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最終更新日: 2008/02/28
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プロの仕事研究
心の交流を切り口に、お客様の健康を支援するライフスタイルアドバイスのプロ。
営業・販売系−営業(個人・ルートセールスが中心)
株式会社首都圏メディカルシステムズ マーケティング営業部/主任
狩野 幸男 (43歳) Yukio Kano
入社14年目 / 中央工学校 建築設計科 出身

プロフィール
建築関係の仕事に就こうと思っていたが、友人の紹介によって配置薬ビジネスへ興味を抱く。入社後、半年間の研修期間を経て、1995年10月よりマーケティング営業部に配属となり、1999年には主任に昇格した。お客様一人ひとりの生活スタイルをサポートするライフスタイルデザイナーとして活躍中。

プロローグ
玄関先に立ち、深呼吸をしてからインターホンに指をかけた。明るい声で「こんにちは」と挨拶をしながら、お客様が出てくるのを待った。50代くらいの女性が扉の向こうから、顔をのぞかせた。「前は薬箱を置いていたんだけど、もう使わないから返します。また何かあれば頼むわ…」。狩野が言葉を発する前に、扉は固く閉められた。「仕方ない」――そう自分に言い聞かせたが、何もできなかったもどかしさがつのる。狩野は、就職活動を始めた頃を思い出していた。

建物をデザイン・設計する建築士としてのキャリアを夢見ていた学生時代、偶然にも友人の紹介で配置薬ビジネスの存在を知った。「自分が本当に求めているのは、モノづくりよりも人との関わりなのかもしれない」と考えた狩野は、ライフスタイルデザイナーという新しい道にチャレンジしようと決意した。「失敗したらまたやり直せばいい」と前向きに捉えて入社したが、そう簡単に気持ちを切り替えることはできなかった。

落ち込んで帰社した狩野に、先輩社員たちが声をかけてきた。「自分たちの仕事は、社会の役に立っていると実感できるもの。めげずに、一緒にがんばろう」。励ましてくれる言葉が、何よりも温かかった。

がむしゃらに突き進んだ新人時代 1
午前8時30分、今日も狩野の長い1日が始まった。お客様先に配置してある薬箱を点検し、使用料金を徴収するのが狩野のミッション。訪問件数を増やせば増やすほど、徴収代金も高額になる。「プロとして会社に貢献し、認めてもらうには、できるかぎりお客様と接点を持つのがベストだ」。狩野は1日20軒のペースで伺い、商品紹介に努めた。また新たに薬箱の設置を希望する方を求め、新規顧客の開拓にも取り組んだ。まったく面識がない狩野を警戒するお客様とは満足に話せないときもあったが、「こういう薬がほしかったのよ」という笑顔が、心の支えになった。

ときには訪問先でお客様の健康状態をヒアリングし、アドバイスも行なった。「早く一人前に仕事ができるようになりたい」と願い、1日中走り回っていた。忙しさは日ごとにつのっていったが、狩野は少しも疲労感を覚えなかった。ただ、少しずつ自分のなかに“むなしさ”がこみ上げていた。

「売上数字は順調。上司からも高い評価を受けている。でも、これが本当に自分のやりたいことなのか?」。

医薬品販売だけでは、ライバルに勝てない 2
お客様が薬を使用する機会が増えるにつれ、コミュニケーションも深くなっていったが、お客様や社会に貢献しているとはとても思えなかった。戸惑いを抱えたまま、狩野は仕事を続けていた。

入社4年目を迎えたころ、市況が少しずつ変化してきた。バブル崩壊や長引く不景気が、お客様にも影響を与え始めていたのだ。さらに医薬品業界の規制緩和が進み、大型ドラッグストアやコンビニエンスストア、ホームセンターなどでも医薬品が入手できる時代を迎えた。「配置薬は高い。同じ薬を買うなら、近くの量販店で買う」というイメージが先行し、契約を断られることも珍しくなくなった。

「以前は多くの薬を配置すればするほど、売上数字は上昇していった。今までのやり方では、通用しない…」。狩野は過去を振り返り、頭を抱えた。小売業界を相手に低価格競争をしても、勝ち目はない。そう感じた狩野は、ようやく自分自身の成長を優先しすぎるあまり、お客様が心から求めるニーズに応えられていなかったことに気がついた。

「競合他社とは違うオリジナリティを感じさせられれば、この厳しい局面を乗りこえられるはずだ!」。

対面式のコミュニケーションがもたらす“ぬくもり”を感じてほしい 3
同じ効能の医薬品を買うなら、少しでも安い価格が良いはず。それでも「配置薬から買いたい」と思ってもらう理由がなければ、狩野を取り巻く状況は何も変わらない。他では得られない独自の“価値”を、配置薬を通じて提供することが現状を打開するカギになると、狩野は思った。

配置薬販売の特徴は、対面式で商品を紹介すること。お客様と深い人間関係を構築し、どうすればもっと健康的な生活が過ごせるかをともに考える姿勢が求められる。「まずは、対面によるコミュニケーションの良さを体感してもらうことが近道かもしれない」。狩野は競合他社にはないスタイルで親近感をアピールし、話しやすい雰囲気づくりを目指した。また「今までお客様に対して持っていた意識が変われば、仕事の進め方も違ってくるのではないか」と期待し、書店で何冊も本を購入して、ビジネスマインドを習得した。

「自分の周囲で起こる様々なできごとは、すべて自分にとって必要なもの。自分に足りない部分を気づかせてくれる、鏡なのです」――ある本に書かれていたこの文章が、狩野の心に強く響いた。厳しい状況に陥らなければ、今までと同じ方法で商品提案を続けていたかもしれない。狩野は違った視点をヒントに、新しい提案スタイルの確立を目指した。

配置薬ビジネスだからできる、温かな交流 4
最初に変化を感じたのは、電話でのやり取りだった。「狩野さん、前と印象が違うね」というお客様の弾む声が、耳に心地よい。丁寧な言葉づかいとトーンの明るい発声を意識して応対し、深い関係性を築くことができたのが高い評価につながった。狩野の中に、ようやく自信とやりがいが芽生えた。「訪問回数を増やせば良いという、単純なものではないんだ」。そう気づいた狩野は、お客様のニーズに幅広く応えようとさらなる努力を始めた。親しみを感じてもらえれば、生活上の悩みも打ち明けやすくなる。そこに提案のチャンスがあると考えたのだ。

「粉薬が苦手なんだ」。
「大丈夫です。私が市販のカプセルに詰め替えますから。それと台所の掃除ですが、お手伝いしましょうか?」。
「ありがとう。助かるよ」。

――次第に、そんなコミュニケーションが自然に交わされるようになった。お客様との距離がぐっと近づき、プライベートな健康相談が寄せられる機会も増えた。「なぜ病気になったのか。その原因を探るには、生活習慣やメンタル状態がヒントになることが多いんですよ…」。お客様に語りかける狩野の心に、もう“むなしさ”はない。

エピローグ
10年以上にわたって、葛飾エリアを担当してきた狩野。狩野の定期訪問を楽しみにしている方も多い。姿を現さないと、心配して電話連絡をしてくるお客様がいるほど、親しみを感じてもらっている。

だが、現状に満足をしているわけではない。ライフスタイルデザイナーとして、お客様の健康をサポートするプログラムを提案し、多くの人の人生を支えていくのが目標だ。健康な人が増えれば、財政を圧迫している医療費の問題やベッド数不足などの問題も解決でき、社会貢献につながると考えている。「こんな生活を送りたい」と願うお客様の夢をかなえるプランを、ともに実現していけるようになりたいと、狩野は願っている。
お客様といかに信頼関係をつくれるかが問われる仕事。心をひらいてもらうまで、諦めず真摯に接することが求められる。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
学生時代に学んだ建築設計の知識・考え方が、現在の仕事にも大きな影響を与えている。建物をつくる際にまず考えるのが、住む人の生活スタイルに合わせた、最適な建築デザインを企画すること。様々なニーズをもとに提案する工程は、ライフスタイルデザイナーとの共通点も多い。
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