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インフラ(建設) / 商社(専門商社(インテリア・建材)) / サービス(レストラン・フードビジネス)
最終更新日: 2007/10/01
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プロの仕事研究
億単位の機会損失という失敗をバネに、大手に負けない組織を作った厨房作りのプロ
技術系−建築・土木技術者
マテリアル事業部
浅田 正也 (28歳) Masaya Asada
入社6年目 / 前橋工科大学 工学部 建築学科 出身

プロフィール
入社後、マテリアル事業部に配属。厨房設計業務に従事。入社2年目、同事業部にて家具設計も兼任。並行して任されていた厨房設計では、設計のみにとどまらず、営業的な仕事や納品管理なども行った。入社3年目には厨房部門の専任となり、現在も多様なクライアントに向けて営業推進活動を展開中。

プロローグ
2003年のある日、厨房部門に所属していた浅田のもとにある依頼が舞い込んできた。某レストランチェーン店で、小規模店舗を新規にオープンさせる計画が持ち上がっていた。依頼は、その店舗サイズに適したコンパクトな厨房を作ってほしいというもの。浅田は数ミリ単位で調理作業の動線を計測し、よりパフォーマンスが向上するような設計図の作成に取り掛かった。冷蔵庫などの機器を扱うメーカーや板金業者などとも密に連絡を取り合い、設計を進めていく。そして、設計が完成した半年後に新店舗の施工は完了し、浅田は満足感に浸っていた。だが、実際に厨房で働いてみた同チェーン店の従業員からは、高評価を得られなかった。さらに、小規模店舗は数店舗出店しただけで、プロジェクト自体が頓挫してしまったのだ。

「うまくいけば、出店数は30〜40店舗を見込めるビッグプロジェクトだったのに…」。浅田は自分の力量が足りなかったこと、そしてエム・ワンの厨房部門がまだ組織として未熟だったことを悔やんだ。だが、この一件こそが、エム・ワンの厨房部門を大手他社にも引けをとらない組織へと成長させるきっかけを作った――。

成功すれば、年間数億円の利益が出る。 1
学生時代、飲食店で調理のアルバイトをしていた浅田は、厨房の設計に興味を持った。そして就職活動のとき、厨房だけでなく建材や家具、看板といった店舗計画で必要となる製品をすべて取り扱っているエム・ワンに出会う。「ここだったら、厨房という分野に携わりながらも、幅広い知識が得られるかもしれない…」。そう考えて入社した浅田は、マテリアル事業部内の厨房部門でまずは夢中で仕事に取り組んだ。

そして、入社から半年が経とうとしていたときだった。以前から取引のあるレストランチェーン店から特殊な厨房の依頼が舞い込んだ。それは、従来型店舗よりも小規模な店舗を新しく作るというもの。それに伴い、コンパクトな厨房を作ってほしいというのだ。その小型店舗が成功すれば、年間30〜40店舗の計画で拡大していくという。そうなると、取引額は年間数億円規模。エム・ワンにとって、大きなビジネスチャンスだった。「絶対に成功させる!」。そう意気込んだ浅田は、すぐに作業に取り掛かった。

気になって仕方なかったが、平静さを装う。 2
まず、浅田は既存店にある厨房の調査から始めた。業務に支障が出ないぎりぎりのレベルまで小さくするには、どこまで小さくすれば良いのか、実際に足を使って調べるのだ。調理のオペレーションを覚え、従業員の作業動線を調べていく。そして、冷蔵庫やガスコンロなどの厨房に設置される機器の大きさも検討していく。「この料理ができるまでには、5歩動くことになる」 「この食材を取りに行くのは、10歩くらいか?」。気の遠くなるような調査が続いた。そして、機器やシンクの小型化が実現可能かどうかを調べるために、機器メーカーや板金工場に連絡を入れる。特注にしなければならないのか、または既存品を改良することで小型の厨房に適合する機器ができるのか、コスト面を考えながら、設計図を仕上げていった。そしてようやく設計図は完成し、施工が始まった。

そして、施工が完了したのは、それから半年後のこと。それなりにでき上がりには自信もあった。しかし、実際に使った人からどんな反応があるのか、平静を装いながらも心の内で浅田は心配でならなかった。そして、ついに小型店の第1号店がオープンした。

年間数億円の利益――夢ははかなく消えていった。 3
「ちょっと使いづらい」 「もう少しこの部分が広かったらいいのに…」。従業員たちの評判はそれほど良くなかった。さらにその後、小型店舗は思ったよりも売上が上がらず、プロジェクト自体が消滅してしまう。うまくいけば、年間数億円の利益。そんな夢もはかなく消えた。「あんなに頑張ったのに…」。浅田は、悔しさを隠し切れなかった。さらに、浅田がいる厨房部門は誕生してまだ3年。組織としては、まだまだ基盤が固まっていない。実際、そのときの厨房専門のメンバーは浅田一人だった。「組織として確立していかなければ、今後のプロジェクトも成功するはずがない!」。浅田は自身と組織の成長を誓った。

その後、浅田は他社にも引けをとらない組織にするために、設計業務に関わらず厨房全体の業務基盤を固めていった。営業や積算、商品管理など、厨房の依頼がきた際にあらゆる面で対応できる組織を作りたかった。幸いにも、エム・ワン社内には多くの建築案件が存在していた。浅田は、さまざまな業態の案件で自身の厨房設計スキルを高めた。また、飲食業者が集まる“厨房ショー”などに積極的に参加し、業界のトレンド収集や他メーカーとの接触も図った。そして、徐々に同社における厨房業務の基盤を固めていった。浅田はその様子に手応えを感じ始めていた。

よみがえる悔しい記憶、刻まれたうれしい記憶。 4
いつしか浅田にも部下ができた。その教育もこなしながら、自身と組織の成長を図っていく。同社に舞い込む厨房に関する依頼は、すべて浅田が受ける。どんな厨房にするか、という最初の開発計画も、営業も、設計も、商品管理も、すべて浅田の仕事だった。学生時代には想像しなかったほどの業務量を抱え、精神的に辛いこともあった。だが、その度にあのときの“小型厨房”での悔しい記憶がよみがえる。浅田は立ち上がり、前を向いて進んだ。

そして、“小型厨房”の失敗から1年ほど経ったある日のことだった。エム・ワンの厨房部門は、大手他社が居並ぶ競争入札に臨む機会を得た。これまで、厨房部門における価格設定の基準や業務フロー、商品・サービス展開における考え方など、組織化するために必要なありとあらゆる決めごとを確立してきた浅田。その成果が、今まさに問われようとしていた。

「エム・ワンさんに決定です!」。見事、それまで実績のなかったエム・ワンは大手を抜き、受注を獲得したのだ。それから施工が完了し、店がオープンした後、顧客が浅田に言った。「エム・ワンさんの厨房はきれいですよね。本当に頼んで良かったです」。それは、浅田の心の中に、新たに“うれしい記憶”が刻まれた瞬間だった。

エピローグ
エム・ワン厨房部門での仕事のやりがいを浅田はこう語る。「一番は、自分の仕事が形として残ること。そして、お客様から評価されるような厨房を作れたときはうれしさが倍増しますね。また、設計が主業務ですが、商業建築厨房における1〜10までのすべての仕事を担当しなければならないことも、当社の厨房部門の特徴です。その分、自分への責任は重くなりますが、とても心地よいプレッシャーを感じています」。

現在、リピート顧客も増え、順調に組織として成長している厨房部門。福祉施設への納入など、商業施設以外への展開も計画されている。自ら育て上げた厨房部門のさらなる成長をめざす浅田の挑戦は、これからも続いていく。
もう一人の厨房部門のメンバーである後輩の指導役を務める浅田。自ら得たノウハウやスキルを惜しみなく伝えている。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
飲食店で調理のアルバイトを経験した。それがきっかけとなり、厨房の設計に興味を持つようになった。また、設計では“実際に使う人の立場になって考える”ということが重要となる。厨房に立って調理をした経験が、設計のプランニングやオペレーションなどを行う上でイメージを湧きやすくしている。
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