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最終更新日: 2007/12/13
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プロの仕事研究
地道な検討・実験を重ね、試薬に含まれていた不純物を突き止めた研究開発のプロ。
技術系−基礎研究
つくば支店
泉 拓洋 (33歳) Takuhiro Izumi
入社4年目 / 東京工業大学 生命理工学部 生命理学研究科 出身

プロフィール
大学院の修士課程を終えた後、博士課程を途中で辞し社会人となる。WDBエウレカの親会社であるWDBの派遣社員として1年弱、化学メーカーにてポリマーを使った製品の開発に携わる。更なる飛躍を求めて、創業間もないWDBエウレカへ正社員として入社。現在は大手製薬会社の研究所にて有機合成の研究者として活躍する。

プロローグ
就職について考えていた泉は、WDBエウレカ株式会社(以下、エウレカ)の親会社であるWDBで派遣社員として働いている後輩と話す機会があった。話を聞いているうちに、「やったことがないことを経験したい」 「いろいろな仕事をして、合ったものを見つけたい」という自分の考え方にピッタリだと思えた。かくして泉はWDBで派遣社員として働き始める。

化学メーカーで派遣社員として働いていた2005年2月。月1回の定期訪問の際に、後にエウレカの役員となる谷口がやってきた。「WDBエウレカという、特定派遣を扱う会社を新たに立ち上げた」。話を聞き、興味が湧いた。エウレカの正社員として安定を得ながら、さまざまな企業で研究者として働くことができる。泉にとって実に魅力的な話だった。

とはいえ、泉は一つの会社でずっと働き続けることは望んでいなかった。「キャリアを積んでステップアップしていきたい」。そんな泉のビジョンをエウレカは受け止めてくれた。新しい会社ならではの風通しのよさと特定派遣というスタイルの魅力。その二つに魅かれ、泉はエウレカ社員としての道を歩み始めた。

いかに効率良く大量生産するか。“商品”として成り立つ薬の開発。 1
エウレカの社員として、某製薬会社の研究所で働き始めた泉。薬が実際の製品になるまでには沢山のステップを経る。薬になりそうな物質を見つけ出し、加工して強い薬効を持つものを作り出す“創薬”。原薬を大量に、安価に、環境に優しく合成するための条件を検討する“プロセス化学”。原薬を錠剤など患者様に投与できる形にする“製剤”。その他にも多くの人々が一つの製品を作り出すことに関わっている。

泉が携わったのは“プロセス化学”。薬として発売されているもの、臨床試験の段階に差し掛かっているものなど、すでに完成品の化合物の構造が決定しているものについて、いかに優れた品質のものを効率良く大量生産できるようにするか、工程や要素を突き詰めるのだ。

先輩と泉、同じ実験をしているのに異なる結果が…。 2
例えば出発物質Aがあるとし、BとCという物質をくっつけ、Dという薬ができるとする。出発物質Aを製品Dにするために、B、Cいずれを先にくっつけるかにより完成品の品質が異なる場合もある。また、BやCを作る製造会社、製造時期など種々の条件によっても異なる結果が生まれることがある。しかし、BやCについて、どの会社の何を使うかよりも大きな影響があるのは、合成を行う際の方法や条件である。例えば、反応溶液を攪拌して合成を行うのであれば、回転数また、それを行う時間など、細かく条件を設定しなければならない。そうしなければ確実に一定以上の品質のものを作り出すことができない。異常があれば大量に不純物が発生してしまうこともある。

泉のメインワークは“幅取り”。例えば温度であれば何度から何度までなら同じ品質のものができるというふうに、条件の許容幅を決定する実験を行っていた。

2006年8月。重要な工程の一つにおいて、先輩と泉の実験結果に不一致が起きた。この時は原薬中間体の合成の条件を検討していた。先輩は化合物を沈殿させる時の条件の検討、泉は他の条件の幅について、と目的は違うが、たまたま同じ反応を行っていた。「こんな不純物が発生したことある?」。合成を行うと、目的と違う不純物ができてしまうことがある。万が一危険な物質であれば、当然だが製品とするわけにはいかない。

調べても実験し直しても、原因は一向にわからず。 3
「これはおかしくないか?」。先輩に尋ねられ、泉はこれまでの実験データを振り返ってみた。不純物とはいえ、その含有量が0.05%以下であれば大抵は問題ない。泉の実験データでもその不純物は発生していたが、0.05%以下だったため見逃していた。それが先輩の実験では1〜2%にも達してしまった。「これはマズい…」。泉らは、すぐさま原因究明を始めた。

まずは過去の実験データを徹底的に洗い直した。たとえ量が少なくてもその不純物が発生した時、どんな条件で合成を行っていたかを調べていく。しかし、ノートに記載していたデータ上では何が原因なのか突き止められなかった。

そこで原因を究明するための検討に取り掛かった。まず、これまで製造現場ではこの不純物ができていなかったため、研究所と製造現場での条件の違いが原因ではないかと考えた。例えば研究所のスケールでの検討では反応に使った溶媒はほぼ完全に除去することができる。しかし、製造では設備の問題などにより完全に溶媒を除去せず、残留したまま先の工程へ進む場合もある。そうした条件を現場のやり方を再現する方法で実験してみた。「問題にならないだろう」と今まで思っていたことまで疑い、実験を繰り返した。それでも原因は一向にわからなかった。

「自分のやり方が悪いのか…」。喪失した自信を取り戻すまで。 4
泉は「自分が実験すると不純物が発生しないということは、自らの作業が間違っているのではないか」と思い、自信を喪失していった。

悩んだあげく、先輩と泉は使用する試薬を交換して実験を行ってみた。ある試薬について、先輩と泉は異なるメーカーのものを使っていた。過去のデータを整理した段階では、試薬メーカーの違いと、問題となっている不純物の生成の有無との間に相関がなく、この試薬が原因ではないだろうと思い込んでいた。しかし検討の結果、その試薬に原因があることがわかった。しかも今後使用する予定だった別のメーカーの試薬を使ってみると2人ともかなりの量の不純物が発生した。またその後の検討から、同じ会社の試薬を使用しても、不純物ができたりできなかったりすること、不純物が発生してしまう試薬でも蒸留して反応に使えば問題ないことなどが明らかになった。検討の結果、ようやく原因がその試薬中に含まれる微量の成分であることが突き止められた。

泉らの実験の結果、当面はその試薬の変更が見送られることとなった。泉は自分の技術の問題ではなかったことに安心した。しかし、「先輩がやるとできる、自分がやるとできない」ことにこだわりすぎた。早い段階で試薬の違いを疑うべきだったという反省をもとに、研究において最も大事なことは実践であることを学び、研究者として一つステップを上がった泉であった。

エピローグ
現在、泉はまた別の案件に取り掛かっている。一つの案件で成果を得たら、また次の案件に取り掛かるという流れで、追われることなく研究に没頭できる自分の環境を「恵まれている」と感じている。「社員のみなさんは、いくら研究職でもやはりしなければならない雑務があります。自分は研究をするために派遣されている“研究者”なので研究だけに没頭できます。社員の方からは『うらやましい』と言われることもありますね」。

今後も研究者として、分野にこだわらずさまざまな経験をして、ステップアップし続けたいと語る泉。「キャリアアップの仕方を提案していきたいですね。会社を変えるぐらいに」。その志は無限だ。
「日々スキルアップしている実感があります」。派遣先で有志社員が行っている勉強会にも積極的に参加している。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
今の仕事が大学で研究していたこと(有機合成)と直結しているため、直接役に立っている。また、派遣にはスキルももちろんだが、コミュニケーション能力も重要。大学の研究室での人間関係で失敗した苦い経験も、今思えばコミュニケーションというものの重要さを理解できたという点で、大いに役立っている。
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