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最終更新日: 2008/03/24
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プロの仕事研究
国内最大規模の展示会で失敗と成功を経験して飛躍した、クリーニング機械営業のプロ。
営業・販売系−営業(法人・ルートセールスが中心)
株式会社三幸社 販売本部 販売グループ/チーフ
尾上 洋一 (37歳) Yoichi Onoue
入社10年目 / 阪南大学 経済学部 経済学科 出身

プロフィール
1999年に入社。以来、国内販売グループで活躍。現在は全国的に営業活動を展開している。また、営業職だけでなく、メンテナンスもこなし、顧客からの信頼も厚い。入社3年目には業界最大規模の展示会で、自社ブースの責任者も経験。同グループのチーフとして着実に飛躍し続けている。

プロローグ
入社3年目の冬。尾上洋一はある出来事をきっかけに、営業成績が落ち込んでいた。「もっとやれたはずだったのに…」。後悔先に立たずと言うが、ある後悔が仕事に対する意欲を奪っていた。尾上が後悔したある出来事…それはクリーニング業界で、年に一度開催される大規模な展示会、『CLEAN LIFE VISION 21』のことである。自社ブースで総責任者となった尾上。展示会が実際に始まり、自分の不甲斐なさを思い知ることとなる。準備段階から開催まで、すべてうまく運んでいるように思う時もあった。だがそれは、勘違いだった。実際は意気込みだけが空回りし、自分がイメージした通りに準備が進んでいなかった。「すべて、自分がやらなくてはいけない…」。自分自身では気づかないものの、ストレスと焦燥感が募り、周囲にもその苛立ちが伝わっていた。総責任者という肩書きが、想像もしなかったプレッシャーを生んでいた。しかし、イベント自体は特に問題も無く、順調に事が進められている。だからこそ、尾上はこんな事を考えていた。「早くこの場から立ち去りたい…」。独りよがりな気持ち。皆の協力なしに、イベントの成功はあり得なかった。

ビッグイベントの総責任者。意欲が溢れた 1
『CLEAN LIFE VISION 21』。これはクリーニング業界で、年に一度開催される大規模な展示会。尾上洋一にとって、この大イベントは良くも悪くも貴重な経験となっている。事のきっかけは入社3年目の2001年9月某日。上司のひと言から始まった。「失敗しても良いから」。展示会の総責任者の役割が尾上に打診された。一瞬、「何で自分が…?」との疑問符が浮かんだ。しかし、先輩の多くが同じ3年目に通り過ぎてきた道だった。そのため、すぐに疑問符は意気込みに変わった。開催月は11月。たった2ヶ月間しか準備期間がなかった。

しかし、尾上に焦りはなかった。大規模な展示会とはいえ、主な流れは前年と変わりがなかったからだ。展示会では新機種を中心に、十数台がブースに置かれる予定だった。同時に製品のデモンストレーションを行うことから、設置工事の段取りをしなければならない。工事自体は自社のスタッフが担当。そこでまず尾上がすべき事は、全体の流れを記した企画書づくりだった。初めてのミッションとあって、企画書は何人もの先輩が作成してきた書類を参考にした。また、設置に必要な道具やブースを仕切るパーティションなどの部材を揃えることも大切な作業だった。しかし、尾上には展示会準備に割ける時間は少なかった。東京を拠点にしながらも、営業スタッフとして担当する中部や北陸地区を飛び回る日々。本社で腰を据えて準備ができるのは、週に1日程度のことだった。

デモの主役となるクリーニングのプロがいない… 2
展示される製品の選択はすでに終わり、ブースの装飾も前年とそれほど変化はなかった。尾上にとっての重要な作業は、図面を参考にブース全体のレイアウトを考えていくこと。製品の配置場所を決めるにも、工夫が必要とされた。単に製品を並べるのではない。実際にデモで動かすことから、製品同士を結ぶ配管の組み合わせやスタッフの動きに支障をきたさないレイアウトがカギを握った。そうしたいくつもの作業を、彼は時間を見つけては、1人で淡々とこなしていった。だが、それが間違いの始まりだった。総責任者という立場もあって、「何でも1人でやらなければ」と気張ってしまった。

展示会には尾上の他、3人のスタッフが関わっていた。しかし、皆が先輩であり、彼は気を遣い過ぎていた。「自分も営業で多忙なのだから、先輩はもっと忙しいかも知れない…」。そんな気遣いが次第に準備作業を遅らせていった。ただガムシャラだった尾上。営業活動への影響を最小限に留め、自ら作った時間の中で準備を行っているつもりでいた。時には、すべてがうまくいっていると思うことさえあった。しかし、展示会開催が間近に迫り、一つの大きな問題を機に尾上の心境に変化が訪れた。デモを行う際、絶対に欠かせないのがプロのクリーニングスタッフだった。これだけは自社のスタッフではなく、取引先に頼まなければならない。しかし、なかなか見つからなかったのだ…。

展示会後に、極度のスランプに陥る… 3
8人のデモンストレーターが必要だった。その招聘(しょうへい)を約20社に依頼したが、ほとんどの答えが「ノー」だった。特に展示会は土曜と日曜に開催され、休日対応でスケジュールが合わない会社も多かった。開催まで残り10日。次第に、尾上は追い詰められていった。「読みが甘かった。もっと早く手を打っておくべきだった」。展示会は大阪のある国際展示場で開催される。そのため、デモンストレーターを大阪で探さねばならず、見つかるまで東京には帰れなかった。初めて、総責任者の重責を感じた。そして、この時から他の面での甘さも露呈するようになった。結局、デモンストレーターは長年、協力してくれている顧客企業に頼み込んで確保できた。だが、ふと気づけば、問題は山積していたのだ。

開催3日前、展示製品の設置工事が始まった。4人のスタッフはそれぞれの持ち場で作業を進めた。この時、尾上はただ1人、あたふたしながら会場を奔走していた。「尾上、アレがないぞ!!」。工事用の道具や装飾品などが見つからないと、先輩が声をかけてきた。こみ上げる気持ちを必死に抑え、尾上は自分の持ち場を離れて会場を駆け巡り、総責任者としての“責任”を果たそうとした。2ヶ月もの時間をかけて完璧に準備してきた…つもりだった。だが、展示会場で自分の愚かさを痛感した。準備不足が至るところで露呈していたのだ。そのため、展示会が開催されてからの彼は、集中することができなかった。「早く終わって欲しい…」。尾上にとっては、失敗の展示会。その後、彼は極度のスランプに陥ることとなる。

黒子に徹した2年目。独りよがりはなかった 4
「自分が総責任者だからという過度の思い込みが失敗の原因」。展示会自体は特に問題も無く終了したが、彼にとっては失敗だった。「スタッフの皆に迷惑をかけてしまった」。そんな気持ちが重くのしかかり、それからしばらくは営業成績が落ち込んだ。先輩との何気ない会話の中で、展示会の話になると耳をふさぎたい自分がいた。会社を辞めたいとさえ考えた。それから我慢の日々が続くのだった。

1年後、再び展示会の季節を迎えた。驚くことに上司はもう一度、尾上に総責任者を任せてくれた。「今度こそやってやる」。まさしく、敗者復活戦。ただし、気負いはなかった。冷静に前年の反省を行い、寝る間も惜しんで企画書作成に没頭した。前年はA4用紙で数枚だった企画書は、製品の仕様書やカタログなどを存分に盛り込んだ1冊のファイルとなっていた。さらにデモンストレーターの件は、実は前年の終了後から先輩などにも協力を仰ぎ、各取引先にオファーを出し続けていた。そして、特に重視したのが、展示会を共に運営するスタッフとのコミュニケーションだ。前年は「自分が、自分が…」と気負ったばかりに、他者の声が耳に入らなかった。だが、同じミスは繰り返さなかった。積極的に先輩からアドバイスを仰ぎ、自分の考えをうまくミックスさせながら準備を進めていった。開催数日前に行われるブース設置も、尾上自身は黒子に徹し、先輩の作業をサポートした。すべてがうまく動いていた。そして、彼にとって二度目の展示会がすべてを万全にして始まった。

エピローグ
二度目の展示会は東京で開催された。3日間の期間中、1万人以上が来場。ワイシャツやズボンの最新プレス機が展示された自社ブースには人垣ができていた。クリーニングのプロたちがデモを行い、製品の素晴らしさを間近で見た来場者が、カタログを見ている。尾上は“成功”の二文字を確信した。これが皆の成功であることも強く実感していた。

「チームワークの大切さを再認識できました」と尾上は語る。彼にとって、この成功は新たな飛躍への転機となった。展示会は大好評で、尾上への信頼をさらに厚くする顧客が増えていた。スランプという言葉は払拭され、営業成績は急激にアップした。今や尾上は、三幸社グループには欠かせない重要な戦力となっている。
「同じ失敗は繰り返さない。チームワークの大切さ。二度の展示会で得た教訓は、今も大きな財産となっています」と、尾上は語る。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
学生時代は中学時代から野球やラグビーなどのスポーツを経験。先輩とのコミュニケーションを通じて、挨拶や言葉遣いの重要性を体感した。また、アルバイトでは居酒屋などで接客を経験し、サービス業で必要な事柄を習得。これらのことが基礎中の基礎として、現在の仕事で役立っている。
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