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サービス(レストラン・フードビジネス)
最終更新日: 2008/01/28
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プロの仕事研究
スタッフの成長意欲を掻き立て、新業態『粉もん屋』の基盤を固めた店舗運営のプロ。
営業・販売系−店長
粉もん屋 城東店/店長
松尾 守晃 (30歳) Moriaki Matsuo
入社4年目 / 姫路獨協大学 法学部 法律学科 出身

プロフィール
小さな頃から負けず嫌いだった松尾。大学卒業後、事業の基盤が確立され、業績も安定していた大手メーカーで働く自分に「このままでは成長できない」と危機感を抱き、転職活動を開始した。自分が影響力を発揮できる仕事をとトリドールに入社。現在は、城東店の店長として、スタッフの教育や売上管理など大忙しの日々を送る。

プロローグ
「もう一回、頑張ろうって気持ち。松尾店長に教えてもらった」。

『粉もん屋』姫路店から、城東店への異動が決まった松尾に届けられた1通の手紙。何度もぶつかった、一人の若いスタッフからだった。長く綴られた手紙を最後まで読み終えたところで、不覚にも涙をこぼしそうになった松尾は、周りに誰かいないか慌てて確認した――。

焼きそば・お好み焼き『粉もん屋』姫路店の店長を任されることになったのは、ちょうど入社してから3ヶ月が経とうとしていた頃だった。『粉もん屋』は、1号店である姫路店がオープンしたばかりの新しい業態。接客ノウハウも組織形態も『とりどーる』 『丸亀製麺』に比べまだ確立されておらず、全業態に占める売上シェアも低かった。松尾のミッションは、今はまだ不安定な『粉もん屋』の基盤をガッチリと固め、軌道に乗せていくこと。不安と緊張を感じながらも、松尾は、これから自分を待っている新しい世界に期待を膨らませていた。「自分の頑張り次第で、良くも悪くも転ぶ。やりがい十分だ」。3ヶ月間にわたる『とりどーる』での研修を終え、『粉もん屋』姫路店に足を踏み入れた松尾は、未だかつてない“挫折”を味わうことになる。

「今まで、この方法でうまくいっていましたから」。変化を嫌うスタッフたち。 1
『粉もん屋』姫路店を訪ねる前、松尾はワクワクしていた。3ヶ月間研修を積んだ『とりどーる』飾西店で、スタッフの仕事に対する意識の高さに感動を覚えていたからだ。1日の業務が終了した後、スタッフは店長のもとへ一斉に集まる。彼らは、各々の行動を評価した『キャリアアップシート』をもとに、より良い店作りのための改善案を誰からともなく提案し始めるのだ。「彼らは、ここにお金を稼ぎに来ているんじゃない。自分を向上させにきているんだ」。松尾が、大きく驚いた瞬間だった。

ところが、いざ『粉もん屋』に足を踏み入れた松尾は、そのギャップに驚いた。「ソースの補充方法、変えないか? こっちの方が早いと思うんだけど」。ある日、スタッフにそう提案した松尾は、返ってきた答えに自分の耳を疑った。「今までこの方法でしてきましたから」。しばらく、開いた口が塞がらなかった。「これは…、まずはスタッフの気持ちから変えていかないと」。松尾は、新しい業態を軌道に乗せていく難しさを、じわじわと感じ始めていた。

肥大するスタッフとの確執。「もう、知らん。俺が全部一人でやる!!」。 2
“お客様”主体ではなく、“自分”中心。お客様に対するスタッフの姿勢を決定付けたのが、ある真夏のできごとだった。お昼のメニューのラストオーダー14時を過ぎた頃、一人のお客様が来店された。松尾は、当然のように「お昼の営業時間を延長する」という判断をした。それに対してスタッフが、「私たちの休憩はどうなるの?」と反発し始めたのだ。「いやいや、よく考えてくれよ。お客様がまだいらっしゃるんだぞ」 「だからって、私たちには関係ないじゃない」 「何を言うてるんや…!」。松尾は半ば信じられないという気持ちで、「もう知らん。勝手にしろ!」と一人仕事に戻った。

その後も、松尾とスタッフの確執は、日に日に広がっていった。「店の決まりに従っただけよ」 「違うやろ、臨機応変にお客様に合わせた対応をしていく。それがサービスや」。松尾は、もがき苦しんでいた。「今の自分の言葉は、ちっともスタッフに響いていない。でも、俺は間違ったことは言っていないはずや」。一向に店の雰囲気が良くならない状況に、松尾は頭を抱えた。店舗に行くのが嫌でたまらなかった。しかし、それでも松尾は、「お客様のため」になることを考える、それがサービスであるということを、訴え続けた。

ぶつかり合う、“本音”と“本音”。すれ違っていた気持ちが、繋がる時。 3
「少し、話をさせてくれないか」。

松尾は、意を決して緊急ミーティングを開くことにした。改善策が全く意味を成さない程、状況が悪化しつつあったからだ。松尾は、自分の考えを理解してもらえるかどうか不安でたまらなかった。そして迎えた当日。ミーティングでは、スタッフからの不満と要望が爆発した。「何を考えているか、全然分からない」 「勝手に怒り出して、自己完結してしまう。それをする理由を言ってくれない」。松尾は、耳の痛い意見を受け止め、黙って大きく頷いた。確かに、自分は理不尽な言葉をぶつけていたのかもしれない。松尾は、返す言葉がなかった。

「ちょっと待て、お前ら。こいつの気持ち、考えたことあるんか?」。

口を挟んだのは、心配して一緒にミーティングに入ってくれたSVの中島だった。「6月から、何も知らない状態で店長任されて。スタッフの中には、自分より長く勤めてるベテランもいる。そんな状況で指導していかなあかんのやぞ、自分やったらどうする? 自信のないことだってあるし、言い辛いこともたくさんあるんやで」。自分の考えを、全て代弁された気がした。弱いところを見せたくないという思いから、ずっとひた隠しにしていた気持ち。中島は全て見透かしていたのだ。黙り込むスタッフ。そのうちの一人が、重い口を開いた。そして、照れくさそうに言った。

「もっと、何でも言ってよ。助けるで」。

お互いの本音が、届いた気がした。すれ違っていた気持ちが、一つになった瞬間だった。

人の心を変えるのは、人。「皆、見違えるように変わった――」。 4
今日も松尾のもとに駆け寄ってくるスタッフが手にしているのは、ずっと使用されていなかった『キャリアアップシート』だ。スタッフの劇的な成長に、松尾は毎日の仕事が楽しくてたまらなかった。そうして数ヶ月後、松尾は城東店への異動を言い渡された。姫路店、最後の出勤日。スタッフ一人ひとりの顔を見ながら、松尾は丁寧に語りかけた。

「皆、俺が来る前に比べて、見違えるように変わったと思う。これからも、今の姿勢や取り組みは継続していって欲しい。店を良くするためには、皆の力が、必要不可欠なんやから」。

誰も、何も言わなかった。店を出る時、皆の中でもリーダー格だったスタッフが、そっと手紙をくれた。

「初めて店長が店に来た時は、正直、何やコイツと思ってた。でも、ずっと本音で話をしていくうちに、皆も、変わっていったと思う。馴れ合いで仕事してたんが、松尾店長のお陰で変わった。もう一回、頑張ろうって気持ち、松尾店長に教えてもらった。ありがとう」。

強がりな松尾がその日、入社以来初めて涙を流した。

エピローグ
城東店で新たなスタートを切った松尾に嬉しい報告が入った。姫路店のスタッフが、自分たちでイベントを企画したというのだ。「お客様のため」を思ったお楽しみ企画だった。松尾は、その報告を飛び上がるくらい嬉しい気持ちで聞いた。

「当時は、思い出したくないぐらい、ひどい状況でした。でも、そこで学んだことはたくさんあります。自分の考えをどれだけ納得してもらって、実行してもらうか。これが大事なことだと思います。心の底から、“お客様のために”働けるスタッフは、強いです。僕ら店長は、その環境を作っていかないといけない」。

新業態『粉もん屋』。生まれたばかりのこの業態が『とりどーる』 『丸亀製麺』と並ぶ日は、近い――。
「トリドールには、感謝したい人、目標にしたい人、大切にしたい人がたくさんいます」。毎日、人の大切さを実感するという松尾。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
学生時代、居酒屋でアルバイトをしていた松尾は、そこでお客様から感謝される喜びを知った。その経験が、店舗で働くスタッフに対して、「何のために働くのか」を指導していく際に役立っている。また、小さい頃から負けず嫌いだった性格が、組織の軸となり、新しいことに貪欲に取り組んでいく力を生み出した。
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