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最終更新日: 2007/10/01
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プロの仕事研究
『Suica』と『PASMO』の相互利用を可能にし、利便性を実現した営業のプロ。
営業・販売系−営業(法人・ルートセールスが中心)
交通・セキュリティシステム営業部
吉原 麻理恵 (27歳) Marie Yoshihara
入社5年目 / 京都大学 法学部 出身

プロフィール
昔から『東芝=家電メーカー』とイメージしていた。調べていく中で、インフラ事業も展開していることを知る。多くの人に影響を与える仕事に興味があった吉原。「インフラ、さらには他分野にも挑戦できる」と考え、同社に入社を決意。以後、改札機関連の営業に携わるなど、日本の交通機関を支える一人として活躍している。

プロローグ
2007年3月18日。この日、日本の交通機関は新たな歴史を刻んだ。首都圏の鉄道やバスを1枚のカード『PASMO』で乗り降りできるようになったのだ。サービス開始と同時に、飛ぶように売れて行く『PASMO』。その好評ぶりは、ついに販売制限がかかるほど。吉原麻理恵がこのプロジェクトの計画を知ったのは、東芝に入社した直後のことだった――。

2004年4月。吉原が配属された先は、交通・セキュリティシステム営業部。鉄道関連事業者に、東芝で開発した改札機や精算機などを販売するこの部署では、数年後に発売が予定されている『PASMO』の導入に向け、駅務機器の構想が進んでいた。この計画を知り、大きな衝撃を受ける吉原。「1枚で幅広い交通機関が利用できるなんて。引っ越してきたばかりで、東京の複雑な鉄道網には苦労していたんだよね」。数日前、入社と同時に東京へ越してきたばかり。だからこそ、このカードが社会にもたらす影響の大きさを確信したのだ。「より移動が便利になる――」。

その1年後――『PASMO』導入により駅務機器の需要が一段と高まる中、吉原はこの巨大プロジェクトに携わることになった。

新型ICカード『PASMO』の導入。 1
『Suica』と相互利用可能な『PASMO』の導入のために、鉄道事業者においては、旧型の改札機を新型のものに置き換える必要があった。そこで旧型改札機の開発から導入まで携わっていた協力会社の一つである東芝が、今回の新型改札機にも携わることになったのだ。

すでに各協力会社と力を合わせ、システムや機械の開発自体は進んでいた。その中で吉原は、クライアントである鉄道関連事業者と、自社工場の間に立ち、具体的な指示を出していく、いわばディレクション的な役割を担うことになった。伝え方一つで、納期の遅れや生産ミスなどが起こりうる責任重大な立場。「今回の改札機導入にあたり、各鉄道事業者間、そしてバス会社間でユーザーに代わり清算を行うようになる。金額的な取引が関わるがゆえに、“信頼性”に対する要望度も高い…」。大きなプレッシャーを感じつつも、鉄道事業者から具体的な納期や予算などについてヒアリングを進めていった。そこで吉原は、驚きの数字を耳にすることに――。

「1年弱の間に、今ある改札機の約半数を新しいものに入れ替えたい」。

余裕をもったスケジュールを立て、生産がスタートした。 2
あまりにも膨大すぎて、想像すらできない吉原。「だが、決して納期を遅らせることはできない」。駅に改札機を納品するチャンスは深夜の時間帯のみ。設置作業を行う保守会社の数も限られており、「今日はA駅とB駅に20台を納品する、明日はC駅とD駅に30台を納品する」など、詳細にスケジュールが決められていたのだ。「万が一納品が間に合わなければ、全てのスケジュールが大きく狂ってしまう…」。

そこで吉原は、余裕を持った生産スケジュールを立てることを心がけた。「最初の納品は2006年の年明け。生産にかかる期間を逆算しても、2005年下期にかかる前から工場へ手配指示を出したほうがいいだろう」。そこで2005年の夏には、工場で生産をスタートさせることにした。生産から納品までの間、鉄道関連事業者と工場の間に立ち、情報の共有やスケジュール管理を行う吉原。「どうですか、作業の進み具合は?」。順調に進んでいるか、工場へ赴き確かめることも。「あぁ、大丈夫だよ」。全ては順調に進んでいるかのように思えた。

だが、製造現場での組立作業が始まった直後――「この情報、間違っているよ!」との連絡が来たのだ。

改札機を入れ替えるチャンスは、ひと駅につきひと晩だけ。 3
突然、製造現場の担当者からの怒りの電話が、かかってきた。鉄道関連事業者から送られてくる製品を組み立てる際に必要な情報に、誤りがあったのだ。そのため、作業がストップしスケジュールが大幅に遅れることに。毎日、組立作業をして膨大な数を生産していかないといけない製造担当者たち。一向に作業が進まない状況に、気が立っていた。「このままじゃ、納期に間に合わないよ!」。鉄道関連事業者と工場の間に立つ吉原は、その状況を聞き、愕然とした。

「鉄道関連事業者に、この状況を改善してもらわなければ。絶対に守らなければならない納期に間に合わなくなってしまう…」。吉原は決意した。「データは早めに、そして正確なものをください!」。鉄道関連事業者は改札機を発注してくれた大事なクライアントである。だが吉原は敢えて厳しく伝えるようにした。「わかっています、ですが…」。鉄道関連事業者にも事情はあった。「データ一つが、納期の遅れ、そして生産ミスに繋がるのです」。相手の状況を理解し、それでも吉原は何度も強く伝えた。それほど、事は重大だったのだ。吉原の態度から、緊迫した状況を察知した鉄道関連事業者。徐々にデータの精度もあがってきたのだった。

そして工場への手配指示から約半年後、いよいよ初出荷の日を迎えた。

そして迎えた、“2007年3月18日”。 4
その日から毎晩、各駅の改札機の入れ替え作業が進んでいった。その後、納期に遅れそうな状況に直面しても、前もって工場に情報をスムーズに伝えられるよう手配することで、無事乗り切ることができた。そして初出荷から1年弱の間に、設置済みの改札機の約半数を入れ替えることができたのだった。

だが、新しいサービスに伴って、改札機が正しい動作をするかどうかは、『PASMO』のサービスが開始されるまではわからないのだ。吉原は、すぐに肩の荷をおろすことはできなかった。

2007年3月18日――サービスが開始された。「トラブルが起きませんように」。その日吉原は、自らの出勤に敢えて自身が手がけた改札機を利用してみることに。「大丈夫だろうか」。接触部分にカードをかざした。吉原の中に緊張がはしった。――特に問題もなく、改札機を通過できた。ほっと一安心をする。周囲を見わたすと、新しく導入された『PASMO』を手にしている人、使い慣れた『Suica』を利用している人、皆がいつも通り駅を利用していた。「よかった」。ようやく、安堵の息をつくことができた。

エピローグ
数日後――友人と電車や地下鉄を利用する吉原。「本当に便利だよね、このカード」。友達の何気ない一言だった。「社会の利便性に、少しでも自分は貢献することができたのではないか」。吉原はその言葉を聞き、喜びをかみ締めた。

そして、この『PASMO』の売れ行きも順調だった。2007年3月18日の段階で、400万枚のカードを用意していた。しかし、当初の見込みを大幅に上回るペースでの売れ行きを見せ、1ヶ月もたたずして早々に300万枚を突破したのだ。――電車もバスも、一つのカードで乗り降りできる。この便利さの裏には、吉原の並々ならぬ努力があったのだ。
駅務機器の納品スケジュールは、緻密に組まれている。確実な納品は、吉原の商談にかかっているのだ。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
大学に入学後、硬式テニスを始める。のめり込むタイプだったため、大きな試合で勝てず、思うように上達しない時でも、諦めずに練習を続けた。結果、大学選抜を決める大会で準優勝を飾ることに。改札機導入の際も、大学時代に培った前向きさで、粘り強く顧客と工場の間を調整することができた。
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