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メーカー(自動車・輸送機器) / メーカー(機械・工作機械・ロボット) / メーカー(鉄鋼・金属・非鉄金属)
最終更新日: 2007/10/01
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プロの仕事研究
大手自動車メーカー内シェア100%を目指す、自動車部品営業のプロ。
営業・販売系−営業(法人・ルートセールスが中心)
営業本部 浜松営業部一課
岡本 貴博 Takahiro Okamoto
入社11年目 / 関東学院大学 経済学部 経営学科 出身

プロフィール
「形あるものを売る営業がやりたい」との思いで入社。半年間の研修および現場実習、大阪営業所勤務を経て、2002年より現職。大手自動車メーカーのピストンリング製品の営業窓口となる。製品のモデルチェンジに伴うエンジン開発時に、自社製品を100%採用してもらうべく、情報収集や仕様提案に奔走する日々を送る。

プロローグ
エンジンを構成する重要な部品の一つ、ピストンリング。リケンにおいてピストンリングは、会社の屋台骨を支えるメイン製品で、新車搭載エンジンの国内市場向けで約50%、グローバル市場でも約20%という高いシェアを誇っている。それは、岡本が担当する大手自動車メーカーにおけるリケンのピストンリング取引実績においても言える話だった。同メーカーにおけるリケンのピストンリング採用率はなんと約80%。しかし、岡本はこの数字を決して高いとは思っていなかった。自社のピストンリングの品質を更にアピールし、製品に採用してもらってシェアを100%に近づけること。これを、岡本は自分に課せられた最大の使命として、日々営業活動に邁進していた。

しかし、エンジンに使用されるピストンリングは、頻繁にニーズが発生する商品ではない。それは、エンジンを搭載する自動車自体の開発が数年に一度程度しか行われないため。この機会を逃さずキャッチし、いかに自社のピストンリングを売り込むことができるかが、ピストンリング営業の全てを決める。そして、ある日――。ついに、その最大のチャンスが岡本の元に巡ってきた。

自社ピストンリングが入っていない唯一の“シリーズ”で、エンジン開発がスタート 1
岡本が担当する自動車メーカーでも、各製品はほぼ4年ごとにモデルチェンジが図られ、それに伴ってエンジンの開発が行われていた。ある日、岡本はいつも通り自動車メーカーへ出向いて既存商品の改良点などをヒアリングしていた。その時だった。「ちなみに、最近何か新しい情報はないですか」 「実は…今度こういうのが新しく立ち上がるよ」。その担当者の言葉に、岡本は思わず飛び上がりそうになった。それは、これまで唯一リケンのピストンリングが入っていない“シリーズ”で、エンジン開発が始まるという知らせだった。

「ついに、4年に一度の大チャンスが巡ってきた!」。岡本は胸の高鳴りを抑えられなかった。採用されれば多大な売上とともに会社に大きく貢献することができる。しかし、不採用になれば次のモデルチェンジまでこのシリーズの売上は“ゼロ”だ。「うちが入っていないシリーズだからこそ、何としても取りたい。いや、取るんだ!」。岡本は高いシェアにあぐらをかき、手綱をゆるめるつもりは全くなかった。

「エンジンをぜひ貸してください。結果は必ず出します!」 2
岡本が何もアクションを起こさなければ、他社メーカーのピストンリングが引き続き採用されていたかもしれない。しかし、岡本は機会を逃さなかった。いつごろから開発が立ち上がるのか、どういったエンジンを作るのか、コストはどのぐらいを目標としているのか。まずは先方の次期モデルチェンジでの要求性能が何であるかを知ることが第一だ。これをなくして、採用はない。

情報が収集できたら、それに基づき仕様提案書を作る。どうしたらそのエンジンの性能に合ったピストンリングを作れるか。これは担当エンジニアと相談、協力しながらの共同作業である。仕様提案書を完成させて、プレゼンを行った。提案書には新しい技術も盛り込んだ。「今まで通りのものをそのまま出してもダメだ」と考えたからだ。自動車メーカー側の反応もすこぶるよかった。「ここは一気呵成にいくしかない」。岡本は次の勝負に出た。「エンジンを貸してください。エンジンを貸していただければ、当社のピストンリングの性能の高さを必ず証明してみせます」。そんな強気なセリフが口をついて出ていた。

熱意があれば、人を動かせる 3
自動車メーカーからエンジンを借りて何をするのかといえば、エンジン評価だ。エンジン評価とは、借りてきたエンジンに試作品のピストンリングを装着し、その性能データを取ること。そのデータのもっともよかったメーカーが当然ながら採用となるのだ。しかしながら、まだ開発中のエンジンであるため、情報の漏えいを恐れ、通常そう簡単に貸してくれるものではない。しかし、岡本の自信にあふれた態度に気圧されたのか、なんとエンジンを借りることができた。「ここまで来れば、ゴールは決まったようなものだ」と思った岡本。しかし、まだ関門は残っていた。

エンジン評価は、事業所にある「ベンチ」と呼ばれる台に乗せて行う。ベンチは限られた台数しかなく、何週間も先まで予定はすでに組まれている。多くのエンジンが、ベンチが空くのを待っている状態だ。そこで岡本は事業所へ乗り込んで、頼み込んだ。「これが取れれば、このメーカーの全機種が全部うちのピストンリングになります。ライバル会社だってもう動いているに違いない。1日でも1時間でも早く結果を出したいんです!」。岡本は自らの熱意で事業所のメンバーを説き伏せ、エンジン評価は岡本の予定通りに実施された。

他社の牙城だった“シリーズ”に食い込む 4
エンジン評価のデータの数値は、先方の要求性能を充分に満たすものだった。岡本は再び自動車メーカーへ足を運んだ。「この通り、いい結果が出ました」。とはいえ、長い間A社だったものをB社へと切り替えるのは、自動車メーカーにとってみれば、それなりの決断が必要であるに違いない。そこで、岡本は製品の品質の高さはもちろんのこと、活動中には常々、やる気や熱意を形にして見せることを心がけてきた。それはたとえば、仕様提案書に新しい技術を盛り込むことであったり、対応のスピードの早さであったりした。自動車メーカーにとって開発期間は短ければ短いほどいい。だからこそエンジン評価の結果など全てにおいて、他社に先んじて出したかったのだ。

結果的に、これが大きな成功へとつながった。エンジン評価と、岡本やリケンのやる気が大いに買われ、ついにこれまで他社製品を採用としていたシリーズに、次期モデルチェンジからリケンのピストンリングが採用されることが決まったのだ。そう、岡本は他社の牙城に初めて食い込んだのである。

エピローグ
情報を入手してから、ピストンリングの採用が決定されるまでには多くの場合、1年から1年半はかかる。このため、一人で最初から最後まで担当できる機会が実は少なく、岡本自身は今回が初のケースとなった。「一から全て担当したこの経験で、大きな自信がついた」と語る岡本。

街の中でそのシリーズの車を見ると、自然と顔がほころぶ。今回、岡本の営業活動の成功により、新たな取引実績を刻むことができたリケン。しかし、それでもまだシェアは100%ではない。「今回の実績を元に、まだ採用されていないシリーズにも当社のピストンリングを売り込みたい」。あくまでシェア100%を目指す岡本。彼の目は、すでに次の開発に向けられていた。
仕事にゴールはない。岡本の視線は4年後、すでに次期モデルチェンジへと向けられている。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
学生時代に国際経営論を学び、卒論のテーマとして「自動車企業の国際展開」について研究した。「現在、自動車メーカーの海外生産へのシフト化は、研究当時に比べ格段に進んでおり、今後もさらに進んでいくと考えられます」。当時の知識が、自動車メーカーの現地調達化への対応をする上で活きている。
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