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メーカー(鉄鋼・金属・非鉄金属)
最終更新日: 2007/11/19
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プロの仕事研究
綿密なデータ解析を通じて生産性向上を実現した、製鋼技術のプロ。
技術系−製造技術開発・生産管理
船橋製造所 生産部 製鋼工場
佐々木 省治 (31歳) Seiji Sasaki
入社7年目 / 愛媛大学 工学部 機能材料工学科 出身

プロフィール
2002年入社。船橋製造所 生産部 製鋼工場に配属され、電気炉で溶解して造られる半製品の安定生産と品質向上、コストダウンを担う。配属直後には電気炉の漏鋼という稀有な事故に遭遇。復旧に努めるなど、製鋼技術者として経験を深めた。入社以来、多角的アプローチで製鋼プロセスの改善に取り組み、社外発表も多い。

プロローグ
はじめから製鉄に興味があったわけではない。大学時代は半導体素材の研究に携わり、ゆくゆくは同業界に進むものと考えていた。しかし、偶然にも合同製鐵の存在を知り、興味を持った。鉄スクラップを電気炉で溶解し、鋳造、圧延という工程を経て鉄筋用棒鋼などに再生していく事業は、社会になくてはならないと考えたのだ。こうして、佐々木は同社への入社を決めた。入社後は千葉にある船橋製造所に配属され、鉄スクラップを溶解・鋳造する製鋼工場での安定生産、品質向上、コストダウンを担うことになった。

新人時代、電気炉から溶解した鋼が漏れる希有な事故にも遭遇した。右も左も分からないながら復旧作業にあたり、誰もが必死になって復旧に努める姿に心を打たれた。同時に技術者として製造所を運営していくことの責任を痛感した。また、経験を重ねていく中で「様々なアプローチから製鋼プロセスの改善を追求していく業務は、非常にクリエイティブだ」と感じるようにもなった。こうして着実に成長を続けていた3年目、佐々木に新たなテーマが与えられる。「製鋼の生産性向上」という大きなテーマを佐々木はいかに実現していくのか。サクセスまでの足跡をトレースする。

与えられたテーマは「生産性向上」。 1
「今年度は、生産性向上に取り組んでもらうことにする。目標数値のハードルは高いが是非、実現してほしい」。2004年度初頭、千葉にある船橋製造所 生産部で開かれた会議の席のことである。佐々木は工場長に告げられ、胸が高鳴るのを感じた。会議に出席していたのは工場長以下、3名の技術者。この時、佐々木は3年目の若手である。経験が浅いにも関わらず大きなテーマを与えられたことに、緊張すると同時に喜びの気持ちを覚えていたのだった。

生産部のミッションは、製鋼工場内において鉄スクラップを電気炉で溶解することで造られる半製品(ビレット)の安定生産と品質向上、そしてコストダウンだ。佐々木に与えられた生産性向上というテーマはそれらの全てに関わる「工場の最重要課題」である。もちろん、生産性向上は生産において永遠のテーマと言えるものだが、このタイミングで焦点が当てられた背景にはここ1、2年で鉄の需要が急伸していて、限られた生産設備で生産性を向上させなければ供給が追いつかないという切迫した事情があった。「絶対にやり遂げてみせる」。佐々木はそう決意していた。

改善余地をデータ解析により把握。 2
まず佐々木が取り組んだのが生産のデータ解析だった。製鋼工場では電気炉に鉄スクラップを投じ、それをアーク熱で溶かし、冷却して固めることでビレットを造る。そしてそのビレットが次の工程で圧延され、建築土木用の棒鋼や鋼線材になって市場に出荷されることになるのだ。製鋼工場が製造するのはビレットまでであり、圧延は同じ製造所内の圧延工場で行われる。電気炉とはその名の通り、炉用変圧器に接続された黒鉛電極と被溶解物である鉄スクラップとの間に交流アーク電流を発生させ、アークの輻射熱で鉄スクラップを溶かす仕組みになっている。

大きな電力を使用するからには当然、莫大な電気使用量になる。もちろん他にもバーナーなどの補助熱源を使うが、これら投入したエネルギーでどれだけのビレットができているのか、佐々木はその製造データを過去に遡って調査し、1日あたりの平均値を割り出すなど詳細に分析した。半月かけたこの作業で、エネルギー効率にまだまだ無駄があり、改善の余地があることが明確な数字によって把握することができた。一歩前進。しかし当然、次には対策を考えるという難題が待ち受けていた。

文献からエネルギー効率向上の手法を探る。 3
現状の設備のままでエネルギー効率を上げるにはどうすれば良いのか。その手法を探ることが佐々木の次なるテーマになった。学会や他企業が公表している研究論文を取り寄せ、さらに専門の文献なども読み込みながら佐々木は方策を練った。はじめは暗中模索だったが、様々な文献資料に目を通しそれらを理解していくことで、おぼろげながら光明が見えてきた。佐々木が着眼したのはアーク熱を発する炉用変圧器。「電気を通す時間やタイミングを変えることで、さらにエネルギー効率が向上するのではないか?」。そう推論したのだ。

佐々木は製鋼工場の操業記録を片手に、「炉用変圧器がこれまでどうコントロールされてきたのか」に注目して再度データ解析を進めた。その結果、有力であろうと考えられる複数の方策を見出した。次はそれらを実際に取り入れ、現場のオペレーターと一緒に検証する作業だ。例えば、「電極に何分間電流を通すのか」。電気炉は、鉄スクラップを熱で掘り下げながら溶解させていく。この仕組みを加味し、電気を通すタイミングを考えながら様々な検証をしたのだ。佐々木が見出した方策によって、徐々にエネルギー効率が上向いてきた。そしてついに半年後、当初目標にしていた改善数値に達した。誰もが認める、快挙だった。

社外発表の場で成果を認められる。 4
その年の秋、同業他社の技術者がそれぞれの活動成果を発表し合う電気炉部会に佐々木は出席した。自身が追求した生産性向上における改善成果を発表するためである。20数社・60事業所から集まった製鋼電気炉メーカー各社の技術者を前に、佐々木は2ヵ月間をかけてまとめた成果を発表した。他社のベテラン技術者が見つめる中での発表。「合同製鐵を代表している」という大きなプレッシャーを感じた。だが、佐々木の口調は落ち着いていた。自分の力で見出した手法に自信があったからだ。

発表後の質疑応答の時間には、専門的な質問が次々に投げかけられた。それは佐々木の発表内容が注目された証。部会は2日間かけて行われ、最後に技術者全員が集まる懇親会が催された。その時、佐々木は電気炉業界では非常に有名な技術者に声をかけられた。「君の発表は実に興味深いものだったよ。その若さでエネルギー効率の核心に触れる発表は珍しい。これからも期待しているよ」。嬉しかった。プロの技術者として今後も切磋琢磨していく、それは佐々木が思いを新たにした瞬間だった。

エピローグ
その後も佐々木は様々な改善テーマに取り組み、製鋼工場における品質の維持・向上・コストダウンに寄与した。最近では1年をかけて鉄歩留の向上を追求し、この成果は欧米各国と日本の製鉄メーカー各社が集結して4年に1回開催される世界製鋼会議の場で発表する予定である。

「製鋼製造での改善テーマ追求に終わりはないが、様々なテーマを経験することで製鋼全体に関する知見を深め、社内だけではなく製鋼業界で存在感を放つ技術者に成長したい」という思いが佐々木にはある。製鋼電気炉の分野で国内に止まらず世界レベルでトップクラスと言われるような技術成果を残す、それが佐々木の将来に向けた大いなる野心である。
製鋼工場のオペレーションルームで、電気炉内の溶解プロセスを注視する佐々木。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
分野が異なるため、大学で学んだことが直接仕事に役に立つことはない。しかし「学ぶことに対する姿勢」や「ある現象を仮説にもとづいて検証していく方法」は、どの分野に取り組む場合でも必要なもの。他分野でも活躍できる、技術者としての基盤を築けた有意義な学生生活だったと考えている。
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