囲の誰も行なったことのないビジネスを手がけてやるぞ、と意気込んでいた斉藤の前に厳しい現実が立ちはだかった―――。

「他ではまずやらない。そこに何かチャンスがあると思ったんですよ」。斉藤が所属する貿易本部は、日本の鉄鋼メーカーのコイル(様々な製品の材料となる、円状に巻かれた薄い鋼板)の東南アジアへの輸出や三国間貿易を行なっていた。「話を聞いた時、困難より先に、まず『面白そうだな』と思いましたよ」。先輩から引き継いだ仕事だけでなく、自ら主体的に取り組める仕事を探していた斉藤。この仕事を通して、斉藤は本当の商社の仕事の面白味を理解できたという。不可能と思われたミャンマーへの鉄鋼の輸出を実現した商社営業のプロの仕事を追う。

ミャンマーからやって来た男。 1
「向こうで、お世話になった人だ」。タイに置かれた岡谷鋼機の拠点から日本に戻ってきた駐在員から、斉藤はミャンマーの事業家を紹介された。斉藤が所属する貿易本部第一部鋼板室は、主に普通鋼板と呼ばれる日用品や機械などの部品に用いられる薄い鉄を扱っている部署である。ミャンマーの事業家は、現地にある岡谷鋼機の関連会社とも取引があるという話だった。

「ミャンマーには高炉がなく、鉄鋼はインドや中国からの輸入にすべて頼っているんです」。事業家は言った。ビルや家の建材、日用品…何をつくるにしても鉄鋼が必要であった。5200万人の人口を抱えるミャンマー。経済的には、貧しくとも需要が存在する。「日本の信頼できる会社から、品質のよい日本の鉄鋼を仕入れることができたら嬉しいのだが…」。確かに、同じ品番であっても、鉄鋼の質はつくられた場所によって大きく異なる。日本の鉄鋼をミャンマーに売ってみたい。事業家の話を聞いて、斉藤はそんな想いに駆られた。「いいでしょう」。

輸出はできる。しかし、取引はできない。 2
早速、ミャンマー国内で需要のある鉄鋼について、斉藤は事業家に調べてもらった。この件を上司に相談すると、「面白いと思うなら、やってみろ」と任せてくれた。次に斉藤は国内の鉄鋼メーカーから話を聞き、見積もりをとった。「え、ミャンマーに輸出するって? そんなことができるの?」。あるメーカーの海外輸出部の担当者は斉藤にそう聞いた。ミャンマーへの鉄鋼の輸出とは、少なくとも斉藤の周囲では誰も行なったことがない取引であった。面白くなってきたぞ、と思った。

商品の取引において、最大の敵はリスクである。そのため、同時に斉藤は社内においても、万全に手配を進めた。「ミャンマーか? 法律上は問題ないな」。審査部の男が言った。「輸入できるよ」。斉藤は嬉しくなった。よし、これでいよいよ輸出が見えてきたぞ。次は、経理部を訪れた。代金を回収できるかについて事前に確認しておこうと考えたのだ。しかしここで斉藤は出鼻を挫かれる思いを味わうことになった。「ミャンマー? 確かに輸出はできる。だけど、あそこは日本と直接、資金決済ができないんだよ」。

資金決済の禁止。それはまさに、取引ができないことを意味していた。

思わぬ、解決策。 3
「つまり、ミャンマーの軍事政権に対して、アメリカ政府が法律をつくって、今経済制裁を加えているんだ」。経理の男が分かりやすく説明してくれた。「日本国内の銀行はミャンマーの銀行と資金のやり取りを行なうことができない」。斉藤は思わず唸った。なんとか取引できる方法はないか、と聞いたが、経理の男からよい答えは返ってこなかった…。

自分のデスクのあるオフィスフロアに戻って、斉藤は少し状況を整理しようと思った。「参ったな…」。ミャンマーの事業家に対して、「任せてくれ」と斉藤は見栄を切ったばかりだった。ところが、輸出はできるものの代金の回収ができない。

「―――そんなことなら、任せてくださいよ。私の友人がシンガポールにいるんです」。事情を話すと、受話器の向こう側にいるミャンマーの事業家は弾んだ声で言った。どういうことか、と斉藤は聞いた。「簡単なことです。あなたが、彼の会社に鉄鋼を売る。彼が、私の会社に鉄鋼を売る。どうです?」。「彼の会社の信用状は取れますか」。「もちろん」。ミャンマーの事業家が言った。―――そういう手があったか。斉藤は微笑んだ。

ミャンマーの人々を潤した、鉄鋼。 4
それから先は、順調だった。ミャンマーの事業家から、シンガポールでビジネスを行なう友人を紹介された。そして、契約書を取り交わした。同じ頃、東南アジアに出張へ行く用事があった斉藤はミャンマーに立ち寄り、事業家とともに現地のメーカーなどを廻った。現地での鉄鋼に関するニーズを掴みたかったのだ。事業家が言うように、建材をはじめ、様々なものに用いる鉄鋼が不足していた。日本に戻ると、斉藤は注文を貰った鉄鋼をシンガポールに向けて送り出す手配を整えた。

日本から送り出された鉄鋼はシンガポールの友人の会社へ渡った。それをミャンマーの事業家が買った。直接ミャンマーとお金のやり取りはできなかったが、日本の鉄鋼をミャンマーに送ることができた。「ありがとう。本当に嬉しいよ」。無事製品が到着し、ミャンマーの事業家から、かけられた言葉に斉藤は大きな仕事をやり遂げたのだという実感を得ることができた。事業家が受け取った鉄鋼は、ミャンマーの人々にとってかかせない家庭用のウォータータンクに加工される予定だった。斉藤の仕事は大きな実を結んだのである。

エピローグ
「商社の仕事は仕組みをつくり出すことなんです」と斉藤は言う。入社3年目、先輩から引き継いだ仕事だけでなく、自ら主体的に取り組める仕事を探していた斉藤にとって、この仕事はイチからすべて自分で仕掛けた大きな経験となった。「こうやって取引全体を自分でつくっていけるところに、岡谷鋼機の仕事の魅力はあると思うんです。誰も手がけていない新しいビジネスを近いうちに次々とつくれるようになりたい」商社営業の醍醐味を知った斉藤の眼差しは早くも“次”に向けられている。
2ヶ月に1、2回は海外へ出張して、営業を行なうという斉藤。次のビジネスを仕掛けるために忙しく過ごしている。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
学生時代に多くの海外旅行やカナダでのホームステイを経験。海外での経験を通して、自分の小ささと自ら動き出さないかぎり何も始まらないことを実感。多くの人や物事に主体的に関わっていくという現在の仕事には、学生時代のこの経験が活かされている。
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