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最終更新日: 2007/10/29
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プロの仕事研究
海を越えて太陽光発電を普及させるため、世界進出の足がかりを作った営業のプロ。
営業・販売系−営業(法人・新規開拓が中心)
ソーラーシステム事業本部 海外営業部
新谷 仁 (30歳) Hitoshi Shintani
入社5年目 / 国際経営学専攻 出身

プロフィール
海外留学を経験したことから、日本が世界に誇れるものに関わる仕事を希望。日本の高い技術力を、世界に向けて発信していくため、シャープに入社する。中でも、環境問題に大きな影響力を持つ、太陽光発電システムに興味を持ち、ソーラーシステム事業本部への配属を希望。希望をかなえ、現在アメリカ担当として活躍する。

プロローグ
2006年5月某日、アメリカ現地時間午前3時。新谷は日本に国際電話をかけた。
「もしもし、忙しいところすみません。新谷です。実は、早急に送っていただきたいデータがあるのですが…」。
「おい、お前アメリカだろ? そっちは真夜中じゃないか」。
新谷は、時計を見ながら日本との時差を計算すると同時に、あと数時間で展示会会場は開場し世界中からの来場者で埋め尽くされることを思い浮かべた。何としてでもそれまでに、出展ブースの準備を完璧にしなければならない。

世界中のソーラー発電技術が集まる大規模な国際展示会の会場。7年連続太陽光発電システム生産量世界シェアナンバー1を誇る日本のシャープもその会場にいた。出展ブースの設置に始まり、展示会当日の来場者対応までを一手に担うのが、新谷の仕事である。開催2日前から現地に到着し、着々と準備を進めてきたはずだった。

ところが…
「これじゃ、何を伝えたいのかまったくわからない! やり直せ」。直前になって同行していた現場責任者である上司から、ブースの建て直しを命じられた。その後も関連して次々と不具合が発覚する。刻々と開場時間が迫る中、新谷は準備を間に合わせることができたのか…。

展示会1ヵ月前から始まった準備期間。 1
さかのぼること1ヵ月前の2006年4月。シャープ社内に、次世代太陽光発電システムに関連する資料を読み漁る新谷の姿があった。「まいったな。どの出展商品も新しいものばかり。ぜんぜんわかんないぞ…」。アメリカで開催される展示会には、世界中のソーラー技術関連の企業が集まる。そこで、世界シェアナンバー1の実績を持つシャープは、次世代の機能を備えた新商品を大々的に出展する計画であった。今後の商品販売に大きな影響を与える場。失敗は許されなかった。

商品知識を整理する新谷は、現地で出てくると予想される質問を一つひとつ考え、答えをテキストに書き起こしていった。中には、技術的に開示できない部分もある。リリースしてもよい情報であるのかどうかを見極め、詳細なQ&A集を完成させた。「よし、これでどんな質問が出てきても大丈夫だ。あとは、展示ブースの図面を確認しておけばOKだな」。展示するのは、太陽光発電の要となるモジュールやパワーコンディショナといった機器。高出力型のモデルから、省スペース型のものまで多種多様な商品が取り揃えられている。どんなレイアウトで、新しい機能のどのような点を訴求していくべきかを考え、ブース構成を完成させていった。

世界中のメーカーが集まるビッグイベントの予感。 2
2006年5月。いよいよ新谷はアメリカの会場に足を踏み入れた。ホテル全館を貸しきって行われるため、広大な敷地面積を誇る会場。1周するだけでもゆうに1時間は要する。「なんてでかい会場なんだ」。出展する企業は全部で約100社。シャープは会場中央に大きなスペースを使ってブースを設営する予定であった。

早速、図面に従ってブースの設営業者に指示を出す新谷。同時に、現地のスタッフに日本で事前に用意しておいた新商品関連の資料を手渡し、Q&A集を用いて講習会を開催した。「新製品の最大の特徴は、高効率なモジュールにあります。たとえば、雨の多い季節でも…」。設営業者との間で小さなトラブルはあったものの、準備は全て時間通りに着々と進んでいった。

そして、展示会前日の夜。「よし、これで完璧だ。最後に上司の確認を得て終了だな」。意気揚々と現場責任者である上司に会場の確認を依頼した。

「何だこれは! 一体何を訴求ポイントにしたらこうなったんだ?」。ブースをひと目見た上司は、新谷を呼びつけてこう言い放った。「どこがダメなんですか? 事前の図面の通りじゃないですか?」 「図面通りならそれでいいと思うのか? 何がダメか自分で考えてみろ!」。

見る人の気持ちが欠けていた。 3
完成したブースを前に、新谷は途方にくれていた。頭の中にあったのは上司が言い放った“訴求ポイント”という言葉。相手に何を訴えかけているのか…。来場者の視点でブースを見直してみると、上司が言った言葉の意味がわかりかけてきた。「そうか、足りないのはお客さんの立場で商品を見る、ブースを見る、そしてシャープを見るということか」。

新谷は展示ブースのコンセプトを改めて考えてみた。世界シェアナンバー1の実績を持つシャープとして、この展示でどんなことを訴求するべきか。そうするとブースのいたるところに改善すべき点が見えてきた。すぐに現地で展示内容の変更に必要な機材を購入するため、夜の道を車で飛ばした。「Do you have lights?」。何件もの店を回って、ライトアップに必要な照明器具を探し求めた。

新製品が目立つように、照明器具の数を増やし全体のレイアウトも変更した。「そうか、プレゼン用の映像も内容を変えなければ…」。新谷はすぐに日本に連絡を入れ、映像の素材データを取り寄せた。残された時間は数時間。「さぁ、夜明けまでに間に合うのか…」。その夜、新谷が滞在先のホテルの部屋に戻ることはなかった。

果たして、展示会は成功したのか…。 4
「おお、よくなったじゃないか」。当日の朝、展示ブースを見た上司は笑顔でそう言った。一晩をかけて手を施したブースは、世界のシャープにふさわしい次世代の太陽光発電システムの技術力を訴えるものに変わっていた。

「さあ、ここからが本当の勝負だ」。いよいよ開場し、続々と来場者が押し寄せる。現地スタッフたちは、前日のレクチャーの通りにQ&A集を使って製品説明を上手くしている。新谷も顧客対応に追われていた。

「おい、新谷。一緒にこい」。上司が新谷を商談席に呼び寄せた。商談の相手は、海外の大手工業機器メーカーの技術担当者。最新技術を用いたシャープの太陽光発電システムに、興味を示しているようだ。上司が商談を進める様子を、すぐ横で新谷は見ていた。「Thank you for coming today!」。握手をして顧客を見送ったあと、上司が新谷のほうを振り返った。「よく頑張ったな。今回の展示会は、成功だ。しっかりそうレポートにまとめておけ」。新谷の肩を叩いて、上司はその場を後にした。ぎりぎりの時間の中、無我夢中で過ごした2日間。その苦労が報われた瞬間であった。

エピローグ
アメリカでの展示会を、どうにか成功に導くことができた新谷。展示会での出来事を詳細にレポートにまとめて、ようやく全ての業務が終了した。

「振り返ればほんとに大変でしたが、懸命になったことで積極性が身についたような気がします」。シャープの太陽光発電の売上の多くは海外によるもの。今後ますます海外での販売体制の強化が重視される。「もっと現地の販売代理店とのつながりを増やし、僕自身もお客さまと接しながら、シェアを拡大していきたい。アメリカ事務所に駐在することが、近い将来の目標です」。そう語る新谷の視線は、遥か遠く海を越えたアメリカ大陸に向けられている。国境を越えた新谷の挑戦は、まだ始まったばかりだ。
見上げる太陽光発電システムモジュールのさらに先には、海外営業として世界中を飛び回る未来の自分が見えている。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
海外留学を計画していた学生時代、実際にイギリスを訪れ、わずか1週間のうちに20校もの大学を見て回り、自分の希望に適した留学先を見つけた。キャンパスを歩く学生に声をかけ、学生生活のことや専攻に関する質問をした。海外を相手にした現在の仕事でも、そのコミュニケーション能力と行動力は、十分に発揮されている。
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