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金融(損害保険・生命保険・共済)
最終更新日: 2007/10/01
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プロの仕事研究
相談者が見えていない部分を察知してリスクを回避する、国際法務のプロ。
事務系−国際業務・貿易業務
運用企画部 海外事業室/課長補佐
石井 弓子 (35歳) Yumiko Ishii
入社12年目 / 東京大学 法学部 出身

プロフィール
1997年4月に入社し、立川支社企画担当に配属される。1999年4月、特別勘定運用部 特別勘定企画課、2004年4月、総合審査部 国際審査グループ、2005年4月、法務部 運用法務チームを経て、2006年4月より運用企画部 海外事業グループ。

プロローグ
文系出身の自分が専門性を持って働ける道は何だろうかと、学生時代の石井は悩んでいた。金融マーケットに携わる資産運用業務なら専門性も高いし将来的にも幅広い可能性があるのではないかと思い至り、金融業を志望することにした。第一生命を選んだのは、就職活動を通して出会った社員と一緒に仕事をしている自分が素直にイメージできたからだ。

入社後は立川支社に配属。支社や支部、営業職員の業績管理やキャンペーンの運営などが石井に与えられた仕事だった。日々の業務に忙殺されながら、ふと「自分は何をやっているんだろう…」と思うことも。石井の悩みを察したのか、上司が声をかけてきた。「運用の仕事を希望しているんだよね。将来のビジョンを持つのは良いことだけど、それに縛られすぎて目の前の仕事をおろそかにしてはいけないよ。どんな仕事でもきちんと対応する人間しか、会社は認めないから」。

上司のアドバイスで悩みが解消した石井は、仕事に全力投球した。すると徐々に、個々の仕事の背後にある本社の動きや支社長の思いが見え、仕事の面白さを感じるようになってきた。納期通りに仕事を回す大切さも思い知るようになる。

5年かけて金融市場の基礎を学ぶ。 1
3年目、特別勘定運用部への異動辞令が下された。年金基金等のお客さまから預かった資産を株や債券売買等で運用していく、石井が希望していた部署だが、最初のうちは戸惑いの連続だった。資料作成やデータ分析等、いわゆる“ミドルオフィス”と呼ばれる業務が石井の仕事だが、専門用語が連発される周囲の会話を理解できないのである。自力で調べたり上司に聞いたりするなどして必死に勉強した。

運用に関する基礎知識を理解すると仕事は軌道に乗っていく。そして同部署で5年が過ぎた頃、石井は「キャリアを高めるにはどうすべきだろう」と考えるようになっていた。ミドルオフィスでの経験から、市場での個別取引の意志決定を行う、いわゆる“フロントオフィス”にも憧れを抱くようになっていた。また、学生時代に学んだ法律の知識を実務に活かせないかとの思いもあった。そんな時に上司から声をかけられた。「キャリアチャレンジの通達が出たよ。興味のある職種があればキャリアアップのために応募してみたら?」。

キャリアチャレンジ制度を利用し、希望通りの仕事へ。 2
キャリアチャレンジとは、公募制の職務選択制度のこと。例年、秋頃に募集を実施する部署が発表される。その中に総合審査部国際審査グループがあった。国際投資案件の与信判断を行うフロントオフィス寄りの業務で、国際法務業務を兼任することから学生時代に学んだ法律も活かせる。思い描いていた仕事像そのものの部署に思え、石井は応募を決意する。

希望は叶い、翌年4月に異動が決まった。新しい仕事に戸惑うこともあったが、ミドルオフィスで学んだベースが助けになった。海外企業向けの貸付や外債の投資案件に対し、企業の信用力を分析しGOサインを出していいかどうかを審査したり、海外投資案件の契約書のチェックをしたりするのが主な仕事であった。英文の財務諸表を分析したり、英文契約書の文言や内容に問題点はないか、案件の概要や法令に照らし合わせてチェックしたりするという業務は、細心の注意を払って対処する必要がある。判断を誤ったり、第一生命に不利な状況で案件を進めてしまったりすれば、結果的に巨額の不利益をもたらしてしまう可能性がある。企業利益を大きく左右する業務内容に重圧を感じ、ストレスを意識することもあった。しかし希望する職種に就けたことのうれしさと、仕事に対するやりがいを感じる気持ちのほうが勝っていた。

1年後、石井のグループが携わっていた国際法務業務が法務部に移管され、石井も異動することになる。

保険会社として世界初となるプロジェクト。 3
ある日、中国A株等の人民元建て有価証券への直接投資が可能になるよう、当局に認可を取るという案件が法務部に上がってきた。中国本土で上場されている株はA株とB株があり、A株市場により多くの企業が集まっているのだが、外国人投資家はB株市場しか取引できないことになっていた。当局から資格を認められた外国機関投資家のみ、A株市場に参入できる。認可が取得できれば保険会社として世界初となる大プロジェクトだ。

この案件を持ってきた担当部署からの依頼は、認可取得のため当局への提出が必要な、現地の銀行や証券会社との契約書のチェックだった。案件を担当することになった石井は、外部弁護士の協力を仰ぐことにした。このような場合、担当所管と外部弁護士の橋渡し役となり、契約書の背景にあるビジネススキーム(包括的な事業の計画・枠組み)や案件に対する第一生命の価値観について、外部弁護士に理解してもらうのも石井の仕事の一つである。ビジネスの流れについて担当部署からレクチャーを受ける場を設けることにした。

担当部署の説明を受けながら、その中に、石井は気になる部分を発見する。

石井の機転により、回避されたリスク。 4
先輩社員に疑問点をぶつけたところ、「確かに問題がありそうだ」という答えが返ってきた。契約書だけしか見ていなかったら、発見しようがない部分だった。早速、担当部署と共に外部弁護士との協議を重ね、スキームを変更することで法的リスクを回避し、案件を進めることが決まった。「早めに気が付いて良かった」と石井は胸をなで下ろした。

2006年3月、無事に投資枠を取得することができた。成長性著しい中国株へ投資することが可能になったということは、第一生命にとって運用収益の拡大が期待できるようになったことと同意義である。

法務の仕事は想像力が必要だ。相談者は、自分が認識しているリスクについて「どう対処すればいいかアドバイスしてほしい」と言ってくる。相談者から見えていない部分を察して、リスクを消していくのが法務のプロであると石井は認識している。国際法務となれば、そこには相手国の法律やルールも絡み、より複雑化してくる。石井はこの案件を通して、国際法務のプロとしてまた一つ成長を遂げた。

エピローグ
中国A株の案件で疑問が生じるたび、石井は隣席のK先輩に意見を求めていた。3歳上のK先輩は知識が豊富な上、英文を読むスピードも速く、すぐに的確なアドバイスをくれる。国際法務のプロとしてあるべき姿だと、石井は尊敬していた。

中国A株の案件が終わった頃、アメリカのロースクール(法科大学院)留学制度の社内選考試験が行われることを知り、石井は手を挙げた。K先輩もロースクール留学経験者だったからだ。社内選考に合格した石井は、2007年7月から渡米している。「私もK先輩のようにありたい。実務に必要となる知識、正確さ、スピード、想像力を現在学んでいます。日本に戻った時には成長した自分を見せたいですね」と語った。
「法務的見解からして会社のためにならないと判断した場合、役職が上の人に対してもNOと言い切る知識と信念が必要です」。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
学生時代に学んだ法学の勉強そのものが、日々の業務に活かされている。むしろ、「もっと掘り下げて勉強しておけば良かった」と感じることもある。当時所属していた民事訴訟法ゼミの先生やメンバーとは現在も交流があり、今も刺激を受けている。
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