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メーカー(食品) / 流通・小売(専門店(食品))
最終更新日: 2007/11/26
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プロの仕事研究
炊飯システムの故障トラブルを的確な判断で乗り越えた、“食”の製造管理のプロ。
技術系−製造技術開発・生産管理
天白工場/統括班長
沖 英雄 (32歳) Hideo Oki
入社11年目 / 名城大学 農学部 農芸化学科 出身

プロフィール
“食”を生み出す現場に興味を持ち、カネ美食品に入社。入社後は、炊飯や調理といった仕込み業務から盛り付けなどの実務の経験を積み、4年目には一つのチームを任される班長となる。その後、徐々に業務の範囲を広げ、6年目には統括班長となり、現在に至るまで工場全体をまとめていく責任者として活躍している。

プロローグ
時にはコンビニで、時には駅で、時にはスーパーで、普段は何気なく手にする弁当やおにぎり――。毎日あたり前のように届けられ、今日も明日も明後日も、途切れることなく並んでいる。しかし、その“あたり前”が“あたり前”であり続けるために、その裏では“プロ”が日々変化する現場を支えるべくして戦っている。そんな中、スーパー、コンビニ、商業施設など、『中食(なかしょく)』と呼ばれる新しい業界で家庭の食卓を担うカネ美食品。同社のコンビニ用米飯類の製造現場を担う統括班長として活躍しているのが、沖英雄である。

入社以来、一貫して製造現場で経験を積み、現在では複数のチームをまとめながら、日々90種類、5〜7万食を超えるメニューの米飯類を世の中に送り出している。そんな沖にとって最も記憶に残っているのが、入社5年目に経験した現場での出来事。弁当やおにぎりを製造する上で欠かすことのできない炊飯システムに異常が発生し、イレギュラーの対応が求められたのだ。ちょっとした判断ミスが、大きな損失を招くことになる。一刻を争う製造現場で、沖はいかにしてこのトラブルを乗り越えたのか……。

「特殊な」工場での若手統括班長が誕生 1
「そろそろ沖も統括班長になる準備をしておいた方がいいかもな」。突然の話だった。それまで弁当の盛り付けなどを担当するチームの責任者としてスタッフをまとめる立場にあった沖が、製造現場全体を統括するポジションを視野に入れた、新たな業務を任されたのだ。朝から深夜まで常時60名のスタッフが働く製造現場において、全体の進行状況や製造計画、スタッフのマネジメントという役割を担い、最適な製造をマネジメントしていく統括班長。今までであれば、何かしらトラブルが発生しても、上司に確認をしながら対応をしていけばよかった。しかし今後は、そうした判断までも自分で行っていかなければならなくなる。

何より沖が所属する天白工場は、カネ美食品の数ある工場の中でも、ある意味「特殊な」工場だった。弁当やおにぎりなどを製造していく上で、天白工場は他の工場とは違い、扱う商品のラインナップや納品先が大きく異なる。というのも、鱒(ます)おにぎりや焼おにぎりなど、通常の製造ラインでは製造しにくい商品を、それぞれの製造方法に合わせて作り分けていく必要があるのだ。「果たして自分に務まるのか……?」 そんな気持ちが、沖の心の中に広がっていった。

万が一のトラブルに備えた行動 2
適正な製造現場を実現するために以前から沖が意識をしていたのは、設備機械への理解を深めることだった。約60名のスタッフが働く工場において、製造量の調整や製造時間の短縮、配送リミットに合わせるための対応など、人に関わる部分であれば、多少の不具合があっても、影響を最小限に抑えるための“努力”ができる。しかし、「煮る・炊く・蒸す・揚げる」といった調理工程を担う製造設備の機械が故障してしまった時には、それを人の手でカバーすることはできない。

基本的には、工場内に待機している機械のメンテナンス担当の社員が対応したり、調理機械メーカーの技術者を呼ぶことによって解決することもできるが、時間的な問題から難しいケースも発生する。そのため、沖は「万が一のために、できるだけ自分のスキルも磨いておきたい」と考え、機械のメンテナンスや修理を行う際にはできる限り、彼らから技術を吸収するように努めていた。しかし、沖が新たな役割を担うようになって3ヶ月が過ぎた頃、その“出来事”は起きた――。

状況をシミュレーションして所要時間を算出 3
「沖さん、ちょっといいですか? こっちの階で問題が……!」 夜も21時を過ぎようとしていた時、弁当の盛り付けを担当する階で現場を見回っていた沖のもとに、炊飯工程を担当する社員が駆け寄ってきた。「炊飯システムが動かなくなって、これから作業にとりかかるメニューの分のご飯が足りなくなりそうです」。その言葉を聞いて、すぐに階下に降りて状況を確認する沖。電気系統から炊飯システムの周辺、炊飯器の中身をチェックした後、沖は状況を頭の中で整理し始めた。「これでは、どんなに早くても修理に1時間はかかるな……。そこからアイドリングして炊飯にとりかかったとしても2時間半。間に合うか……?」 配送時間から逆算して、完成時間や盛り付けの時間、そのための作業開始時間をはじき出す。しかし、どんなに急いで対応をしたとしても、時間内に完成させることは難しい。「一体どうすれば……」。

その時、沖の頭に一つの方法が閃いた。それは近くの他工場への依頼。自動車で20〜30分の場所にある工場には天白工場の倍の白飯を炊くことができる炊飯システムがある。差し当たり必要となるのは、約300kgの白飯。「それだけでもカバーできれば、それ以降の分を作るまでには修理が間に合うはず」。

世の中の“あたり前”を守る―― それが沖の仕事 4
すぐさま工場に連絡を入れて依頼をすると、「300kgか……。それぐらいなら何とかできる。すぐに取りに来てくれ!」という返答。電話を切って、社員に指示を出して工場に走らせる。同時に自分は炊飯システムの修理を進める。時間は刻一刻と過ぎていくが、現場の責任を担う自分が戸惑っているようでは、現場のスタッフたちの余計な不安を助長することになってしまう。幸いにもまだそうした状況にはなっていない。心は焦りながらも、努めて平常を保って対応し続けた。

――― そして数時間後、天白工場から走り出していくトラックを見送りながら、沖は胸を撫で下ろしていた。「何とか間に合った…。よし! 次の弁当にとりかかるか!」 気持ちはすでに次のメニューに向いていたが、この一連の出来事は沖にとって一つの成長を意味していた。90種類のメニュー、5万食を超える製造量、60名のスタッフ………それらが変化し続ける状況に対して、瞬時の判断を下していくことが、その先のコンビニへの“あたり前”に繋がっていく。沖にとってこの日は、そんな実感を得ることができた重要な1日だったのだ。

エピローグ
「何かしらのトラブルが生じた時の対応パターンにバリエーションをもつこと」。現場の責任者として日々適正な製造体制を維持し続ける沖は、トラブル対処のためのポイントをそう語る。

万が一、不具合が発生した時に対応パターンが一つしかなければ、それ以外の対応方法が求められる場合は、解決に時間がかかる。一方、常日頃からいく通りものパターンを想定しておくことで、「今回はどのパターンが最も適しているか?」という視点で考えることができるのだという。自分たちが世の中の“あたり前”を支えているという責任感が、沖の心の中には常にある。
沖が統括する天白工場からは、毎日5〜7万食にのぼる米飯類が送り出されていく。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
レンタルビデオ店で4年間アルバイトとして働いていた。後半には、店長の代理として売上の管理なども任されるまでになっていた。その経験を通して身に付けたのは、全体を見通した上で状況に応じた判断をしていくマネジメントスキル。「ヒト・モノ・カネ」の動く現場で、そうした実務を行っていた経験は現在も活きている。
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