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メーカー(ファッション・アパレル・繊維) / メーカー(機械・工作機械・ロボット) / メーカー(化学・ゴム)
最終更新日: 2008/05/12
(マークの説明) 正社員 理文不問 老舗
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プロの仕事研究
高すぎる要望を出すパキスタンの顧客を納得させた技術サービスのプロ。
技術系−製造技術開発・生産管理
開発本部 開発部 設備開発グループ
成山 吉史 (35歳) Yoshifumi Nariyama
入社10年目 / 長崎大学大学院 工学研究科 出身

プロフィール
大学院ではプラスチック素材を用いた歯車の振動・騒音を研究する。金井重要工業に入社当初は製造グループに配属される。その後、技術グループ、販売グループ、QTグループ、製造グループ、設備開発グループにて多岐にわたる経験を積む。技術サービスとして顧客と折衝した経験を活かし、現在もモノづくりに取り組んでいる。

プロローグ
「2年間、パキスタンに行ってくれないか」。

成山が上司からの辞令を受け取ったのは、入社8年目のときである。それまでも技術サービスとしてパキスタンを訪問したことはあった。金井重要工業が開発した繊維機器は国内外の紡績会社で使われているため、技術者が機器の使い方を伝えるために海外の工場に行くことは珍しくない。しかし2年間となれば単なる出張ではない。いわゆる駐在である。ホテル暮らしではなく、家を借りて生活する日々。短期間ではあるが5年前から海外に出張していた成山は、迷わずその辞令を受諾した。

成山はモノづくりに携わるため、金井重要工業に入社した。同社は114年前に繊維を加工する部品を生み出した。天然の綿をきめの細かい繊維にほぐして一定方向にそろえ、糸によりあわせていく際に使われる部品だ。金井重要工業が製造する繊維機器は、紡績会社にとって欠かせないもので、国内ではトップクラスのシェアを占めている。成山は入社後、繊維機器の主力部品であるリングの製造に携わった。入社3年目から8年目にかけて海外各国に足を運び、機械を使用している顧客の声に耳を傾けたことで、成山はモノづくりの本当の面白みを知ることになる。

英語力は高校で習ったレベル。現地でのコミュニケーション方法は…。 1
「日本語を喋れる現地スタッフがいるから安心して行ってきてくれ」。

成山が初めて海外出張を任されたのは入社3年目のときだ。当時、繊維機器の重要な部品であるリングトラベラの製造や製品開発に携わっていたメンバーは数少なかった。出張の目的は、取引実績のある韓国の大手紡績会社に新開発の繊維機器を導入すること。成山は技術者として顧客の質問に答え、機器の性能やメリットを伝えた。成山たちの提案は実を結び、顧客は新たな機器を導入した。韓国の紡績業界のリーディングカンパニーとの取引拡大により、韓国市場における金井重要工業の製品シェアはぐんと伸びた。成山は、技術者である自分が顧客の工場に行く意味を肌で理解した。技術的な質問に答え自社製品の使い方を正しくPRすることで、顧客の満足度を高めるのだ。

韓国での出張を終えた成山が次の指示を受けたのは、帰国後すぐだった。「2週間後にタイとインドネシアに飛んでくれ」。今度は成山ひとりで向かう。もちろんタイ語もインドネシア語もわからない。現地の紡績会社に日本人スタッフが多かったこともあり、何とか意思疎通を図ることができた。それから成山は年間6回ほど海外出張することになる。

各国によって異なる要望に対して的確に応えること。 2
「天然の綿が栽培されている地域は風が強いので、ごみがからまりやすい。細かなごみを一度で取れるようにしてほしい」。

工場で実際に機械が使われている様子を見ることで、成山は自社の製品に対する期待や要望をダイレクトに知ることができた。たとえば各国の気候によって、栽培される綿花の状態は異なる。風が強くて砂利がからまりやすいこともあれば、小さな羽虫が入り込みやすい場合もある。また衣料に対する文化の違いによって、綿花からつむがれる糸の太さや質も変わってくる。綿が栽培される環境や衣料文化の違いに応じて、紡績会社で使用される繊維機器の性能も変わってくるのだ。

成山が海外の工場を訪問すると、営業ではわからない技術面の専門的な問い合わせや要望が寄せられた。たとえば「綿から取り出した繊維を糸によりあわせる際に、もっときめの細かい糸にしてほしい」など。成山は機器の性能を確かめるため、顧客の工場で機械を動かしたりアドバイスをしたり、より高品質の糸をつむぎだすために部品を取り替えたりした。工場で使用される繊維機器の部品を変え性能をテストすることで、成山は技術に関するノウハウやデータをより詳細に蓄積することができた。

出張ではなく、駐在員として過ごした1年間。 3
「2年間、パキスタンに行ってくれ」。

辞令がおりたのは入社8年目のことだ。1人で海外に出張することには既に慣れている。それまでと違うのは、現地に家を借り、専任の運転手と料理人、掃除スタッフがつくこと。成山は、暮らすことで初めてわかる価値観の違いに戸惑った。仕事に集中できる環境を新たにつくることが重要だと気づいた。

成山が担当したエリアは、パキスタン全域である。成山は月曜から土曜まで、時間の許す限りパキスタン内をかけめぐった。1日に4〜5件の顧客を訪問し、専任の運転手とともに車で片道5時間かけて遠方の顧客を訪れたときもあった。価格についての要望に応え、見積もりを出すこともあった。技術サービスとしての経験はあったが、営業経験はない成山。仕事の幅の広がりに戸惑った。

成山がパキスタンで出会った顧客の中に、イエス・ノーがはっきりしている顧客がいた。「できるかできないか」と求められるラインが明確なのだ。あるとき、成山はこの顧客からクレームを出されてしまった。導入している繊維機器に不備があったわけではない。顧客が期待する性能が高すぎたのだ。しかし顧客は「求める性能を出せないなら、クレームだ」と言った。

日本でOKでも、海外ではNGがでることも。 4
「こちらが求めている性能を出せないなら、クレームだ。製品を返す」。

顧客の要求に、成山は戸惑った。今まで経験したことのない要求である。しかし現地に駐在しているのは成山ひとり。相談できる上司がそばにいるわけではない。本社に問い合わせようにも時差の関係ですぐに連絡することはできない。自分で解決しなければいけなかった。まず成山は顧客の要望を確認した。「よりスピーディに糸をつむぎだしたい」と言うのだ。成山は限界までスピードを追求した。しかし速さだけを重視すると、糸の品質は低下する。成山は、糸の品質を保ったうえで実現できるスピードを追求した。そして、顧客の要望と自社の技術の中間くらいで折り合いをつけるように交渉したのだ。結果、顧客は成山の実績に納得し、取引は継続することになった。

成山は実際に工場に行って顧客の要望を聞いたうえで、機器の改良を図っていく難しさを痛感した。そして求められる製品をつくり評価されるという、モノづくりの醍醐味を改めて実感した。顧客の要望をそのまま受け止めるのではなく、うまく取り入れながら自社の技術を改善していくことが成山の役割だ。技術に詳しいからこそ、できる役目である。

エピローグ
成山が訪れた国は、出張も含めると韓国、タイ、インドネシア、パキスタン、アメリカ、ブラジル、トルコだ。中でも韓国とパキスタンには顧客が多く、頻繁に訪れた。「海外のお客様と接したことで、自分の視野が広がった。顧客の声を聞くことでより良い製品を生み出すことができる。国内外問わずお客様とやり取りして要望を組み入れた製品を開発し、さらに改良点を反映させていく…。それこそがモノづくりの醍醐味だ。機器のテストを行なうことで、データを蓄積することもできる。今後も自分の想いを盛り込んだ製品を開発していきたい」と成山は熱く語った。
自分の手がけた部品が組み込まれた繊維機器を示す成山。顧客の満足度を高めるため、あらゆる質問や要望に応えている。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
大学時代に1年間休学してお金を貯め、バックパックを背負ってヨーロッパと北アフリカを旅する。行き先を決めず、自分の気持ちが赴くままに4〜5ヶ月過ごした放浪の旅。この経験は、初めての海外出張に向き合う度胸や現地スタッフとのコミュニケーションを図る際に役立った。
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