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最終更新日: 2007/10/01
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プロの仕事研究
業界最高速の24倍速光ディスクドライブ開発を成功させた、ソフトウエア設計のプロ。
ソフトウェア系−システム開発(マイコン、ファームウェア、制御系)
開発本部 開発1室/Specialist
松田 卓 (32歳) Takashi Matsuda
入社8年目 / 神戸大学大学院 自然科学研究科 電気電子工学専攻 出身

プロフィール
“ものづくり”をしたいとメーカーへの就職を志望する。DVDなど、当時登場し始めたばかりだったODDに将来性を感じ、入社。システム設計、レーザ制御のソフトウエア設計を経て、現在は総合的な立場からODDのソフトウエア開発に携わっている。

プロローグ
2002年初頭のことである。ODD(光ディスクドライブ/Optical Disk Drive)可動のためのシステム設計を担当していた松田に、レーザ制御を担当するという仕事が舞い込んだ。それまで担当してきたシステム設計から一転、ここでハードウエアのソフト開発設計を経験させ、新製品開発の全体像を学ばせようという会社側の親心であったものの、当時の松田にはレーザとその制御についての知識はほとんどない。突然の指示は、そんな松田にレーザ制御を改良してさらに精度を上げ、2002年当時8倍速が限界だった処理速度を24倍速にせよというものに他ならなかった。

「自分にやっていけるだろうか?」。実現すれば業界最高速の光ディスクドライブ開発となるだけに、緊張で身もすくむ思いだった。またそれに成功したとしても、生産ラインに乗せ、軌道に乗せるには、開発とはまた別の苦労も待っている。だが業界最高速への挑戦は技術者にとってまさに本望であるし、「設計したものが製品化されるのを見たい」というのが入社時の希望である。松田の業界最高速への挑戦は、こうして不安と緊張、そして大きな期待のもと始まったのである。

8倍速から24倍速へ。それはゼロからの創造に他ならなかった。 1
松田が担当することとなったレーザ制御とは、レーザのパワーをいかにコントロールして一定に保つかというもの。すなわちODDはディスクにレーザを照射させて溝をつくり、それによってデータを記憶させるが、1分間に6000回転以上するディスクへの照射には、極めて繊細な制御が必要とされるのだ。

“業界最高速”への挑戦は、まず先輩たちがつくった8倍速ODDのレーザ制御のプログラムを読みこみ、それに改良を加えることから始まった。とはいえ、8倍速のレーザ制御プログラムを一挙に24倍速に対応させるのは、既存のプログラムに手を加える程度でできるものではない。ゼロから新プログラムを開発するようなものとなる。

こうした作業の一方、プログラミング以外の部分でも気の張る調整が続いた。たとえば部品。業界最高速への挑戦にはレーザ本体やそれを取り巻くハードウエアにも定格ギリギリの能力と耐久性が求められる。松田がハードウエアに限界の能力と耐久力を求めれば、ハードウエアメーカーは当然ながら「要求が過ぎる」「壊れたとしても御社の責任」と反発する。こうした部品メーカーとの調整作業も、業界最高速という目標達成のためには欠かせない作業となった。

プログラミング適応化のため、松田は韓国に飛んだ。 2
必死の努力と部品メーカーとのやりとりの末、どうにかレーザ制御の新プログラム開発にたどり着いたが、それで完成というわけではなかった。生産ラインへプログラミングを適応させるという作業が待っていた。

これは、松田がつくったレーザ制御プログラムに改良を加え、量産に対応できるプログラムにするというもの。すなわちプログラミングの段階ではレーザを光らせパワーメーターで測定、それを個別に入力するということもしばしばだった。新開発という場面では、微調整のためのこうした手作業がつきもの。だが量産を目的とした生産ラインでは、こうした手作業をプログラム化、ラインに組み込むことが欠かせない。

当初、韓国にある生産拠点の担当者と英語によるメールでやりとりを行っていた松田だったが、お互い母国語でないだけに行き違いもしばしば。また問題が発生した際には、稼働日の問題もあって早急な対応が欠かせなかった。その度に韓国に飛び、調整に当たった。

効率化を求める生産サイド、開発者として譲れない松田。 3
そんな中、課題となったのは、開発者と生産者との間に横たわる宿命ともいえるものであった。

たとえば現場の生産ラインでは、データ制御の適応作業を行う松田にもスピードが求められた。だが早さと作業の精度とは、本来相反するもの。精度を高めたいという想いに反し、生産ラインからは効率化のため、精度を保つために必要な測定ラインからの削減を要求されたりもした。生産効率を求めて早さとコスト削減を求める生産ラインと、なんとしても製品のクオリティを保たねばならない開発者とのせめぎ合いが展開された。

こうした要求は、曖昧なままにすることは許されない。譲るべきは譲るものの、説得すべきは断固として説得しなければならない。英語力はもちろん、松田自身の強さや開発者としての信念をも試される場となったのである。韓国で松田は、こうした丁々発止のやりとりはもちろん、プログラムの適応化作業などにより現場で朝を迎えることもしばしばだった。気がつけば韓国滞在は1ヶ月を越えていた。

生産ライン稼働、業界最高速の24倍速ドライブが業界を席巻した。 4
こうした苦労の末、とうとう待ちに待った日がやってきた。2000年6月、生産ラインが正式稼働、業界最高速となる24倍速ドライブの量産が開始されたのである。松田は、稼働前日までプログラムの調整などに追われていた。ラインの開始直後、設計メーカーや生産ライン担当者から思わず歓声が上がった。思えば1年にわたるハードな日々、慣れない海外での生活を続けて目にする晴れの瞬間であった。

松田がレーザ制御を担当したODDドライブ、すなわち薄型複合ドライブ「GCC-4240N」は海外メーカーのノートPCに搭載され、そのスピードと正確さで大きな話題を呼んだ。その後、日本のPCメーカーにも次々に採用され、最終的に数百万台の出荷台数を数え、業界を席巻することとなった。「ものづくりをしたい」「設計したものがかたちになり、完結するところを見たい」という入社時の願いを、松田は見事に貫徹したのである。

エピローグ
あれから年月が経過し、松田はその役割をレーザ制御からさらに広げ、現在、光ディスクの記録部の設計を担当している。守備範囲が広がった分、学ばなければならないことは日々生まれている。だが松田は、こうした新しいことへの挑戦、知識を拡げることが何よりも楽しいという。「あれ以来、どんなことでもやり遂げられるという自信が持てるようになりました。いいものをつくるには現場を知ることも大切。生産する側の立場から開発を見られるようになりました」と言う。

“業界最高速”への挑戦は、松田を一皮剥けた技術者へとブラッシュアップさせる経験ともなったのである。
これからも業界をリードする製品を世に送り出すために、松田は挑戦を続ける。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
セミナーや学会などで研究成果を発表する機会があった。その際、一方的にしゃべるだけではダメで、説明にもうまい仕方があるということを学んだ。こうしたコミュニケーションの取り方は、現場と接し、理解してもらうことが不可欠な現在の仕事に、大いに役立っている。
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