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最終更新日: 2007/10/15
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プロの仕事研究
大手ポータルサイトとの交渉をまとめ、プロジェクトを成功させた事業立ち上げのプロ。
事務系−経営企画
グループ戦略室
渡辺 雅之 (34歳) Masayuki Watanabe
入社10年目 / 京都大学 総合人間学部 出身

プロフィール
大学卒業後、外資系戦略コンサルティング会社勤務を経て、1999年、ディー・エヌ・エーに入社。以来、営業、マーケティング、新規事業立ち上げなど様々な業務に携わり、会社の創業期を支える。現在は、グループ会社であるエアーリンクの旅行事業部門を担当。

プロローグ
「やっとここまで来たな!」。 「お疲れ、なべ!」。2000年7月――、創業間もないディー・エヌ・エーと大手ポータルサイト4社とが提携し、共同でオークションサービスを開始する。それを祝うささやかな社内パーティーの中心に渡辺雅之がいた。一段落したプロジェクト。しかし、渡辺はすでにさらなる目標へと視線を移していた。

「インターネットは世界を変える情報革命だ。今後、数年で人々の生活はネットを媒体にして大きく変わるだろう」。1999年、渡辺はインターネットに大きな可能性を感じていた。大学卒業後、外資系戦略コンサルティング会社に勤めていた渡辺。しかし、このようなインターネットの将来性から、また「外部の立場であるコンサルティングだけではなく、自分は実際の事業に深く関わりたい」という思いから転職を決意。当時の上司でもあった南場が創業したディー・エヌ・エーに入社を決めた。会社の創立直後だったこともあり、入社してすぐにマーケティング、コンテンツ作りなど、広範な領域に関わることとなる。そのような中、任命された初めての大型プロジェクト。このプロジェクトが、創業期のディー・エヌ・エーを支える事業となるのだった。

“やれるかどうか”ではなく、“どうやったらできるのか”を考えるだけだ。 1
ディー・エヌ・エーが1999年11月に立ち上げたオークションサイト『ビッダーズ』に顧客を誘導すること――。それが渡辺に与えられたミッションだった。オークションというサービスは、サイトの集客力が大きな鍵となる。人が集まることで商品が集まり、商品が集まることによって、さらに人が集まる。しかし大手ポータルサイトならまだしも、会社を設立して3ヶ月という無名の会社が顧客を集めることは容易ではない。しかも、ディー・エヌ・エーはシステムの開発などに時間がかかり、『ビッダーズ』を開始した段階で、すでに競合が乱立状態になっていたため、集客力向上は差し迫る課題となっていた。

社長である南場は、ミッションに対して具体的なやり方までは指示しなかった。だが、渡辺は「自分にできるだろうか」という不安を感じることはなかった。「サイト運営の成功のために集客力は絶対的に必要だ。それを社長から任務としてもらった以上、自分にできるかどうか悩んでも仕方がない。自分のベストを尽くすだけだ」。こうして2000年2月、渡辺のチャレンジが始まった。

渡辺がとった方法とは――。 2
考えた末、渡辺がとった戦略は“未だオークションを自社で開始していない大手ポータルサイトと提携すること”。ディー・エヌ・エーにはしっかりとしたサイト運営のシステムやノウハウが、大手ポータルサイトには集客力や知名度がある。つまり、提携することでポータルサイトはシステム開発や面倒な運営を自社で行うことなくオークションを自社コンテンツとして開始することができ、ディー・エヌ・エーは大手ポータルサイトの知名度によってサイトに顧客を誘導することができる。「双方にとって事業上のメリットは多い。無名のディー・エヌ・エーが大手ポータルサイトと提携し、先行するサービスに対抗する台風の目になるという点で話題性も十分ある」。渡辺は、各社と交渉を開始した。

当初は各社とも想定通りの良い反応を示し、提携交渉はスムーズに進むかのように見えた。早々と2000年の7月にポータルサイト4社がサービスを同時リリースする方向で見込みがつき、これを受けてシステム陣は開発を開始。しかし、その後の具体的な話し合いの場になってくると、プロジェクトは膠着状態に陥ったのである。

「信頼し合える相手でなければ」。 3
サービスに関する具体的な細部の話し合いの場になると、サイトデザインについて、データベースのつなぎ方について、顧客情報の取扱いについてなど、各社の要求は厳しさを極めた。もともとオークションサイトを構築しているシステムは一つなので、各社ごとに要件を変えるには、多大な時間と費用がかかる。ディー・エヌ・エー側もオークション運営会社として譲れない部分があり、交渉内容が具体的になればなるほど、要望がぶつかり合う回数が増えていった。

「7月に向けてシステム開発は始まっている。絶対にそれまでに交渉をまとめあげなければ…」。4社が参加することを前提に設計されているため、1社でも交渉が決裂すれば多大な投資が無駄になる。徹夜で開発を続けるシステム陣を横に、それは渡辺にも痛いほど分かっていた。当時渡辺は25歳。「社会人経験も浅い自分。ぶつかり合うだけでは分かってはもらえない」。そう考えたとき渡辺は、代表である南場から学んだスタイルを思い出した。それは、“困ったときこそ誠実であれ”。どこが譲れて、どこが譲れないか、そしてそれは何故か。全てオープンにして誠実に交渉に臨む。南場はビジネスにおいて、それを何より大切にしていた。「サービスは開始すれば終わりではなく、永劫に続く。心から信頼し合える相手でなければ、共にビジネスをやっていけるわけがない」。上司でもあり、尊敬する先輩でもある南場の背中を見つめなおし、渡辺は気持ちを新たに交渉に臨んだ。

プロジェクトの終わりは、さらなる挑戦の始まり。 4
渡辺はその後、「できることだけでなく、できないこともしっかりと提示する」という誠実な姿勢を貫いた。そして、そんな裏表のない姿勢に、各社の担当者も次第に変わっていった。今までのように、双方が主張し合うだけでなく互いにとって最も良い方法は何かを共に考えるようになっていったのだ。渡辺の誠実な対応が築いた各担当者との信頼関係。それは、ディー・エヌ・エーという会社と各社との信頼関係でもあった。

そして2000年7月26日――。ディー・エヌ・エーと大手ポータルサイト4社が提携してオークションサービスを開始することが大々的にプレスリリースされ、サービスが開始された。各担当者からの「サイト、評判良いよ!」という声に、渡辺は大きな喜びと充実感を噛み締めていた。しかし、彼の胸に達成感が込み上げることはなかった。「まだ、達成はしていない。これからサイトにユーザーが集まり、満足してサイトを使ってくれる。そうなって初めて“達成”だ」。会社を支える新規事業の立ち上げを“誠実さ”で成功に導いた渡辺。彼の視点はすでに、次の目標を見据えていた。

エピローグ
その後も渡辺は、様々な新規サービス・事業の立ち上げに関わってきた。そんな彼の現在の目標は、「新規事業立ち上げのノウハウと精神を後輩に教えていくこと」。

「新規事業を立ち上げたい、と考える人はたくさんいる。ただ、その思いをどう形にするか分からないという人が多いと思う。調査の仕方や、契約書の結び方など、形式化できる部分はもちろんですが、それ以上にプロジェクトの成否を左右する『姿勢』や『気合』といった精神面をしっかりと後輩に伝えてあげたいですね」。

会社設立から、多くの新規事業立ち上げを任されてきた渡辺。その経験はディー・エヌ・エーという会社の遺伝子として、しっかりと受け継がれていく。
「自分の手がけたプロジェクトについては、その部署を離れてからも頻繁にチェックしています」と渡辺。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
学生時代、バックパッカーとして30ヶ国以上を旅行し、各国で様々な価値観や常識、感性の差に触れた。その際身につけた、どのような相手や状況に対しても柔軟に対応できる姿勢は、社内外問わず様々な価値観を持った人間と関わる現在の仕事でも活かされている。
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