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メーカー(食品)
最終更新日: 2007/10/15
(マークの説明) 正社員 老舗
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プロの仕事研究
取引先の要望を丁寧に聞いて、可能な限り協力を惜しまない食品営業のプロ。
営業・販売系−営業(法人・新規開拓が中心)
関西営業部/課長
八尾 匡 (36歳) Tadashi Yao
入社15年目 / 阪南大学 商学部 出身

プロフィール
大阪出身。大学を卒業後、リボン食品に入社。面接時に「住んでみたいところは?」と聞かれて「東京」と答えると、入社後、東京支社勤務の辞令が下りた。以来、10年近く東京支店に勤務。業務用マーガリンや冷凍のパイ生地・ケーキ・ホットケーキなどの営業を行う。現在は関西営業部に場所を移し、活躍を続けている。

プロローグ
父親が食品に関する仕事をしていた関係で、もともと食品産業に興味があった八尾。それに加え、おいしいお酒や食べ物に目がない性格。将来は、おいしいものを世の中に広めていくような仕事に就きたいと思っていた。そして、希望通り食品メーカーへの就職を決めたのだ。働き出してみると、“食”が趣味の八尾には嬉しいことが多数あった。取引先に営業に行くと、開発中の商品を試食させてもらえたり、市場に出回る前の新商品にいち早くありつけることもある。また、食品業界にいるだけに、世の中の“おいしい情報”が入ってきやすくもあった。食べることへの興味が高い人々が集う業界なので、自然と情報が集まってくるのだ。

そんな八尾の業務内容は、製菓・製パンメーカーへの業務用マーガリン、業務用冷凍パイ生地の営業。また、外食産業への冷凍ケーキや冷凍ホットケーキの営業活動も行っていた。だが、“営業”とはいえ、大方の仕事は先輩たちから引き継いだ既存店のルート営業。「新規開拓をしてこそ一人前の営業だ」と、上司から言われた言葉が胸に響いていた。「俺も新しい取引先を開拓したい」。入社2年目の八尾は、日増しにその思いを募らせていた。

新規受注を狙って洋菓子メーカーへ乗り込んだ――だが、結果は玉砕。 1
新規顧客開拓を狙っていた八尾は、リボン食品が大阪から東京に販路を広げた30年前からつき合いがある食材問屋と共に、ある洋菓子メーカーを訪ねた。その食材問屋は、そば粉やチョコレート、缶詰などの製菓材料を製菓メーカーに卸している。今回訪問した洋菓子メーカーとも取引を行っていた。そこに八尾が目をつけ、「営業に行くときには一緒に連れて行ってください」と頼み込んだのだ。

メーカーの担当者とは、無事に面談ができた。だが、八尾が一生懸命自社のマーガリンを営業しても、担当者はまったく興味を示さない。もともとその洋菓子メーカーは別の油脂メーカーと取引をしており、リボン食品のマーガリンを使う理由がなかったのだ。八尾が自社製品の品質をどれだけアピールしても、商品テストさえしてもらえない始末だった。「仕方がないか…」。当時、その洋菓子メーカーが使っている油脂メーカーを撤退させ、リボン食品のマーガリンを導入させるほどの説得材料を、八尾はもっていなかった。「諦め」の言葉が心に浮かんだ。

「もしチョコレートを見つけてくれたら、取引をしてもいい」。 2
「君の会社のマーガリンは使わない」とキッパリ言っていた洋菓子メーカーの担当者と、八尾はそれでも世間話を続けていた。担当者も八尾も話好きだったためである。だが、それだけではなかった。「マーガリンの営業が無理でも、話しているうちに何か有益な情報が得られるかもしれない」と思っていたのだ。

果たして、その八尾の思惑はピタリと当たった。担当者が自社製品の開発話に触れた折、「実は、新商品の開発に苦労していてね…」。そうポツリと言ったのだ。聞くと、チョコクリームを包んだクッキーを新しく販売しようと思っているが、チョコレートに火を通すと苦味が出てしまって、うまくいかないとのこと。「いいチョコレートを探してくれる? もし見つかったら、君のところのマーガリンを使ってもいいよ」。担当者は、冗談めかして言った。八尾は、その言葉を聞き逃さなかった。「ぜひ、探させてください!」。担当者の言葉は世間話の延長であったが、この問題がチョコレートの変更だけで解決するはずはない。チョコレートと組み合わせる材料が替われば、クッキーそのものの味や風味も変化する。つまり、「組み合わせ」で考えなければ問題は解決しないのだ。そして、そこには当然マーガリンも含まれる。チャンス以外の何物でもなかった。「必ず探しますので、待っていてください!」。

さっそく見つけたチョコレートで試作品を作成し、見事成功! 3
会社に戻った八尾は、さっそく心当たりのあるチョコレートメーカーに電話をかけた。うまく目的のものが見つかるかはわからない。「駄目でもともと」と思いながら、「クッキー生地に包んで『包餡機(餡を包んで生地を焼く機械)』で焼けて、苦味が出ないチョコレートはありませんか?」と問い合わせた。すると返ってきた答えは「ありますよ」。思わず心の中で叫んだ。「やった!」。

八尾は急いでその商品を大阪本社に取り寄せた。本社には、試作品を作る研究室機能がある。そこで、チョコレートを包んだクッキーを焼いて、本当に苦味が出ないかを試そうと考えたのだ。成功したら、さっそく洋菓子メーカーに持っていくつもりだった。もちろん、「この会社のチョコレートがいいみたいですよ」と単に情報を提供するだけで終わるつもりはない。自社のマーガリンと組み合わせた形で試作品を作り、その製法と一緒に採用してもらうのだ。

東京支店から研究室に依頼をして、試作品を作ってもらった。完成した試作品を上司とともに試食したところ、懸念事項だったチョコレートの苦味はまったくない。変色もほとんどなかった。「これならいける。きっと、喜んでもらえる!」。

「お前は一人前の営業や!」。その瞬間、笑みを隠すことができなかった。 4
八尾は、さっそく試作品を持って洋菓子メーカーに向かった。担当者は、八尾が手にした試作品を見て驚いた顔をした。「本当に持ってきてくれたの?」。そして、一口食べた瞬間に感嘆の声を上げた。「こんなのできるんだ? このチョコレート、どこのメーカーさんの?」。八尾は、チョコレートメーカーの連絡先を教えた。そして、更にひと言付け加えた。「当社のマーガリンと組み合わせたからこそ実現できた味です。ぜひこの組み合わせで試作品を作ってみてください!」と。

次に訪問したとき、すでに試作品は完成していた。その試作品を持って某遊園地に営業に行ったところ、トントン拍子に採用が決まった、と担当者は嬉しそうに話してくれた。そして、「来月からさっそく商品を作り出すから、マーガリンをすぐに納品してくれないか?」と言う。チョコレートと共に、リボン食品のマーガリンを評価してくれた証明でもあった。

本社に戻って、上司にことの次第を報告した八尾は、「よく決めたな」とねぎらいの言葉をもらった。「それだけの油脂を使ってもらえるお客さんを決めたら、お前はもう一人前の営業や! 認めてやる!」。八尾は、嬉しさを隠すことができなかった。営業の醍醐味を初めて知った瞬間だった。

エピローグ
当初は、チョコレートクッキーに使うためだけに、マーガリンを購入してくれていたその洋菓子メーカーも、徐々にリボン食品の商品取扱を拡大させてくれた。多いときで3種類、月量にして3トン、4トンを使ってくれることもあった。

この件について八尾は、「営業とは言っても、『ウチがウチが』と主張するだけでは商品は売れない。お客様が悩んでいることに対して、真摯な気持ちで解決策を提案することが、売上につながるんだと学びました」と言う。初めて新規を決めたときの経験が、その後10年間に及ぶ営業の基盤を作ったのだ――八尾は今、改めて感じている。
昼間は営業車で得意先回りを行っているが、帰社後はパソコンに向かい、試算や資料作成に勤しむ。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
学生時代、先輩に半ば無理やり勧誘されて、地元の消防団に入った。消防団のメンバーは5〜10歳年上の人がほとんど。学生時代にはあまり触れ合わない年上の人と交流することで、勉強することがたくさんあった。目上の人への接し方や挨拶の仕方、お酒の注ぎ方などを教えてもらったことが社会に出て非常に役立った。
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