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メーカー(化学・ゴム) / 商社(専門商社(化学・石油))
最終更新日: 2007/10/01
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プロの仕事研究
実験の設備を整えることから始め、無事に商品の改良を果たした商品開発のプロ。
技術系−基礎研究
技術部 商品開発センター 第一開発グループ
片田 亮 (30歳) Ryo Katada
入社7年目 / 東京農工大学大学院 生物システム応用科学研究科 出身

プロフィール
大学、大学院で学んだ高分子化学を活かせる分野を選んでいく中で、出光ユニテックに出会う。会社説明会で見た商品には身近なものが多く、興味を持つ。高分子の知識を活かしつつ、“モノ作り”ができることから入社を決める。入社後、新人研修を経て商品開発センターに配属。新規チャックテープ(商品名『プラロック』)の開発を担当する。

プロローグ
ふりかけなどの袋に使われ、開閉が簡単にできるチャックテープ。出光ユニテックでは機能性チャックテープの開発を行なっている。これまで同社が製造していたチャックテープは単一樹脂で構成されていた。しかし、お客様である袋メーカーから、熱でフィルム(袋本体)とチャックテープを溶かして貼り付ける際に、低温の方がきれいに仕上がるため、低温にも対応可能なチャックテープへの改良が求められた。そこで、すでに海外では一般的に流通しているチャックテープの多層化に取り組むことになった。フィルムに張り合わせる部分にもう一層違うタイプの樹脂を入れることで、低温でも溶けてフィルムに貼り付けやすいようにしたのだ。このチャックテープの多層化を担当したのが、新入社員研修を終えたばかりの片田だった。

商品開発センターに配属後、工場実習を終えた片田は、市場調査から始めた。スーパーでチャックテープが使われている商品を購入し、分野ごとに自社製品のシェアを調査した。「けっこう自社製品が使われているもんだな」。そんなことを思っていたが、悠長なことを言っていられたのはこのときだけだった。

実験ができる環境作りからスタート。 1
片田が入社した2002年、それまで工場にあった開発部隊を集めようということで、商品開発センターができた。しかし、生まれたての商品開発センターには実験に必要な成形機もなく、工場から使用しなくなった機械を持ってくるなどして、実験ができる環境を整えていくことから始めなければならなかった。入社したての片田の仕事はまずそこから始まった。

片田に与えられたテーマは、単一樹脂で作られていたチャックテープを複合化すること。これまでも複合化の研究は進められていたが、商品化には至っていない。生産性などもあわせて、片田が商品化へ仕上げなければならないのだ。まずは多層化にあたって設計から取りかかった。社内にある設備の図面を真似て、新しいチャックテープ用の図面を作成。上司や先輩に見てもらい、手直しをして金属加工メーカーに持ち込み、製造してもらう。不具合が出れば修正し、またメーカーに持ち込む。何度も足を運んで、ようやくベースとなる設備を仕上げることができた。

ノウハウがない中でも、持ち前の粘り強さで挑戦を続ける。 2
さらには金型の調整も必要だった。チャックテープを作るには、ペレットとよばれる米粒のような原料を溶かし、型から押し出す。そこで必要なのが金型だ。設備のときと同じように見よう見真似で図面を画き、金属加工メーカーに金型を製造してもらった。こうして一つひとつ設備を整えていき、1年近くかけてようやく実験ができるような設備が整った。

次は原料の探索だ。様々な原料を組み合わせて評価を行なっていく。初めてのことでノウハウがなかったが、持ち前の粘り強さで取り組んだ。最初から決め付けるのではなく、考えられる方法はすべてやってみた。そうして多層化に合う材料を何種類か見つけることができた。

設備が整い、原料も何種類か目処がついたところで、今後のスケジュールが決められた。それは2004年2月に、商品化された多層チャックテープをお客様のもとに届けるというものだった。そのときすでに2003年の4月。納品まで1年もない。しかし片田には、商品化するためにどれぐらいの時間がかかるかが分からない。「ちゃんと完成させることができるのだろうか…」。不安ばかりが膨らんだ。

商品化まであと一歩というところで余儀なくされた設計変更。 3
しかし、いくら不安に思っても商品化にはつながらない。一つひとつ研究を進めていくしかない。何種類かの原料で成形するところまでいっている。あとはテープの形に整え、工場で問題なく生産していけるよう、工場の機械の改良などを行なう。片田は一つひとつ進めていった。試作で思った結果が出ず、夜遅くまで試作を繰り返したこともあった。「なんとかして仕上げなければ…」。納期が迫る中、焦る気持ちを抑えて研究に没頭した。

そして2003年12月。商品化まであと一歩。「もうゴールは見えたも同然だ」。片田はそう思っていた。しかし、工場で実際の機械を使って製造のテストをしているときに問題が発覚した。機械を改良したがうまくいかない。製品設計を変えざるを得ない事態だった。見通しがたったと思った矢先のことで、絶望感が片田を襲った。

しかし落ち込んでいる時間はない。製品設計を変え、設備の変更も行なわなければならない。もし、この変更で失敗したら、やり直す時間はない。チャンスは1回しかないのだ。少しでも時間を稼ぐため、修正を依頼した金属加工メーカーにも金型の納期を早めてもらうよう頼み込んだ。そうやって、なんとか間に合わせることができた。

手がけた製品が商品となってスーパーに並んだ。 4
実験ができるように成形機を調達したりと、設備を整えることから始まったチャックテープの多層化。夜遅くまで試作品と格闘し、納期直前には製品設計の変更を余儀なくされるなどハプニングもあったが、なんとか納期どおりにお客様のもとに商品見本を届けることができた。「採用してもらえるだろうか」。まだまだ不安をぬぐえない片田であったが、あとは結果を待つしかない。

しばらくして、営業から「お客様のところで問題なく使うことができた」という報告を受けた。さらに、後日正式採用が決定した旨の知らせを聞いた。「苦労をしたけれど頑張った甲斐があった」。片田の胸には達成感が満ち溢れた。

その後、スーパーで自らが開発したチャックテープを使用した商品を見つけた。すぐさま購入した。長い月日をかけて開発したチャックテープが商品となって世に出たのだ。何やら自分の子どものようでうれしくもあり、また愛おしくもあった。その後も片田は機能性チャックテープの開発に携わっている。そして入社当時に工場から譲ってもらった成形機や、自分で作った設備も健在である。

エピローグ
「時間をかければいつか商品化できるだろうとは思っていたけれど、納期に間に合わせることができるかはとても心配でした」。片田は当時をこう振り返る。研究する環境作りから商品化まで、何から何まで初めてのことばかりだったが、常に「何かしらやり方はある」という気持ちで取り組み、結果を残すことができた。「その諦めない気持ちが今の研究にも活きています」と語る。

10月末にアメリカで開かれた食品パッケージの展示会を視察した片田。「今後は海外でも認めてもらえるチャックテープを作っていきたい」。そう決意を新たにしている。
「上からは開けられるけれど、下からは開けにくいんです」。自ら開発したチャックテープはわが子のように愛おしい。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
研究室は高分子の研究が中心だったが、片田は1人、化学反応の制御によって光ったり消えたりする反応系に取り組んだ。担当の教授が反応系にはそれほど詳しくなかったため他の先生に聞いたり文献を調べたり、一から研究を進めた。その経験から、物を考える力がつき、今の仕事にも活かされている。
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