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流通・小売(専門店(ファッション)) / メーカー(ファッション・アパレル・繊維) / 商社(専門商社(アパレル・ファッション))
最終更新日: 2007/10/01
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プロの仕事研究
『ブライトリング』を人気ブランドへと押し上げることに貢献した、時計販売のプロ。
営業・販売系−スーパーバイザー
タイムラウンジISHIDA青山表参道/店長
市田 智之 (38歳) Tomoyuki Ichida
入社15年目 / 専門学校 出身

プロフィール
写真の専門学校を卒業後、フリーフォトグラファーを経てベスト販売に入社。新宿本店、イースト店にてカジュアルウォッチを担当。1996年よりスイスの高級ブランド時計『ブライトリング』の担当の1人となり、長い年月をかけて人気ブランドに育て上げる。現在は『タイムラウンジISHIDA青山表参道』店長。

プロローグ
1990年代、フリーのフォトグラファーとして活躍していた市田は、折からの出版不況のあおりを受け、将来を改めて考えることになる。そこで浮かんできたのが、当時自らが常連客として関わっていた時計販売店『ベスト販売』のこと。もともと時計をはじめとする精密機械には興味があり、顔見知りの人事担当者もそれを知っていた。市田は一念発起し、転職を決める。入社当時は24歳。まずは新宿本店に配属され、その後イースト店にてカジュアルウォッチを担当。販売員として社内でトップクラスの売上成績をあげる。フリー時代に身につけた人当たりの良さと粘り強さが、交渉事や接客などに役立っていた。

ところが入社6年目を迎え、市田に試練の時が訪れる。販売代理店として新たに取り扱うことが決定したスイスの高級ブランド時計『ブライトリング』。その担当3人のうちの1人に任命されたのだ。もともと興味があった高級時計の世界だが、『ブライトリング』の日本での知名度は、当時ゼロに近かった。どうすれば売上を伸ばせるか、規範となるものが何もない中でのスタート。時計販売の激戦区である新宿で、市田らの10年間にわたる長い戦いが始まった――。

『知名度がない』という荒波の中を漕ぎ出す。 1
ベスト販売に入社して5年。元フリーフォトグラファーという異色の経歴を持つ市田は、前職で身につけた人当たりの良さと粘り強さで、いつしか売上成績トップクラスの販売員の座に昇り詰めていた。そして彼に与えられた新たな使命。それが、同社で新たに取り扱うことを決めた『ブライトリング』の担当である。もともと高級時計の世界には興味があった。そしてチャレンジ精神旺盛な市田にとって、新たなブランドを取り扱うことに抵抗は一切なかった。しかし、『ブライトリング』の販売には現実的に大きな“壁”が立ちはだかっていた。

その壁の1つは、『日本における知名度の低さ』だ。“知る人ぞ知る”存在で、来店した顧客に興味を持ってもらうところから始めなければならなかったのだ。そしてもう1つの壁は、そんな商品ゆえに、国内のメーカー本店でさえ、『在庫が決して十分ではない』ということ。お客様を待たせることになると、せっかく興味を持ってくれても「それなら結構」と帰ってしまう人も出てくる。手探りで始まった市田の戦いは、不安だらけのスタートとなった。

3つの大きな壁にぶつかる、最悪のスタート。 2
さらに不安材料があった。それは新宿という立地である。有名デパートや老舗の専門店、格安店など、『時計販売の大激戦区』。『ブライトリング』を扱っているライバル店も、1つや2つではない。その中で、いかにライバル店を押さえて売上を伸ばすか。そればかりを考えて、眠れない日々が続いた。事実、『低い知名度』と『不十分な在庫』、さらに『競争の激しさ』という3つの壁に苦しめられ、1年目の販売実績はわずか7本という惨状だった。

確かに価格も高く、次から次へと売れていくような商品ではない。しかし、1本売れるたびにホッと胸をなでおろすような現状は、決して満足のいくものではない。市田は改善点を見つけようと、1年間の経験をひたすら振り返った。すると、1つだけ思い当たることがあった。それは、同エリアの他店で『ブライトリング』販売の視察をした時にも感じた、レアなブランドを取り扱うに当たっては宿命ともいえる事実だった。それは『ブライトリング』に関する“情報”が少なすぎるということだ。型番やバリエーションなどの情報に関して他店で色々と質問をしても、満足な答えが返ってこないことが多かった。もちろん自分たちも、十分な知識を持っているとは言いがたい。「ここを改善することで、何かが変わるのではないか…」。市田は考えた。

「わかりません」をなくすこと。それが一番の対処法。 3
「とにかく『わかりません』をなくそう」。市田は担当のスタッフに対し、その一言を言い続けた。しかし口で言うのは簡単だが、そもそも国内に情報自体少ないのが現状である。インターネットもさほど普及していないころだ。とにかくカタログを入手し、暇さえあれば熟読して覚えこんだ。修理の必要性が生じたら、自ら職人のもとに持ち込み、自分の目と耳で様々なことを学んだ。自分だけではなく他のスタッフにもその姿勢を徹底し、時には居残りで勉強し知識を拡充した。とにかく接客時に、顧客に“満足できる情報” “その場で判断するに十分な情報”を提供できるように心がけた。

すると、少しずつだが顧客の反応が変わってきた。他ブランドの常連となっていた顧客が、市田の言葉を信頼し、興味を示してくれているのがはっきりわかった。そのころには少しずつブランド自体の知名度も上がってきて、その分他店スタッフとのクオリティの違いを感じてくれる顧客も現れた。販売実績は右肩上がりに増え続け、数年後、気がつけばベスト販売において『ブライトリング』は人気ブランドの一角を占めるほどに成長していた。

10年間にわたる取り組みが、最高の結果をもたらした。 4
その伸び率はメーカーにも認められ、2002年2月にはメーカーからの希望で、銀座に『ブライトリング』専門店を開店することになった。その銀座店をマネジメントするのは、もちろん市田である。これまで通り知識の拡充、伝達の徹底を推し進め、さらに『ブライトリング』を取り扱っている3店舗(新宿本店、イースト店、銀座店)の横のつながりを密接にした。ある店舗で在庫が欠けていても、他店からすぐに融通できるような体制を作り上げたのだ。「30分お待ちいただければ、すぐに取り寄せます」。これによりお客様を待たせることは格段に少なくなり、売上も順調に伸び続けた。

こうして市田が『ブライトリング』と付き合い始めて10年。担当した当初は年間7本がやっとだった販売実績が、今では3店舗で年間1000本を超えている。市田とスタッフらの地道な努力の結晶が、10年間かけてこの最高の結果をもたらしたのであった。

エピローグ
「1つのブランドを担当して、有名ブランドにまで育て上げることができたのは、大きな充実感と自信に繋がりました」と語る市田。ベスト販売という社名自体が無名のころに入社し、会社と一緒に成長し続け、そして現在では『ブライトリング』の担当者が10人にまで増えている。

現在は2006年3月にオープンした『タイムラウンジISHIDA青山表参道』店の店長として活躍している。この店舗は社内の最重要拠点だ。そんな市田の大きな目標は「いつか、自分の販売ブランドを立ち上げる」ということだ。取扱商品から価格、内装に至るまで“市田セレクト”の販売店。「近い将来、実現可能だと思っています」と、市田は目を輝かせた。
自ら商品やショーケースの清掃もチェックするなど、隅々にまで目を配る。「お客様の目は厳しい。負けるわけにはいきません」。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
子どものころから精密機械などに興味があり、学生時代は写真部に所属。好きなものをとことん突き詰めて学ぶ“勉強好きの性質”を身につけた。フリーフォトグラファーのころも、時計という精密機械を取り扱うことになった時も、その勉強好きの性質が大いに役立った。
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