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流通・小売(専門店(ファッション)) / 流通・小売(専門店(インテリア・服飾小物)) / メーカー(ファッション・アパレル・繊維)
最終更新日: 2007/12/27
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プロの仕事研究
店長就任3日目の出来事を契機に、お客様、スタッフ双方から信頼を得た販売のプロ。
営業・販売系−店長
『charlotte ronson』/店長
稲田 香代子 (28歳) Kayoko Inada
入社6年目 / 武蔵野大学 現代社会学部 現代社会学科 出身

プロフィール
もともと洋服が好きだった。就職を考えた時、「まずは経験してみよう」とサンエー・インターナショナルの展開する店舗でアルバイトとして勤務。様々な仕事を任されるうち、「この会社で働きたい」と思うようになった。入社後は、店舗スタッフを経て2006年4月より『charlotte ronson』の店長を務める。

プロローグ
サンエー・インターナショナルが展開するブランド『charlotte ronson』。その店長である稲田は、お客様からも、また、スタッフからも全幅の信頼を寄せられている。

まずはお客様からの信頼。ブランドコンセプトを誰よりも理解した商品説明、しっかりとお客様の好みを聞いた上で提案を行う接客スタイル、そして何より、常に笑顔を絶やさない心地良い接客。その姿勢に、「稲田さんがいるから」と店舗を訪れるお客様は多い。スタッフからは、相談を受けることもしばしば。「自分へのリピーターを増やすには、どうすれば良いのか?」 「自分の個性を、どうすれば発揮することができるのか?」。スタッフは皆、それぞれに悩みを抱えている。それら一つひとつと向き合い、稲田は丁寧に答えていく。

「個人接客がメインにできるブランドを経験し、自分の幅を広げたい」。そう考えて異動したのが2006年4月のこと。以来、その足取りは順調そのものと言える。

しかしもちろん、稲田も初めから信頼を得ていたわけではない。契機となったのは、店長就任3日目に起きたある出来事だった―――。

店長就任3日目にかかってきた、お客様からの電話。 1
きっかけは、お客様からの1本の電話だった。

―――そのわずか3日前。稲田はこの店舗に店長として異動してきた。自身初の店長職。稲田は、「これまで関わった店長たちの、良い所を参考にしたい」と考えていた。理想は、「良い意味で緊張感のある店舗」。お客様には楽しい雰囲気を伝えつつも、スタッフ間の緊張感は保つ。「そんな店づくりがしたい」と、期待に胸を膨らませていた。そんな折だった。

「店長、お客様からのお電話なのですが、代わって頂けませんか?」。

稲田のもとに、スタッフが受話器を抱えてやってきた。その慌てぶりから、ただ事でないことは容易に想像できる。事情を聞くと、「取り置きの予約をしていたのに、いつまで経っても連絡がない」との、お客様からの問合せだという。スタッフによると、商品は既に完売。つまり、入荷の連絡漏れである。それで、「どう対応すれば良いのか分からない」とのことだった。

「まずい」とは思った。だが、自分がしっかりと対応しなくてはならない。お客様のためにも、この不安げなスタッフのためにも。「自分しかいない」。就任3日目。店長としての責任を初めて感じながら、稲田は受話器を受け取った。「もしもし」―――。

不信感を募らせるお客様に、誠実に対応する。 2
「お待たせいたしました。店長の稲田と申します」。

電話の主は、20代後半の女性。以前来店した時に、ある商品が入荷したら連絡をしてほしいとお願いをしていた。それなのに、いつまで経っても連絡がない。「私のこと忘れていたんじゃないの!?」。その声は、かなり熱を帯びている。

「申し訳ございません」。そう口にした稲田の声は逆に、少し震えていた。無理もない。お客様への罪悪感、対応への不安、そして責任感。様々な気持ちが、ないまぜになっていた。

だが、謝罪するだけでは何も伝わらない。責任はこちらにあるのだ。「完全に、こちらの連絡漏れでした」。既にその商品は全国で完売していることも伝えた。もちろん、お叱りは覚悟の上だ。

「何でそんなことが起きるの!!」。稲田は、伝票の管理が徹底できていなかったと、正直に説明した。この店舗では予約を受けると、商品の絵型にお客様の名前を書いた小さなメモ用紙を貼っていた。だが今回は、それが何かの拍子に抜け落ちてしまっていた。「今後は二度とないように管理方法を変更し、徹底いたします」。

電話を代わって20分。稲田の誠実な対応に、少しずつ、お客様も話を聞いてくださるようになっていた。

商品を探し出し、すぐさま2回目の連絡を取る。 3
ある程度はご理解を頂けた。だが、お客様が望んでいるのは商品を購入することだ。稲田は、どうしても用意したかった。「確認いたしますので、少しだけお時間をください!」。

そう告げて一旦電話を切ると、稲田は商品を探して各所に連絡を取った。すると、運良く本社に1点だけ在庫があるという。稲田は本社に連絡し、事情を説明。「どうしても入れさせてください!」。結果、その1点を回してもらえることになった。

すぐさまお客様に連絡する。「…もしもし?」。電話先のお客様の声は、先ほどよりも随分明るい。「あの商品ですが、探して、見つかりました!」 「本当に? あったんですね?」。声のトーンから、お客様が本当に喜んでくださっていることが伝わってきた。「じゃあ、都合の良い時に取りに行きますね」。その一言で、稲田もようやく安心することができた。

電話を切ると、最初に対応したスタッフが駆け寄ってきた。経緯を説明すると、スタッフも安心した様子。だが、「解決して良かった」で終わらせては意味がない。稲田はこのスタッフと、「電話を受けた時どう思った?」 「万が一、またこういうことが起きたらどうする?」といった所まできちんと話し合った。

待ち望んだお客様の来店と、スタッフの変化。 4
なぜこのような事態が起きたのか。どうすれば改善できるのか。それも話し合う必要がある。その日の夜、稲田はスタッフを集めて話をした。「どうしたら良いと思う?」。スタッフ全員が意見を出し合い、新たな管理方法も決まった。

―――2日後。お客様が来店された。お顔は拝見したことがなかったが、稲田は「この方だ」と直感した。近づくと、やはりその通り。稲田が再度謝罪をすると、「私、このお店でこういうものを買っていたんですよ」と、お客様の方から話してくださった。「そうなんですか? じゃあ、お好きそうなものが入荷しましたら、連絡をさせて頂いてよろしいですか?」 「お願いします。すぐ来ますから」。お客様が、また通ってくださる。素直に嬉しかった。

嬉しかったのはそれだけではない。この件以来、スタッフが積極的に店舗に対する意見を出してくれるようになったのだ。相談も持ちかけてくれるようになった。それこそ、スタッフから信頼を得た証。もちろん、一連の流れを経て全員の結束力も深まった。

1本の電話を機に、お客様からも、スタッフからも信頼を獲得した稲田。これ以降、店舗にお客様からお叱りの電話がかかってきたことは、一度もない―――。

エピローグ
「店長として心がけているのは、常にスタッフとコミュニケーションをとること」だと、稲田は言う。自分もスタッフ時代、店長に声をかけられて安心できたことが多々あった。「プライベートのこと、気付いたこと、何でも話すようにしています」。その飾らない姿勢が、さらにスタッフからの信頼を高めることにつながっている。

「『あの人がいるからお店に行きたい』と思ってくださる方を増やしたい。自分だけではなく、スタッフにも」。そのためには、自ら実践し、接客の様子を見せることも大切だ。目下の目標は、「今のお店にいるスタッフを、早く店長に昇格させてあげること。自分のキャリアについて考えるのは、それからですね」。
「あれ? そのインナーって、この間ご購入頂いたものですよね? やっぱり、よくお似合いですよ!」。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
洋服が好きで、学生時代も様々なショップを訪れた。ブランドやショップが異なれば、その接客スタイルも異なる。各店舗で、多様な接客に触れることができた。その中で感じた、「ああ、このお店の接客は心地良いな」とか、「この人は私に話させてくれるな」といった感覚は、自分が接客側にたった今、大いに活きていると思う。
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