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最終更新日: 2008/04/17
(マークの説明) 正社員 理文不問
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プロの仕事研究
自販機を介してオーナーとの信頼関係を築く、ベンディングサービスのプロ。
営業・販売系−営業(個人・ルートセールスが中心)
自販機営業部 係長/城北店 副店長
西本 雄一 (35歳) Yuichi Nishimoto
入社7年目 / 東京工業専門学校 電気工事士科 出身

プロフィール
専門学校卒業後、電気設備会社に入社。6年間メンテナンス現場の監督などを手がける。その後、ビルメンテナンスを行なう会社を経て2002年8月に三和ベンダーに入社。城北店、城西店、中央店を経て2007年7月より現職。約10名の部下を束ね、働きやすい環境づくりに尽力している。

プロローグ
西本雄一は、「いい人だ」とよく言われる。

その人懐っこい笑顔と気さくな性格からそう評されるのだが、ただ「いい人」であるだけではなく、周囲から何を言われようと自分の信念を貫き通す「頑固さ」も持っている。

――「どれだけ時間かけてんだよ!」「そんな仕事の仕方してるからいつまで経っても終わらないんだよ!」

入社当初の西本は、同じルートを受け持つチームの先輩やリーダーから、毎日のように怒られていた。担当する約30台の自販機を回り、売上げのチェックや商品の補充をしてくるのに、かなり時間がかかっていたからだ。理由は単純にまだ自販機の扱いに慣れていない、要領をつかめていない、ということもあったが、何より1台1台のオーナー、つまりお客様とのやりとりに時間をかけていたからだった。
リーダーや支店の売上げを管理する担当者は、全営業社員が戻ってくるまでは帰れない。怒るのは当然だった。「申し訳ありません…」。
西本は毎日のように頭を下げながらも、基本的な仕事のやり方は変えなかった。それは徐々に機械の扱いにも慣れてきて、仕事のスピードが上がってきてからも同じだった。

コミュニケーション以上に大切なことなどない。 1
入社3年目、年末も押し迫ってきた頃。西本はいつものようにルート先を1台1台じっくり回っていた。「こんにちは!三和ベンダーの西本です!」。オーナーの約6割は高齢者の方で、資産運用とまではいかないが、“年金プラスアルファ”程度の収入を見込んで自販機を設置してくださっている方が多い。「ああ、西本さん。いつもご苦労様」。商品の補充をしたり、自販機付近の掃き掃除をしたりする間の数分だが、皆一様に西本が来ると笑顔で迎えてくれた。

「今日は珍しく天気がいいですねぇ。お散歩日和じゃないですか」「そうだねぇ。でも最近どうも腰の調子が悪くてねぇ」。本来であれば、そんなやり取りをしている時間も惜しんで次の設置箇所に急ぐべきなのかもしれない。それほど日々のスケジュールはタイトで、厳しい。しかも、営業社員の給与にはルート先の売上金額に応じてインセンティブも加算される。オーナー1人1人とのやり取りよりも、“どうすればより売れるか”を追求すべきなのかもしれない。しかし西本にとっては、オーナーとのコミュニケーション以上に大切なことなどなかった。

かつて自分を励ましてくれたお婆さんのために。 2
そして年が明け、年始の仕事が始まった。「明けましておめでとうございます!三和ベンダーの西本です!」。いつものように挨拶のため、とあるオーナー宅を訪れると、沈んだ表情のお婆さんが出てきた。「西本さん、ごめんなさいね…。せっかくだけど“おめでとう”って言えないのよ。実は先日、主人が亡くなって…」。西本は一瞬言葉を失った。「…あぁ、そうだったんですか…。それはご愁傷様です…」。それ以上何も言えずにいる西本を察してか、お婆さんは無理に元気を振り絞るように「もう主人もいないから、家にお客さんが来ることもなくなるわ」と言って、力なく笑った。

その日は1日中、お婆さんのことが頭から離れなかった。思い返せば、そのお婆さんとは自分が入社した頃からのお付き合いで、まだ仕事に慣れておらず、訪れるのが夜遅くになっても、いつも「遅くまで頑張ってるわね」「そんなにしょっちゅう来てくれなくてもいいのよ」と優しい言葉をかけてくださった方の1人。励まされたことも一度や二度ではない。そんなお婆さんのために何かできることはないだろうかと、そればかり考えていた。

西本が記録した、唯一の“ゼロ”。 3
翌日から、西本のルートの1件目は、そのお婆さん宅になった。元気を取り戻すまでは毎日顔を出そう、と決めたのだ。そこに設置されている自販機の売上はそれなりに良かったが、毎日補充に行くほどではない。それでも西本は必ず毎日訪れ、何かしらの作業の合間に一言、二言声をかけていった。

そんな日々が2ヵ月ほど続くと、お婆さんの表情にも明るさが戻ってきた。「今日も納品に来ましたよ!」「あら、ご苦労様。今から焼きおにぎり作るから食べていきなさいよ」。それからは毎日のように“焼きおにぎり”を出してくれるようになった。その心遣いもうれしかったが、それ以上にお婆さんが元気を取り戻し始めたことに安堵した。さらに数ヵ月が過ぎると、お婆さんは頻繁に外出もするようになり、西本も毎日訪れることはなくなった。それと前後する形で、西本の仕事へのスタンスが評価される機会が訪れる。

「半年間引き上げクレームゼロ」という記録がそれだった。三和ベンダーでは、1人で数十台の管理台数を抱えているため、“売上が芳しくない”といった理由や、“メンテナンスが不十分”という理由から、どんな優秀な営業社員でも半年に2〜3台は撤去の依頼があった。そんな中、西本は全社員で唯一の“ゼロ”を記録していたのだ。狙ってのことではなかったが、自らも計り知らないところで着実に「西本さんが来てくれるから置いておく」というオーナーが増えていたのだ。

“大切な箱”が、また1台増えた。 4
その後も余波は続いた。各オーナーから、自販機設置の“紹介”が来るようになったのだ。「近所に“ウチにも置きたい”って人がいるよ」「知人が飲食店をオープンするから、店の前に置けるように頼んであげるよ」。気付けば、営業成績もぐんぐん上がり、社内のトップランキングの常連になっていた。

そんなある日、久しぶりにお婆さんと顔を合わせた。少しの間、世間話をし、いざ出発しようとした時、お婆さんがおもむろに口を開く。「もう1台、置こうと思うんだけど…」。営業としては「是非!」と即答すべきなのだろうが、電気代などのランニングコストはオーナー負担となるため、無責任に押し付けたくはなかった。「本当にいいんですか?」「ええ、西本さんさえ迷惑じゃなかったらお願いするわ。だからこれからもよろしくね!」――。

利用者にとって自販機は、飲料を購入するための機械以外の何物でもない。しかし西本にとってのそれは、オーナー1人ひとりとの思い出が詰まった“大切な箱”であったりもする。だからこそ真剣に、そして親身になって取り組めるのだ。たとえそれが目先の評価や利益につながらなくても。

エピローグ
現在は「城北店」の副店長として、実質的な拠点統括を任されている西本。以前に比べ現場に出られる時間は減ったが、その分、部下たちに自分の考えを継承している。「この仕事に情報や戦略、マーケティングが欠かせないということは十分わかっている。それでも私が何より大事にしたいのは、お客様とのコミュニケーション。ただ“売れる方法”を考えるだけなら、他社にでもできるから」。

自分が歩んできた道、自分のやり方を誰もが実践できるとは思っていない。人それぞれに個性があり、仕事へのスタンスも違って然るべきだと考えるからだ。
「これから私がすべきは環境づくり。皆が少しでも現場の仕事に注力できるような環境をつくっていきたい」。
オーナー1人ひとりの、1台1台に対する要望を大切にしている。それらの積み重ねが大きな成果につながるのだと信じて疑わない。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
酒屋で販売や配達のアルバイトをしていた。エレベーターがない団地などにお届けする際は、肉体的に辛い面もあったが、お客様からの「ありがとう!」の言葉がうれしかった。それは現在の仕事にも似ており、常に「お客様が何を求めているのか」を考えながら働くという意味でその経験は活きていると思う。
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