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最終更新日: 2007/12/27
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『ANTICO CAFFE』の看板パスタを創った、イタリアンのプロ。
専門職系−まだまだある専門職
株式会社重光/『ANTICO CAFFE』/チーフ
後藤 幸治 (28歳) Yukiharu Goto
入社6年目 / 名古屋製菓専門学校 製パン科 出身

プロフィール
「海外の街並みにあるようなカフェで料理を作りたい」と、2003年に入社。『HARBS』営業部で、サラダなど調理業務を担当。2004年に『AL AVIS』営業部へ異動、パスタを任され、チーフへ昇格。2006年にオープンした『ANTICO CAFFE』にチーフとして異動し、新メニュー開発も手がけている。

プロローグ
今日も『ANTICO CAFFE』は活気にあふれていた――

「ガンベローネ、プレーべ!(車エビのパスタ、お願いします)」。

ホールスタッフのオーダーに「グラッチェ!(了解)」と応えた後藤幸治は、車エビに手をかけた。背中側から正中線に沿って一気に包丁を入れ、二つに分ける。熱したフライパンにオイルを垂らし、身の方から焼いていく。車エビの焼き具合を見ながら、パスタをゆで始める。ブランデーと白ワインで香りをつけ、車エビの旨みを引き出したソースを、パスタと絡めて皿に盛る。『ガンベローネ(車エビとズッキーニのパスタ)』の完成だ。この『ANTICO CAFFE』の看板パスタを創り出したシェフこそが、後藤なのである――

―― ヨーロッパ旅行で見かけたカフェに惹かれ、就職活動を行っていた後藤。そんな時に出会ったのが、『AL AVIS(アル アビス)』だった。本場イタリアの味とスタイルを再現したイタリアンカフェであり、後藤のイメージと一致していた。『AL AVIS』を運営する(株)重光の入社試験で、「キッチンでなければ辞めます」とまで言い切った後藤。イタリアンシェフを目指す後藤の物語が、ここから始まったのだ。

料理と向き合う“姿勢”を叩き込まれる。 1
「掃除もできないやつに、良いものは作れない」。

先輩シェフの叱責を受け、後藤は悔しさに身を震わせていた。念願のキッチンスタッフとなった後藤だが、最初から調理をさせてもらえるはずもない。掃除や洗い物、果物の皮むき、野菜の下ごしらえなどの雑用からのスタートだ。その中で繰り返し叩き込まれたのが、料理に向き合う姿勢だった。「味は感覚や技術だが、掃除に必要なのは気持ちだけ。料理への気持ちが掃除をする姿勢にも表れる」。そう語る先輩たちの言葉に、後藤は自分が踏み込んだ世界の奥深さを痛感していた。

「まだ帰らないのか?」「はい、もうちょっとやらせてください」。勤務時間を過ぎても、後藤は店舗に残っていた。率先して先輩たちの野菜や魚の下ごしらえを手伝う後藤。「トマトにしても切れない包丁だと果肉がつぶれてしまうが、切れる包丁ならピンと角の立ったスライスになる。それは味にも直結するんだ」。先輩が教えてくれることを一つひとつ実践し、空き時間を見つけては自分の包丁を研いで来るべき時に備えた。「いつかは自分も」という想いを胸に、目の前の仕事を着実にこなしていった。

サラダづくりで、味の“あんばい”を知る。 2
入社から1年が過ぎた頃、後藤は初めてサラダづくりを任された。研ぎ上げた包丁でパプリカや玉ねぎをスライスし、レタスをちぎって野菜を準備。そこに塩、コショウ、ビネガー(酢)などを合わせたソースをかける。最もオーソドックスなサラダだ。はやる気持ちを抑えながら、気持ちを込めてサラダを作り上げたのだが―― 「違う。塩がきつ過ぎる」と先輩は一口で、欠点を指摘した。後藤自身が美味しいと感じる『味』の幅が広過ぎたのだ。後藤が美味しいと感じる味の幅を、誰もが美味しいと感じる味まで絞っていかなければならない。「頭で考えるのではなく、口の中に入れた時の味を想像するんだ」という先輩のアドバイスを参考に、味の基本となる『塩加減』を覚えるため後藤は何度もサラダを作り直した。

「コショウが多い」「今度は塩が少な過ぎだ」「野菜とのバランスが悪い」。作り直すたびに味を見てくれる先輩の意見を聞いて、再度自分でその味つけの問題点を整理する。「この味だ」と合格点が出た味を一つずつ覚える。そうやって微妙な塩や酢のあんばい(塩梅)を自分の舌に覚えさせ、少しずつ味覚を研ぎ澄ませていったのだ。そして――

パスタは、“麺とソースを抱き合わせる”もの。 3
「そろそろ、パスタソースに挑戦してみるか」。待ち望んだチャンスがついにやってきた。だが、後藤の胸は喜びと、「本当に自分に作れるのか」という不安で混沌としていた。ソース作りでは最初にニンニクやベーコンを炒めて香りをつけるが、その火加減が難しい。「ニンニクが少し焦げたな」とダメ出しをされて、最初から作り直し。ソースが上手くできても、パスタを茹で上げるタイミングが合わない。『アルデンテ』で茹で上げても、ソースと絡めてお客様に出すまでにのびてしまうのだ。だが、ソースとパスタを絡める時間が短過ぎてもバラバラのまま。“麺とソースが抱き合う”パスタを目指して1ヶ月間パスタだけを作り続けた後藤は、ようやくその瞬間を見切った。完成したパスタは先輩からも合格点が出て、初めてお客様の下へ届けられたのだ――

ご友人と談笑しながら、美味しそうにパスタを召し上がるお客様。その姿をカウンターから眺めていた後藤に、ある先輩が声をかけた。「お客様にとってはテーブルに出された一皿が全て。これから数え切れないパスタを作っても、今日の一皿と同じ気持ちで作るんだぞ」。料理の喜びと厳しさを知り大きな成長を遂げた後藤は、その後、チーフへと昇格を遂げた。

車エビの旨みを引き出し、新メニューが完成。 4
時は流れ2006年、重光では新たなブランド店のオープンが決定された。イタリアの伝統的なカフェをコンセプトにした『ANTICO CAFFE』。そのチーフシェフに選ばれたのが後藤であった。基本を守り、食材の味を引き出していく後藤の調理スタイルが評価されてのこと。早速、新店舗のオープンに合わせた新メニュー開発を任された。「オープンは12月。冬に手に入る食材で何ができるか…」。後藤は作りたいメニューを紙に書き出し、味の組み合わせを“口の中で”想像した。「車エビで行こう」。後藤の頭の中でメニューが決まった。

後藤が考えたのは、『車エビの旨みと麺が抱き合うパスタ』であったが、実際に調理するとイメージとズレていた。肝心の車エビの旨みが引きだせていなかったのだ。「これを使うか…」と後藤が取り出したのはブランデー。車エビの身と甲羅をじっくり焼いてからブランデーで一気に仕上げ、白ワインで味を調えた。「…、よしイメージ通りだ」。後藤が創りあげた新メニューは、山田社長も納得のできだった。ついに、『ANTICO CAFFE』の新メニュー、『ガンベローネ(車エビとズッキーニのパスタ)』が完成したのだ。

エピローグ
2006年12月、『ANTICO CAFFE』のオープンと同時に、後藤が考案した『ガンベローネ』は注文が殺到する人気メニューとなった。当初は車エビの旬を考え、冬季限定メニューの予定であったが、春、夏、秋とお客様からのオーダーが止むことはなく、まさに看板メニューとなっている。

「お客様の『美味しい』という言葉を聞くとうれしいと同時に、身が引き締まる思いがします。次にいらした時に『味が違う』と思われては、意味がありません。いつでも『美味しい』と言ってもらえる料理を作るために毎日が真剣勝負です」。後藤はこれからも、一皿一皿の料理と真摯に向き合い、『ANTICO CAFFE』の味を体現していく。
「素材の状態や温度、湿度によって味は変わるもの。一回一回の調理に集中しているから、閉店時はいつもくたくたですね」。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
学生時代はサッカー部に所属し、上下関係の厳しさを学んだという。「サービス業ですので、あいさつや礼儀正しさも大切。でも、それ以上に活きているのが、周囲を見る視線や『気づく力』です。上の人がやっていることに気づければ、それだけ自分の成長も早くなります。人と仕事をする上で欠かせない部分だと感じています」。
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