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メーカー(ファッション・アパレル・繊維) / メーカー(機械・工作機械・ロボット) / メーカー(化学・ゴム)
最終更新日: 2008/05/12
(マークの説明) 正社員 理文不問 老舗
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プロの仕事研究
会社の代表として顧客と交渉を重ね、継続的な取引へ結びつけた営業のプロ。
営業・販売系−営業(法人・新規開拓が中心)
営業本部 国内販売部 販売第一グループ
藤本 伸一 (34歳) Shinichi Fujimoto
入社10年目 / 関西大学大学院 工学部 工学研究科 出身

プロフィール
研究室の先輩が入社していた縁から、金井重要工業と出会う。幅広い分野で活用される“不織布”に興味を惹かれて入社を決意。1年間の製造業務を経て、技術の仕事へ。自動車の内装に使われる不織布を開発してきた。入社5年目に営業へ異動。部署でも数少ない新規商材の開拓担当者として、活躍している。

プロローグ
繊維を織らないで作り上げる布“不織布”と繊維機器を製造するメーカー、金井重要工業には、長年の付き合いがあるクライアントが多い。硬くも薄くも不織布に様々な性質を持たせられる技術力と、業界事情に精通し取引先の状況に合わせた提案をする営業に信頼を寄せるメーカーが多いのだ。

入社5年目で営業に異動した時、藤本は緊張していた。長年培ってきたクライアントとの関係を崩してはならない、というプレッシャーを感じていたのだ。営業をしていれば、時には材料費高騰を受けての値上げ交渉など、クライアントにとって嬉しくない話をしなければならない場合がある。そんな時にも藤本は信頼関係を保つべく、真摯に説明を重ねた。顧客とまっすぐ向き合うその姿勢に、クライアントからは徐々に藤本個人への信頼も寄せられるようになっていった。

現在藤本は、国内販売部で新規顧客の開拓を担う数少ない人物だ。既存のクライアントとの商談をこなす傍ら、会社の代表として新しいクライアントと一から関係を築いている。顧客の要望に応えて信頼を獲得するだけではなく、その後の長年にわたる取引の土台を築き上げる役割なのだ。顧客と真摯に向き合う営業、藤本の活躍を追う。

先方の要望を汲み取り、サンプルを用意する。 1
2006年夏、ある会社から問い合わせの電話がかかってきた。電話口からは、“摩擦力の強い不織布がほしい”という要望が伝えられる。しかし先方が何を求めているのか、直接話を聞いてみないことには全体像がつかめない。藤本はいくつかの不織布をサンプルとして用意し、先方のもとへ出向いた。

詳細を聞けば、先方はある埋め立て工事のために土木用不織布を探しており、この工事で使用する現場は傾斜がきつい所があるため、埋め立て資材が滑り落ちないように十分な摩擦力を持った不織布が欲しいとのことだったのだ。藤本が用意したサンプルの中に一つ、先方の目を引くものがあった。食器洗いに使われているタワシ用不織布だ。これは繊維に砥粒(とりゅう/研磨剤の粒子)を溶剤系樹脂で担持させたものである。「この技術を応用すれば、この工事で求められる摩擦力が得られる」。技術部門で培ってきた知識をもとに、藤本の脳裏には製品のイメージが浮かんでくる。試作品にも先方は良い反応を示す。順調に進んでいく商談に藤本は確かな手応えを感じていた。

突然の担当者変更。 2
何度か試作品に改良を重ね、先方と商談を始めてから既に半年以上が経過していた。試作品への評価は高く、価格面の交渉も進んでいる。
「じゃ、今後の交渉はこの人とお願いできるかな」。
2007年春、今までの担当者からいきなり新しい担当者を紹介されたのはそんな時のことだった。

紹介されたのは、大手商社の担当者。今回の案件は大掛かりな工事であったため、必要な資材の量も莫大なものになる。そのため資材を集める調達業務を、商社が担うことになっていた。資材の中で不織布は専門性が高い特殊なモノであったため、知識のある会社の技術者が製品を探していたのだ。製造や納品のスケジュールなどに関しては、藤本が新しい担当者と話を詰めていかなければならなかった。

突然の担当者変更に戸惑う藤本だったが、それは商社の担当者も同じだった。ある程度の経緯は聞いていたはずだが、藤本とは初対面となる。藤本の人柄も掴めず、製品の良さも十分に分かっているとはいえない状態だ。丁寧に説明を重ねる藤本だったが、顔合わせはぎごちないまま終わってしまった。

全ての要望を、そのまま受け入れるわけにはいかない。 3
大掛かりな工事に使用するものだけに、不織布の納期は厳密に定められている。一刻も早く製造に取りかかりたい気持ちは、藤本も担当者も同じだ。しかし交渉は長引き、新しい要望が続々と出てきた。「現場で不織布をつなぎ合わせるために、製品の周辺部だけは固めないでほしい」 「万が一の遅れもないよう、製造は早めに。しかし、納入は工事の直前に行なってほしい」。加工に関して、納入に関して…要望は多岐にわたった。しかし、今回の不織布は溶剤で一気に固めていたため、不織布の一部を未加工にするには非常に手間がかかってしまう。また製造した製品は早めに納入しなければ、金井重要工業としても次の製造に取り掛かれない。会社としての損失になってしまうのだ。

「いえ、その条件で納入することはできません」。
交渉の場で、藤本は何度となく繰り返した。納期のことを考えても、新しいクライアントであることを考えても、契約を焦る気持ちは少なからずある。しかし、安易に要望をのんでしまえば、今後の取引にも影響が及ぶ。長い付き合いを考えるからこそ、相手の要望を突き返さなければならないのだ。会社の代表として、藤本はクライアントの要望一つひとつを精査していく。タフな交渉が数ヶ月にわたって続いた。

契約にいたったのは、半年にわたる交渉の末だった。 4
「加工に関しては、何とか引き受けます。かわりに、製品の保管に関してはどうにか対応していただけませんか?」。
交渉の末、藤本は一部条件でクライアントの要望を受け入れる判断をくだした。社内の製造部門とかけあい、加工方法について相談する。周辺部だけを未加工にできる製法のメドも立ち、クライアントが求める期日内で製造するスケジュールを組むこともできた。クライアントも、製品を保管できる場所を探してくれる。“周辺部を未加工にした製品を前もって製造し、クライアントが倉庫を借り入れて保管する”という条件で、加工と納入に関して合意を得ることができた。藤本は先方と意見を闘わせながら、会社として譲れる部分・譲れない部分を見極めていったのだ。

「…この条件で、契約しましょう」。
交渉の末、加工や納品に関する詳細が決定し、2007年末には無事に製造を終えた不織布が納入された。商社の担当者との初めての顔合わせから、半年以上。最初の会社との打ち合わせから考えれば、実に一年がかりだ。「ようやく終わった…」。藤本は、ひとまず安堵のため息をつく。しかし、これから長い取引ができるかが、営業としての実力の見せ所。藤本は改めて気を引き締めるのだった…。

エピローグ
「色々ありましたよね」と思い出話に花が咲いたのは、打ち上げとして二人で飲みに行った際のこと。長期間に渡る真剣な交渉の結果、藤本と商社の担当者との間には連帯感が生まれていた。藤本とクライアントは現在、次なる工事に向けての商談に入っている段階だ。

今回の商談もハードなものになりそうだが、良い結果を出せそうな予感がしている。それは半年以上にわたる交渉で培ってきた、担当者との信頼があるからだ。また一人、新しいクライアントとつながりを築いた藤本。今日も、一人ひとりの顧客との信頼関係を積み重ねているのだ。
多くのクライアントとの商談を進めるため、手帳は手放せない。付箋も活用して、スケジュールを管理している。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
アルバイトとして、家庭教師や学習塾の講師を務めた。気の散りやすい子供に長時間勉強を教えるには、相手の気をひいて楽しませる話し方の工夫が欠かせない。様々な人との交渉を担う営業の仕事では、アルバイトで培ったサービス精神が遺憾なく発揮されている。
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