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最終更新日: 2007/10/01
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プロの仕事研究
初めて担当した自社ビル免震化工事を、緊張の中で成功させた電気設備施工のプロ。
技術系−電気・電子設計
東京支社 設備部 工務課
矢野 隆徳 (29歳) Takanori Yano
入社5年目 / 芝浦工業大学 工学部 電気設備学科 出身

プロフィール
建築系の仕事に就きたいと考え、どの会社に行くべきか悩んでいた時、研究室を直接訪ねてきた当時の奥村組設備部長との会話に大きな魅力を感じ入社を決意。設計担当を経て電気設備の現場担当になり、東京支社ビルの免震化工事を含む改修工事を担当。以降、集合住宅の新築工事など数多くの物件の電気設備担当として活躍する。

プロローグ
就職を決める時期、矢野は悩んでいた。建築関係の会社に行こうと思い、いくつかの会社を候補とはしていたが、どのような会社に行くべきか決めかねていたのだ。そんなある日のこと、大学の研究室を奥村組の設備部長を含む数名が訪ねてきた。企業の部長が学生を訪ねて来るのは異例のこと。矢野は驚いたが、良い機会なので自分がやりたいと考えている仕事のこと、会社に入ってどのような仕事ができるのかという不安などをすべて話した。

部長は矢野の話に熱心に聞き入り、相談に乗ってくれた。矢野は、そんな部長に感動を覚えていた。矢野の相談を聞き終えた部長が言った。「奥村組で一緒にやろう」。この言葉が決め手だった。矢野は、奥村組への入社を決意した。

ビルの空調・給排水、照明など電気設備の設計が、矢野が最初に就いた仕事。先輩たちの教えを受け、着実に専門知識を身につけていった。入社から1年半後には電気設備工事担当者として現場管理を担当することになったが、そこで矢野は大きな仕事を任されることになった。それは、東京支社ビルの空調設備の改修と免震化。矢野にとって大きな試練の日々の始まりだった……。

初の施工現場担当は、自社ビルの免震化工事! 1
矢野に与えられたもっとも重要な命題は、「現在あるビルの外観をほぼそのまま残して改修を行い、しかも、通常の業務を行いながら工事を終える」ということ。奥村組の東京支社ビルは、完成から既に20年近くが経過しているものだが、その間には阪神大震災など数々の地震災害が起き、ビルに求められる耐震性は、過去とは比べ物にならないほど厳しい基準になっている。しかも、空調設備などは、だんだんと老朽化が進んでいるため、改修が必要だった。そこで、ビル自体に免震化工事を行うと同時に、内部の空調設備なども一新して、このビルを新しく生まれ変わらせよう、ということになったのだ。

だが、その工事の期間中、業務を止める訳にはいかず、一時的に引越しをするとしても莫大なコストがかかる。さらには、このビルの外観はそのままにしたい、という会社側の要望もあった。

しかし、奥村組には『免震レトロフィット』という技術がある。この技術で工事を行えば、通常業務を止めずに工事を行える上、ビルのデザインを最大限に活かしたまま、最新の免震技術を施せるのである。しかも、この技術で東京支社ビルの免震化工事を行えば、ビルそのものが巨大な施工見本となるのだ。“ビルそのものがショールーム”といった感じである。それだけに、工事の現場管理を担当する矢野に課せられた責任は重かった。

空調設備の改修を通して知った人間の感覚に沿うことの重要さ。 2
まずは空調設備の改修から工事が始まった。エアダクトなどの配管はそのままに、空調の機器を新しいものに入れ替える。あくまでも通常業務に支障のないように進めるため、主な工事は休日に限られる。空調改修工事は3月に始まり7月に終わる、という長期のものになった。

その工事を通して、矢野は今まで思いもよらなかったことを学ぶことになった。空調はオフィス内で仕事をする人々が快適に仕事を進められるようにするためのもの。だが、“どういう温度が快適か”ということは、単純に数字では表せないものだったのだ。人間の感覚は非常に緻密で繊細なものだ。設備が変わることでの変化を敏感に感じるのである。同じ部屋であっても、これまでとは違うエアコンディショニングに「暑い・寒い」という反応が返ってきてしまう。「設備は人のためのもの。人の感覚から設定していかなければならないものなのだ」。矢野は深く感じたのだった。

そして、この工事が終わるといよいよ免震化工事の開始である。ここからが、緊張の連続する苦難の道だった……。

免震化工事開始。不安に眠れない日々が続く……。 3
『免震レトロフィット』には、大きく2つの方法がある。建物の基礎を作り直し、地面とビルの接点で免震を施すものと、1階などの中間階に工事を行って免震を施すものだ。いずれも、一時的に支柱部分の上下を切り離し、間にゴムの積層を作ることで地盤の揺れを吸収し免震を行う、というものなのだが、前者の場合は基礎部分を掘り返すことになり、工事は大掛かりなものとなる。今回の場合はあくまでも通常業務を普通に行えることが前提であることから、コスト面でもより低廉に済む後者が選択された。

設計は万全であり、工事技術にも自信はある。だが、それでも矢野は不安だった。「もし施工中のトラブルで建物の機能が停止してしまったらどうしよう」。それが心配だった。電気や水を止めて行わねばならないような工事は休日に行うが、平日の作業中に何かの事故が発生して不測の事態が起これば会社の業務を麻痺させることになりかねない。そう考えると、工事は常に緊張の連続だった。

段階的に柱が切断され、免震装置が設置されていく。配管や電気配線は、免震層の部分では地震での揺れがあっても寸断しないような工夫がされる。慎重に、静かに工事は進んでいく。だが、それでも恐れていた事態は起きた。

危惧していたトラブルが発生!長い工事が続く。 4
配線などはビルの設計図を元に、施工中に切ってしまったりしないよう細心の注意をしているのだが、図面にはない配線があり、それを切ってしまったためにビルの一部が停電してしまったのだ。幸い大事には至らなかったが、矢野は改めて細心の注意を払うことを心がけた。

免震化工事は、2006年の7月から2007年の5月まで続いた。その間、矢野は常に緊張を強いられた。不安のあまり眠れない夜もあった。だが、遂に免震化工事が終了する日はやってきた。心配していたような大きなトラブルも起きなかった。矢野は、初めて担当した大きな電気設備施工を、最後までやり抜くことができたのだ。この業務を通して電気設備担当者としての自信を身につけた矢野。その証は、ビル1階の天井部分を見上げるとわかる。完全に1階と2階で縁を切られた建物が改修前と変わらず機能し続けている。そして矢野の手がけた空調・給排水設備が、今日も奥村組社員の業務を快適にしているのである。

エピローグ
矢野はこの免震化工事のことを思うと、時折複雑な気持ちになると言う。「もちろん、大規模地震などは起きて欲しくない。でも、この免震装置の成果が明らかになるのは、地震が起きたときなんですよね。地震が起きたときに、『ほら、大丈夫だったでしょう?』と言いたい気持ちにもなるのですが、ちょっと複雑です」。

現在は149戸の大型集合住宅の新築工事と、学校施設の改修工事という、大規模な2現場を担当する矢野。「電気設備施工は、常に工期という限られた時間との勝負です。その中で最大限の努力をし、完成した建物の中で電気設備が万全に機能することが最大の喜び」と言う。その言葉は、厳しい試練を乗り越えた自信に満ち溢れている。
東京支社の玄関前に飾られたモニュメント。実はこれは矢野が担当した免震化工事の際に切り取られた柱の一部なのだ。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
学生時代にはコンピュータソフトを使っての研究を多々行ってきたが、その当時に身につけた知識は、現在の仕事を進めていく上でも、基礎的な部分で大きく役立っている。CADにしろエクセルにしろ、やはり仕事に入ってから覚えるより、学生時代に身につけておいた方が一日の長が出るのでより良いと思う。
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