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メーカー(鉄鋼・金属・非鉄金属)
最終更新日: 2007/11/19
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プロの仕事研究
未経験の管財経理に正面から挑み、終わりの見えない決算業務をやり遂げた経理のプロ。
事務系−財務・経理・法務・広報
本社経理部
吉本 裕之 (30歳) Hiroyuki Yoshimoto
入社7年目 / 関西学院大学 商学部 出身

プロフィール
「形に残る仕事をしたい」と考え、メーカーを中心に就職活動を進める。企業としての安定性に惹かれ、2002年合同製鐵に入社。大阪製造所にて製品出荷担当を務めた後、2003年7月、本社経理部に異動。以来、原価計算・管財業務を担当し、会社の経営管理に大きな役割を果たしている。現在は後輩の指導にも尽力。

プロローグ
「俺、異動することになったよ。これからは、お前が中心になって管財業務をやっていくしかないなあ」。
ある日の合同製鐵株式会社、本社経理部。上司の言葉に、吉本裕之は驚きを隠せなかった。託されたのは、彼にとって未知の領域である管財業務。会社が取得した土地、建物、機械装置などの固定資産を洗い出し、税金などを考慮しながら適切な費用計算を行っていく仕事である。
経理部に配属されて2年、主に原価計算(各部署からの資料をもとに、製品製造にかかる費用を算出する業務)を担当していた吉本は、突然託された使命に戸惑うばかりだった。「知識もない、経験もない、こんな自分にできるのか…?」。大きな不安が頭をよぎる。しかし、管財業務を一手に引き受けていた上司が異動になる以上、誰かがその仕事を引き継がなければならない。「やるしかない」。吉本は自らを奮い立たせ、課せられた責任を果たそうと決意を固めた。

その直後の2005年4月。会社の年間業績が確定し、決算をまとめる時期がやってきた。
それは、吉本にかつてない試練が訪れたことを意味していた――。

手探りのまま迎えた決算期。 1
決算業務は、経理グループにとって1年で最も重要な仕事。ここで確定した数字は会社の年間業績として公式発表されるため、一つたりとも間違いの許されない業務である。そのうち管財業務担当である吉本の仕事は、会社が取得した建物、機械装置などの減価償却費(取得にかかった費用を、一定の計算法によって年ごとに割り振ったもの)を算出し、集計すること。どの工場がどんな設備をいくらで買ったのか。それは建物なのか、機械なのか。それらの耐用年数は何年で、今年は購入してから何年目なのか…。それらの情報をすべて集約し、税金などの条件を加味して費用を算出していくのである。しかし上司から管財業務を引き継いだばかりの吉本にとっては、すべてが手探り状態。そんな状況のまま、彼は決算業務という重要な仕事に取り組まなければならなかった。

「一体、どれだけの計算をしないといけないんだ…?」。合同製鐵は、大阪・姫路・船橋の3ヶ所に製造所を持ち、それぞれが地域特性を活かした異なる製品を製造している。それだけに、導入する設備も多種多様。3製造所を合わせると、設備の数は膨大になる。吉本はそのすべてについて資料を検証し、費用を割り出さなければならなかった。その業務量は、想像の範囲を超えるほどのものである。しかし、決算発表は1ヶ月後。期日は法律で定められており、1日たりともずらすことはできない。経験が浅くとも、吉本に甘えは許されなかった。

「いつまで続くんだ…?」。次々とやってくる仕事の山。 2
「勉強しながらでも、とにかくやり遂げなければ」。決算業務が始まり、吉本はかつてないプレッシャーを感じていた。一つひとつの計算が、会社の決算数字を左右する重要な業務。どんなに小さな数字であっても、間違いは許されない。「質」と「量」の両方において高いレベルが求められる仕事に、吉本はある種のカルチャーショックすら受けていた。「今まで自分がやってきた仕事は、まだ甘かった。こんなに大量の仕事が、本当にできるんだろうか? もしできなかったら、どうなってしまうんだ?」。吉本の毎日は、不安と緊張の連続となった。上司や先輩に質問しながら何とか目の前の仕事をこなしていくが、一向に先は見えない。「どこまでやったら終わるんだ? いつまでこれが続くんだ…?」。片付けても片付けても、次々とやってくる仕事の山。どんどん近づいてくる締め切り日。その重圧に身体的にも精神的にも疲弊していく状況の中、吉本を支えるのは「この仕事をやるべき人間は、自分しかいない」という責任感だけだった。

迫る締め切り。募っていく不安。 3
「まだできないのか?」。期限が迫ると、上司からこんな言葉がかけられるようになった。複雑に絡み合った数字を扱う経理の仕事は、一人だけで完結させることはできない。吉本の算出した数字をもとに作業を進めなければならないメンバーもいる。つまり吉本の業務が遅れれば、後の業務にも支障が出るのだ。更に高まるプレッシャー。焦れば焦るほど、周りの社員の仕事が自分よりずっと手際よく、素早く見えてくる。一人取り残されているような感覚に不安感を募らせ、吉本はますます追い詰められていった。「家に帰って、ゆっくり寝たい…」。そんな思いが頭をよぎる。しかし、彼に立ち止まることは許されない。吉本が仕事を投げ出せば、会社は決算を発表することができないのだ。「絶対に投げ出したくない。最後までやり遂げたい」。いつしか吉本自身も、「上司から託された使命を果たしたい」という強い意志を持つようになっていた。

そんな彼を支えたのは、周囲の上司や先輩だった。異動先から電話で相談に乗ってくれる、元管財業務担当の上司。「まだできないのか?」と催促しつつも、吉本が悩んでいれば「どの辺りまでできたんだ?」と声をかけてくれる周囲の先輩。「ずいぶん助けてもらっているなあ…」。日々の業務に追われつつも、吉本はその温かさに感謝していた。精一杯責任を果たそうと奮闘する吉本の姿勢に、周囲の人々も応えようとしていたのである。

「終わり…か?」。無我夢中のうちに辿り着いたゴール。 4
「終わり…か?」。

その瞬間、吉本は全身の力が抜けていくのを感じていた。いつ終わるとも知れぬまま無我夢中で取り組んできた決算業務が、ついに終了したのである。責任を投げ出すことなく前進し続けた吉本は、自身でも気付かぬうちにゴールへと辿り着いていたのだ。「やったんだ…やればできるんだ!」。大きな達成感と安堵感に、吉本はかつてない喜びを感じていた。

しかし、吉本はまだ安心しきっていたわけではなかった。「何か間違いはなかっただろうか? まだ気は抜けないぞ」。その思いは、自分の責任を最後まで果たすという強い意志の表れだった。

そして、5月。大きな問題が起きることもなく、合同製鐵の決算は無事に発表された。吉本は自らの使命を、見事に全うしたのである。「1年後には、また決算業務が待っている。その時は、もっとうまく仕事を回せるようにしよう」。吉本は、すでに次の仕事に向け歩み始めていた。

エピローグ
「経理は、奥の深い仕事。凝り性の僕には向いているかもしれませんね」と語る吉本。彼は現在、管財業務と原価計算という二つの仕事をほぼ一人で担当している。現在では後輩もおり、その指導にも力を注ぐ毎日だ。
「初めての決算業務の時は、『上司は今までこんなに仕事をしていたのか』と驚きました。でも、今では自分も同じくらい仕事をこなせています。後輩には今後、できるだけスムーズに仕事を引き継いであげたいですね」。
若手ながら、合同製鐵の経営管理に大きな役割を果たす吉本。自らの責任に正面から向き合うその姿勢は、今後も着実に彼を成長させていく。
後輩の指導をする吉本。苦労して身につけた知識や経験、そして仕事への姿勢が、社内で脈々と受け継がれていく。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
大学時代はサイクリング同好会に所属し、日本中を自転車で旅した吉本。「苦しくともペダルをこぎ続ければ、いつか目的地に到達する」という経験を通じ、困難を乗り越えて目標を達成する喜びを味わった。そんな経験から養われた精神力は、地道な努力が必要となる現在の仕事でも、大いに活かされている。
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