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インフラ(鉄道・航空・海運・運輸)
最終更新日: 2007/10/01
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プロの仕事研究
民営化による、初めての連結決算業務に携わった財務・会計のプロ。
事務系−財務・経理・法務・広報
財務部 主計第二課/副主任
藤枝 薫 (27歳) Kaoru Fujieda
入社6年目 / 社会学部 出身

プロフィール
3ヶ月間に亘る駅務や車掌業務などの研修を経て、「最初から深く掘り下げる専門職ではなく、会社全体が見渡せる部署に行きたい」との願い通り、全体の会計業務を担う現在の財務部主計第二課に配属。国や地方公共団体から受ける補助金や投資に関連する業務を経て、2004年7月より現在の連結決算業務に就く。

プロローグ
“企業の民営化”というあまり例をみない場面に立ち会いたい、その流れを内部で体験してみたい。そう考えて当時の営団地下鉄に入社した藤枝。自分に合った企業を探して転職を繰り返すのではなく、ひとつの会社で長く働きたいと考える藤枝にとって、“地下鉄”という公共性・社会性の高い業種であることも決め手になった。

財務部に配属され、担当として与えられたのは補助金や投資に関する業務。東京メトロは、鉄道建設や駅のバリアフリー化促進、火災対策などの面で国や地方公共団体から補助金を受けており、それに伴い発生する申請や社内外との折衝が業務の中心であった。会計の知識よりも、まずは対象となる事業内容を把握することと、折衝に必要なコミュニケーション能力が求められた。国や地方公共団体との折衝の結果、多大な金額の書類が目の前で動いたりと緊張の場面も多く、また「議会」などという言葉も飛び出し、影響の大きさに困惑したりもした。

その後入社2年目を迎え、折衝業務にも慣れた頃、藤枝に配置換えの命が下った。新たな責務は、民営化後から行われる連結決算に対応する、決算担当であった。

飛び交う単語さえ理解できない 1
民営化されて3ヶ月、藤枝に部内での配置換えが言い渡された。次に携わる業務は連結決算業務。それまでの営団地下鉄は特殊法人であったため、営団地下鉄単体で決算をすればよく、グループで決算を出し、公表をする必要がなかった。民営化に伴い今後はグループ全体の連結決算をしなければならず、そのための人員補強として藤枝に白羽の矢が立ったのだ。決算業務担当は、藤枝を含めて3名の少数精鋭。身の引き締まる思いだった。

グループ会社から財務諸表を受けて連結決算の処理をし、連結財務諸表を作成するのが決算担当の主たる、かつ一番重要な業務。同じ部署内とはいえ、これまでとは全く違う仕事内容だ。以前は会計知識が必要とされる場面はほとんどなかったが、新しい仕事は、まずは会計のことが分かっていないと進められない。はじめは、飛び交う単語からして理解できなかった。

しかし、グループ会社の経理担当にとってみれば、藤枝が初心者であることなど関係ない。当然相手も理解していることだろうと思って話をしてくる。その場はなんとか収めてひたすらメモを取り、電話を切るやいなや先輩にイチから聞くことの繰り返し。分からないことに相対するたび、とにかく先輩たちに聞きまくった。

アシスタント業務で終わった中間決算 2
それでも分からないなりに質問に答えたものの、追って確認してみると藤枝の認識とは逆であることが分かって慌てて訂正の連絡を入れたり、自信がないままに回答してしまうことも多かった。相手は経理業務何十年というベテラン揃い。注意をされてしまうこともあった。

「具体的な何かが分からない、という状態を通り越して、自分は何も分かっていないんだ」と自覚した藤枝。先輩に聞きつつ進める中で、「このままでは絶対に覚えきれない」と悟り、その日からできるだけ全てを書き留めようと、何でもノートに書き留めた。

藤枝が最初に携わったのは9月の中間決算。藤枝にとって初の決算でもあり、東京メトロにとっても初の中間連結決算である。会社としての初めての取り組み。グループ会社間での会計処理上のさまざまな決め事など、新しい仕組みを作り上げて行く中で、会計のことがまだ理解できていない藤枝ができたことといえば、決算資料のもとになる数字の入力や集計されたもののチェック程度。決算業務をこなした、というよりもアシスタント業務に明け暮れた。決算の雰囲気を初めて味わい、大変さを改めて認識して終わった。

連結決算の準備に携わり、会計知識を徐々に身につける 3
それからの藤枝は、民間他社に倣っての決算の早期化や、グループ会社へのこれまでと違う連結決算対応の説明など、来たる初の連結決算に向けての準備を始めた。決算業務は発表日が決まったら、その日までの短期間で全てを終えなければならない。数字が回ってきたら溜めずに処理し、後の資料化が簡単にできるように努めた。初めての連結決算だけに何が起きるか分からない。準備は怠ることができないのだ。

決算の早期化のため、決算システムの効果的運用にもとりかかった。システム会社と話をして、自社用にカスタマイズしてもらう。パソコンがあまり得意ではないうえに、まだまだ会計知識も未熟なため大変ではあったが、必死で勉強しなんとか稼動させられるようにまでなった。

かくして2005年4月、東京メトログループとして最初の決算を迎えた。グループ会社の決算書類が出揃い、数字が固まったら一気に連結決算処理の開始である。提出された数字のチェックに加え、グループ間の取引について各社間で数字の捉え方や勘定科目の相違はないかの確認、計上方法を詰めるなど作業は膨大にあった。

ホームページに掲示された決算内容を見て、達成感を感じる 4
9月の中間決算では手を出すことさえできなかった範囲の業務を着々とこなす藤枝。できることが広がっていく喜びと同時に、「半年前は本当にただ座っていただけだったんだ」と痛感した。全体の流れがようやく把握でき、その範囲の広さに驚くばかりだった。「ちょっとしたことに対しても、これだけ質問される事項があるんだ」――東京メトロからひとつ指示を出すことで、グループ会社に対しての影響がどれだけ大きいかも認識。近年、決算発表は年々早くなる傾向にあるため、東京メトロの決算も数年前から考えるとかなり早くなっている。その分グループ会社には年々苦労をかけていることも、改めて実感した。

かくして東京メトロにとっても、藤枝にとっても初の連結決算業務が終わった。しかし、決算の全容をまだ100%把握できているとは言い難い藤枝にとって、作業が終わった時の感想は、「ほんとにこれで終わり?」と思っただけであった。

5月末、決算内容が東京メトロのホームページに掲載された。それを見て、「あの時作っていた数字が、こんな風に全世界から見られるようになったんだ」と、ようやく終わりを実感できた。自分が作った決算、とはまだ到底いえないが、「私がやった部分もある」と思えた。その時藤枝は、9月にはなかった達成感を覚えていた。

エピローグ
連結決算業務に着任してから、丸3年がたった。何も分からなかった藤枝だったが、後輩も増え、現在では担当業務全体を引っ張っていく立場になった。経験を重ねることで自身が確実に成長していることが、こんな言葉に表れている。「最初の頃は思いもしませんでしたが、今は自分の判断が多くの人に影響を与えることを実感しています。いい加減な判断はできない。責任もやりがいも、年々大きくなっていきますね。」

“地下鉄の運営”が持つ、社会的意義を感じて東京メトロに入社した藤枝。「せっかく民間企業になったので、社会的にもっとやらなければいけないことがあると感じています。CSR(企業の社会的責任)を考えていけるような部署でも、いつか働いてみたいと思いますね」。藤枝の夢は広がるばかりだ。
分からないことはとにかく先輩に聞き続けるという藤枝。自社を評して「雰囲気が和やかで働きやすい」と語る。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
大学時代、体育会野球部のマネージャーを務めていた。同学年では藤枝ひとりだけだったので、最高学年になってからは特に、同期である主将や下級生のマネージャーの考えが常に理解できていられるように心を砕いた。そこでコミュニケーションの経験を積めたことが、グループ会社などとのやりとりが多い現在も役立っている。
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