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最終更新日: 2007/10/01
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プロの仕事研究
“製品”を見すえた研究法を身に付け、新たな触媒を開発した技術開発のプロ。
技術系−応用研究・技術開発
株式会社堀場製作所 ガス計測開発部 Processチーム
石川 浩二 (31歳) Koji Ishikawa
入社7年目 / 名古屋大学大学院 人間情報学研究科 物質・生命情報学専攻 出身

プロフィール
海近くの、自然に囲まれた環境で育つ。アレルギー性鼻炎にかかった経験から、大気中の化学物質に興味を持つようになった。大気中の物質を実測する研究から更なる興味がわき、技術職を志望。先輩社員から感じた親しみやすい雰囲気にひかれて堀場製作所に入社し、品質・環境・安全統括センターに配属された。

プロローグ
技術職を志望して入社した堀場製作所。だが石川が最初に配属されたのは、品質・環境・安全統括センターだった。ここは顧客の製品評価に直接対応する部署。そのため、自分の専門分野だけでなく、社内のあらゆる分野に精通していることが要求される。入社間もない石川にとっては厳しい環境となった。同センターには、電気・ソフトウェアと様々な専門を持った人が集まる。化学を勉強していた石川にとっては知らないことも多く、いろんな角度から問題を論じ合うことで、知識の幅が広がった。
「技術の仕事をするためにも、ここで学べることは何でも吸収しよう」。堀場製作所では、公募制での人事異動がある。人員が欲しい部署は社内に募集をかけ、手を挙げた希望者が面接を受けるのだ。石川は、自分の知識を向上させることに努めた。

転機が訪れたのは入社から3年目。社員向けの広報で、ガス計測開発部からの公募が告知された。募集要項は「化学の知識がある人1名募集」。幼いころから興味を持ち続けてきた、空気中の物質に関わる部署。石川の行動は、素早かった。

念願の、技術職。 1
念願かなって異動の辞令が出た時、石川の胸は期待で満ちていた。以前、ガス計測開発部の部長とは仕事で顔を合わせたことがある。あの親しみやすい人の下で技術の仕事ができる、と思うと嬉しさもひとしおだった。

引継ぎも終わった2005年8月、ガス計測開発部に新たなプロジェクトが立ち上がった。『触媒を用いた、高感度の煙道排ガス分析装置の開発』。2008年に、煙道排気ガス中の重金属に対して法規制を強化するアメリカの市場を狙った商品である。排気ガス中の物質規制が年々厳しくなっているアメリカでは、より微量の物質を検出できる装置への需要は、高まる一方だった。

石川が担当したのは、触媒の開発。製品の機能を支える部分だ。堀場製作所には、NOX、SO2をはじめとする排ガス中の物質分析装置を製造してきた実績があった。先輩が蓄積してきたノウハウを学んだ石川は、少し熱容量を変えるだけで反応性が変化するなど、様々な特性を持つ触媒の面白さに魅せられていった。しかし、煙道の中は高温であり、石炭に含まれる不純物など外乱要因が多い。安定性が高く、微量の物質を検知できる触媒の開発は困難だった。

プロの技術者として、初めての研究。 2
石川の研究は、模擬ガスを作成することから始まった。用意した薬品を調合して、測定対象物質と混合する。それを触媒の試作品に通じて反応を観察するのだ。触媒の物質が同じでも、ガスを通す管の太さ、触媒の配置、触媒の大きさ、ガス量によって反応は変わってくる。実験装置も、自分の責任で用意しなければならなかった。

学生時代にも、研究は経験してきた。しかし、社会人になってから初めての研究は、比べ物にならないほど制約が多かった。最も厳しいのは時間の制約だ。決定している期日までに、望むような結果を出さなければならない。だが一つの実験がうまく進まない限り、次に進むことはできない。周りの先輩たちは、要領よく実験を進めていた。「どうして、すぐに別の方法が思い浮かぶんだ?」。石川の焦りはつのった。

なかなか思うようにならない実験結果。頭を抱える石川に、先輩は声をかけた。「まず仮説を立てろ」。

自分が担っているのは、“製造”のための研究。 3
石川はそれまで、うまくいかない実験結果に対して悩んでいた。しかし結果を見るだけでは、考える方向性すら定まらない。まず仮説を立て、実験計画書を作る。計画と結果とのズレがどうして起きたのかを考えていけば、原因にたどり着けると先輩はアドバイスしてくれた。限られた時間の中で、結果を出すための知恵である。測定結果は、想定より多いのか少ないのか。何%のズレか。手がかりを得ることで、石川の研究は前へ動き出した。

「お前、こんなもの製造の人が作れると思うのか!」。先輩の叱責に、石川はハッとした。自分の仕事は、期限通りに研究開発をすればそれで終わりではない。自分が開発したものを製造する人、顧客のところで設置・メンテナンスをする人が研究の先にいる。自分が開発しているものは“商品”なのだ。1台あたりのコストと、何台作られて、何台売られていくか計算される商品。石川には、自分が製造の過程で担っている役割が分かってきた。

見えてきた、成果。 4
「お前、もう一つは進んでる?」。先輩からの質問。この時まで、石川に“2種類の実験を進めなければならない”という意識は全く無かった。「常に2本、持っていないとな」。先輩からのアドバイスは、プロの技術者としての心構えの一つ。研究を進める際に、2種類の方式を並行して進める。たとえ実験室で望むような検出結果が得られても、製造段階でその方法が実現できない可能性はある。確実に結果を出し、製造を実現するためのリスクヘッジである。自分が行う研究、その先にある製造。実験室に立つ技術者としての自分の役割は、日に日に明確になっていった。

煙道内という条件下でも反応活性を失わないだけの耐熱衝撃性と、検出対象に敏感に反応する物質選択性。4ヶ月にわたる研究の後、石川が開発した検出方法へのゴーサインが出た。ここからは設計者との共同作業を進めていくことになる。自分が開発した技術。それがメカとして形を成していく過程は、技術者にとって何よりもワクワクするものだった。もちろん、設計された試作機の検定も石川の仕事である。寸法が正しくできているか、想定される高温下での動作確認。それは自分の仕事の成果を、1歩ずつ確認していく作業でもあった。

そして、完成した煙道排ガス分析装置。製品化を控えてアメリカの機関で性能検査を受けることとなった。ここは世界中から分析装置メーカーが集まる、いわば腕試しの場所だ。ここで「堀場の分析装置は良い」と言われるかどうかが、自分の研究に対する評価。興奮に目を輝かせる石川は、いつの間にかプロの研究者の顔をしていた―。

エピローグ
一つの成果を出し、石川にはプロとしての自覚が付いた。しかし、周りの先輩研究者は、長年の経験を積んだ人たち。開発した技術で特許をとった人も多い。日々、刺激を受け続けている。

これからも技術者であり続けたいという石川。ただし、その理想は高い。「専門の化学だけではなく、電気・機械のことまでトータルで考えられるエンジニアになりたい。もちろん、社会人として利益のことも計算に入れてね」。

理想の自分になるまで、石川の研究への意欲が尽きることはない。
今は別の製品開発に携わっている。先輩の技術を盗みながら、腕を磨く毎日だ。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
学生時代に学んだ化学は、研究生活においてそのまま役立っている。「名前だけ覚えている反応を、実験中に経験したりもする」という石川。まだまだ、勉強は続いている。
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