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最終更新日: 2008/03/24
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プロの仕事研究
約1年の歳月をかけて最新のクリーニング機器を市場に送り出した、機械設計のプロ。
技術系−機械・機構設計
株式会社三幸社エンジニアリング 設計部
内田 啓介 (30歳) Keisuke Uchida
入社9年目 / 拓殖大学 工学部 機械システム工学科 出身

プロフィール
入社後、半年間は組立課にて機械組立業務を担当。各種製品の基礎的知識を学ぶ。以降の2年間は板金加工などによる機械部品加工業務に携わっていた。現在、量産設計グループに所属。主に量産機の設計を担当しつつ、加工・組立性の改善、機械品質向上など生産に関わる業務パフォーマンスの向上に努めている。

プロローグ
少年時代はプラモデル、今はマウンテンバイクに乗り、自らチューニングもする。内田啓介にとって、プライベートでも“モノ作り”と“機械”は大切なキーワードである。そんな内田が大学卒業後の就職先に選んだのが、三幸社エンジニアリング。ただし、クリーニング機器の製造はまったく未知の世界だった。設計を志望してみたものの、製品の中身と仕組みを理解できなければ仕事にはならない。それは入社後、組立課でしっかりと学ぶことができた。

ネジ1本から巨大な鉄板まで――さまざまなパーツを図面に従って組み、一つの機械が完成していく。そのプロセスは、まさしく自分が望んだプロの世界。いち早く設計というステージで活躍したいとの意欲があった。だが、設計部で戦力になるためには、もう一つ吸収しなければならない業務知識があった。それは機械部品の加工業務。ネジ1本を鉄棒から削り出し、レーザー加工機器で角型パイプに特殊な形状の穴を開ける。製品に組み込まれるパーツのほとんどが、自社で製造されるオーダーメイド。現場の先輩や上司の働きを見て、“職人技”とは何かを肌で感じた。そして、入社から2年半が過ぎた時、ついに念願の設計部へ配属された。

サンプル機を分解して図面を描く 1
配属が決まった時、不安と共に“責任の重さ”がプレッシャーとなった内田。設計の仕事は単に図面を描いて、製品へと仕上げるだけではない。時にはたった1本の線や、数ミリの誤差が製品自体の性能を左右する。仮に品質が低下すれば、三幸社のブランド価値も下がってしまう。だからこそ、気合を入れなおして現場へ飛び込んだ。配属後の約半年間、まずは先輩や上司から設計図面の修正などを任され、そこから図面の作成方法を学んだ。図面を描くCADの使用方法から始まり、設計手順やドキュメントの作成についても知識を吸収する――大好きなモノ作りとは言え、現実は難しく、一瞬の戸惑いを覚えることもあった。まさに、プロのレベルの高さを体感した。そして半年が過ぎた頃、大きなチャンスが訪れた。

通称“袖パフ”と呼ばれるウール仕上げ機。その新規ラインの立ち上げが決定された。当初、数機種の開発が決まり、内田は自ら志願して1機種を任された。身が引き締まった。設計の始まりは、第一にサンプル機を分解すること。パーツの一つひとつを丁寧に外し、すべての寸法や形状を克明に図面化していく。そんな作業が1〜2週間続いた。

手探りで進めた本格的な設計作業 2
この案件には特殊な社内事情があった。通常、新製品の開発となれば、製品コンセプトに従って機能などの仕様を決め、設計スタッフのイメージを図面として描いていく――つまり、内田が行ったサンプル機を分解し、図面を描くことは稀なケースだった。ただし、生産方法など仕様の細かな点では、自分のアイデアがいくつも必要とされた。

同製品に使用されるパーツは約100個。三幸社の製品群の中では少ない部類に入った。しかし、初めての経験だからこそ、無限にあるように感じられ、予想以上に最終的な仕様決めと図面化に時間を費やしてしまった。もちろん、自分一人で解決できない問題もあった。そんな時は設計や生産部門の先輩や上司からアドバイスを仰ぎ、過去の資料なども参考にしながら着実にクリア。約1ヵ月をかけて、図面はほぼ完成した。CADで作成した図面の総数は数百ファイル。ワイヤー1本でも図面化されることからそれだけの大量な数になるのだ。そして、ここからプロトタイプ(試作機)の製作が始まる。内田にとって最初の難関であり、苦悩の日々が続いた。

設計変更と不具合の改善が断続する 3
生産性を高めるために、各パーツの製造を効率化させる工夫が設計段階から求められていた。ここでは、入社後の2年半で習得した機械加工の経験と技術が活かされた。筐体部分ではフレームの形状が特殊ならば、手間はかかるがレーザー加工機を使用し、その他は従来通りの加工を施す――その方法を随時、生産側と検討しながら、生産性重視で切り分けた。また、作業手順なども共に試行錯誤をくりかえし、この点も解決された。最初の試作機が完成した。動かしてみると、機器内部から鳴らないはずの不協和音が響いてきた。設計初心者の誰もが通る道。設計図を検証し、今一度、機械を組みなおしてみた。

それからは不具合との断続的な戦い。まさに山積みだった。改善ポイントを図面に反映させ、その度に試作品を組み立て検証した。別案件の業務もあり、自分なりに時間を作り出しては作業に没頭した。それは約半年以上に及んだ。そして、試作段階で最後まで内田の頭を悩ませたのが、蒸気を吹かすしくみ。袖パフは、端的にはペダル操作で蒸気を吹き上げ、スーツの袖を仕上げる機械である。だが、蒸気バルブについては大学で学ぶ機会もなく、知識は皆無だった・・・。

初めての担当製品がついに完成したが・・・ 4
サンプル機を分解している頃から、内田にとっては悩みの種だった。蒸気を吹き出す機構が複雑になっており、当初はその理解にも時間が必要だった。そして、実際に試作機へ組み込んでみると、細かな調整が必要とされた。ペダルを踏んで機器内部に蒸気を送り込み、バルブを介して蒸気が吹き出す――それが蒸気バルブの概略だ。ユーザー側はペダルの微妙な操作で蒸気を加減し、スーツの袖を最良の状態に仕上げる。その調整を可能にするためには、機器側にも微妙な動きが要求された。何度も組んでは理想の動きを追求した。特にペダルから伝わる力でバルブの開き具合を変えることは、言わば感覚の世界。先輩や上司とも検討を重ね、1年近くに及んだ作業はついに終わりを迎えた。

製品は完成し、東京で開催された展示会へ出品された。展示される製品は、内田にとって初の製品。感無量だった。だが、この後に問題が待ち構えていた。製品が出荷されてしばらくすると、ユーザーから不具合の報告が届いた。苦労したバルブの機構についてだった。若干の水漏れがあったため、改善の必要性があるという。そこで上司と共に対処を検討し、結局は部品交換で難を逃れた。内田は改めて仕事の難しさを知った。

エピローグ
この案件により、設計の奥深さを痛感した内田。単に図面を描き、製品化するだけではない。担当した製品とは、信頼性が確立されるまでの長い付き合いとなる。一製品をしっかりと熟成できれば、三幸社ブランドの向上にもつながる。そのためにも、ユーザー側の声に耳を傾けることが重要だ。そして、開発中は三幸社の社風となる『人のあたたかみ』を感じた。設計段階から上司や先輩の助けは欠かせないもの。それに感謝する内田がいた。反面、いつまでも助けを借りるわけにはいかず、もっとスキルアップしようとの意気込みも高まった。

最初に関わったこの一台は一生の宝物。その宝物を胸に、内田はトップエンジニアへの道を突き進んでいる。
今や三幸社を代表する設計エンジニアとなった内田。その実力はもっと成長したいとの意欲と数々の失敗で培ってきた。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
大学では接着剤に関する研究に参加。卒業研究では数十人の前で研究成果のプレゼンテーションをした。この際、誰もが理解できる文章を書き、人前で明確に説明するなどのスキルを存分に吸収。現在の設計業務でもこうした機会が多く、この経験は非常に役立っている。
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