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メーカー(自動車・輸送機器) / メーカー(機械・工作機械・ロボット) / メーカー(コンピュータ・通信機器・ゲーム機器)
最終更新日: 2008/03/31
(マークの説明) 正社員 理文不問
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プロの仕事研究
加工前の準備を徹底し、自動車エンジン部品を精度高く作り上げた「削る」技術のプロ。
技術系−製造技術開発・生産管理
生産技術部
水野 一平 (24歳) Ippei Mizuno
入社5年目 / 職業能力開発総合大学校東京校 生産技術科 出身

プロフィール
ものづくりが昔から好きで、それを仕事にしたいと塩野製作所に入社。汎用機やフライス盤を使った加工を経験した後、マシニング機を扱う部門に配属。自動車や航空機などに使われる部品などを手がける。プログラムの作成から機械操作まで、マシニング機を使った加工技術を日々磨いている。

プロローグ
テレビで放映されるカーレース。メーカー各社は最先端の技術をマシンに詰め込み、ドライバーとともにトップをめざして激しい争いを繰り広げている。そして、高速で走り抜けるあるマシンの中に、塩野製作所(以下、塩野)が作り上げた部品が搭載されている。エンジンやシリンダなどの部品を切削(せっさく)という技術で作り上げ、高速な走りに貢献している。今日も塩野の部品は、海外・国内の名だたるサーキットの上をドライバーとともに走っているのである。

塩野が自動車の世界に踏み込んだのは、会社の長い歴史から言えば最近のこと。宇宙や航空機などの従来から得意としていた分野にとどまらず、新しいマーケットを開拓していく中でレーシングカーの部品作りに挑戦していった。若手が興味を持てるものを、という社長や熟練技術者の想いがあったことも大きい。こうして自動車という新しいマーケットで実績を上げていくことになったわけだが、そう簡単にどの製品も作れたわけではない。ある自動車部品を任された若手技術者・水野の場合、いかにして新しい部品を作り上げたのか。その“ものづくりの世界”に迫った――。

初めて任された、自動車用のマニホールド。 1
マニホールド、それが水野に任された部品だった。吸気系のマニホールドで、自動車用エンジンの内部に大気を送り込む筒状の部品だ。水野自身、これまで自動車関連の部品を作ったことはあったが、マニホールドは初めて。メーカーからの図面を見れば、その複雑な形状は見て分かった。その形状を実現するためには、同時5軸という複雑な加工ができる機械を使わなければならない。ベテラン技術者である主任とともに作り上げていくことになった。

図面を見て、まずはマシニング機に入力するためのプログラムを作成し、それを機械で流して自動で加工していく。だが、単にプログラムを考えればいいというわけではない。部品は、金属のかたまりを切って削って作られるのだが、その金属を固定して機械の作業位置を定めるための“治具(じぐ)”の選定も行なわなければならない。一連の流れを思い描きながら、その時点では「まあできるだろう」と水野は軽く考えていた。

すぐに加工するのではなく、“下ごしらえ”が大切となる。 2
機械につけた工具を回転させながら削っていくわけだが、その回転数をどうするか、速度をどのくらいにするかによって表面の粗さなどの細かい部分が変わってくる。部分ごとに分けて徐々に削っていくことになるのだが、周囲を削っていくのか、それとも中から削っていくのかもあらかじめ決めておかないといけない。実際の加工に入るまでに、さまざまな条件を固めておく必要があるのだ。料理と一緒で事前の準備、つまり“下ごしらえ”がいかに大切かということを水野はこれまでの経験で分かっていた。とはいえ、実際に削ってみないと正確な条件を定められないものもある。ある程度の仮説を立て、水野は加工に入っていった。

マシニング機の中に金属を入れ、プログラムを設定して加工していく。その様子をじっと眺めながら、仕上がりをチェックする。そして微調整を施し、また加工を続ける。さらに、筒状の両端には“皿”と言われる楕円形の平坦な面がつく形状になっていたのだが、それが筒の部分と垂直に交わるのではなく、少し斜めに加工する必要もあった。「これは、普通に削っていたらだめだ」。そう水野は思ったが、どんなに高性能な機械を使っても、狙いのサイズと同じ数値を出すのは難しい。どうしても差は生まれる。そのために“寸法公差”と呼ばれるある程度の許容範囲を決めておくのだが、今回はその範囲も狭い。つまり、かなりの精度が求められたのだ。

考えることは山ほどある。だが、手を止めるわけにはいかない。 3
少し削っては仕上がりをチェックし、その出来によっては新しいやり方をまた考える。機械の前でうなだれる水野の姿が、いつしか多く見られるようになっていた。皿と筒の微妙な角度を出すためにはどう削ればいいか。皿を斜めにするのか、それとも筒の部分を斜めにして削っていくのか。さらに筒自体も曲がっているため、単純に右と左から同じように削っていくと、その削った線が合わなくなる。その加工パス(削りの軌跡)の右と左のズレをどう合わせるか。熟練の技術を持つ主任にも相談しながら、より良い加工パスを水野は考えていった。休憩を知らせるチャイムの音も耳に入ってこないくらい、水野は目の前の作業に集中していた。

いくら条件が完璧で、機械で削ってベストなものができたとしても、その後には手作業による仕上げが待っている。仕上げで削る量を見越して目標のサイズよりも余分に金属をとっておくのだが、その“とりしろ”をどのくらい残すかによっても完成度は変わってくる。“とりしろ”の厚さによって仕上げの時に金属にかかる負担が変わってくるため、微妙な差が生まれるのだ。考えないといけないことは山ほどある。だが手を止めるわけにはいかない。納期は決して余裕があるわけではない。むしろ、厳しいくらいだった。

自動車メーカーの指定サイズを、果たしてクリアできているのか。 4
試行錯誤を続けながら、水野は徐々に部品の完成を見越せるようになっていた。皿と筒の微妙な角度も、皿の部分を斜めに固定して削っていく最適な方法を導き出し、何とか目標の数値をクリアできそうなところまできていた。

最後は徹夜だった。失敗すれば、塩野に対するメーカーからの評価は下がる。そんなプレッシャーと闘いながら、水野は最後まで粘り強く続けた。逆にこの部品がうまくいけば、またメーカーとの新しい取引が生まれるかもしれない。また“新しいクルマ”に使われる製品を作れるかもしれないのだ。絶対に成功させたいという想いだけが、水野を突き動かしていた。

納期直前、最終的な加工を終えた部品を水野は機械から取り出した。そして寸法を確かめる。各箇所に問題はない。懸念していた皿と筒が接する面のサイズも確かめた。「やった! クリアしてる」。それは、寸法公差の範囲内にしっかりとおさまっていた。さっそく水野は、出来上がった部品を主任に見せにいった。「おお、いいじゃないか」。熟練の目で見ても、それは見事なものだったのだ。まるで我が子のようにその部品を大事に抱えながら、晴れやかな表情を浮かべる水野がいた。

エピローグ
ただ単に決められたプログラムを使って、ものを作ればいいわけではない。100%オートメーションで、機械が自動で削ってくれるわけでもない。実際の加工に入る前には、多くのことを考えなければならない。“下ごしらえ”、それを水野は徹底的にやったからこそ、最終的に精度の高い製品を作り上げることができたのである。とはいえ、考えるだけが仕事ではない。考えながら動く、仮説を立てながらそれを検証する。その繰り返しによって、塩野の製品は作られていく。

まだまだマシニング機を使った切削を究めていきたいという水野。まさに図面や機械と“対話”しながら、最高の製品作りに情熱を燃やす毎日を送っている。
この部品が、自動車の走りを支えることになる。そのように想像すると、確かに「すごいことだなあ」と思えてくるという。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
図面やCAD、マシニング機などには学生の頃から触れていたため、違和感なく仕事に取り組むことができた。基本的な事柄として、現在の仕事にはそのまま役に立っているという。ものづくりへの興味を抱いて入社したが、想像通りの仕事であったこともモチベーションを維持することにつながっている。
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