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メーカー(半導体・電子・電気部品) / メーカー(重電・産業プラント) / メーカー(コンピュータ・通信機器・ゲーム機器)
最終更新日: 2007/10/01
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プロの仕事研究
携帯電話の電池を長持ちさせる、画期的な照度センサを生み出した開発のプロ。
技術系−電気・電子設計
セミコンダクター社 ディスクリート半導体事業部 ディスクリート集積回路設計部
樫浦 由貴子 (36歳) Yukiko Kashiura
入社15年目 / 東京理科大学 理工学部 電気電子情報工学科 出身

プロフィール
技術者で趣味がオーディオだった父の影響で、子供の頃から国語や社会よりも理科が好きだった。大学を選ぶ時にはすでに、自分も将来はもの作りに携わろうと決めていた。東芝に入社以来、光半導体の設計に従事。現在は照度センサの設計で活躍している。趣味はフルートを吹くこと。

プロローグ
樫浦の父は製造関係の技術者だ。家には工具が揃い、父は自分で好きなオーディオなどを組み立てたりしていた。そんな環境の中で、自然と「ものを作る会社って、きっと最期まで残るんだろうなぁ」と考えるようになり、技術者を目指して電気工学系学科に入学した。就職試験を受けたのは東芝、1社だけだった。大学で仲がよかった女性の先輩がすでに入社しており、活き活きと仕事をしている彼女を見て働きやすい環境に違いないと思ったこと、誰もが知っている会社であること、それと半導体の仕事ができるという、彼女の希望を満たす複数の条件が揃っていたからだ。

1994年の入社時に、配属部署に在籍していた女性技術者は3〜4人。今と比べればまだまだ女性の数は少なかった。樫浦が配属になったのはLED(発光素子)の開発やその光を受けて反応する、光半導体を開発している『光半導体技術部』。1999年には、照度センサの開発担当になった。半導体技術の熾烈な開発競争の中にあって、照度センサは、東芝が他社に先駆けて商品化しようとしている期待の分野だった。

約2年越しで人の目と同じ感度のセンサを開発。 1
照度センサとは、明るさを感じてその明るさに応じた出力を出す小規模な集積回路だ。例えば液晶画面のテレビやパソコンなどに搭載すると、部屋の明るさに応じて自動的に画面の明るさを調節することなどができる。今までの光センサの分野では、他社の背中を追うことが多かった東芝だが、この技術に関しては他社よりも一歩先んじていた。しかし、商品化するまでには、まだまだ特性が足りない。人が感じる明暗を検知するためには、人間の目と同じ様に反応する特性が求められる。

回路の開発チームは2人。開発したセンサは明るさは検知できても、人間の目とは一致しない。赤外線、紫外線を感知してしまうのだ。樫浦たちは繰り返し何度も回路をシミュレーションし、センサ部の構造を検討し、研究を重ねた。ようやく満足できる製品が完成した時には、約2年の月日が流れていた。

携帯電話への搭載が決まり、一躍ヒット商品に。 2
東芝製の半導体は、東芝の製品だけに使われるのではなく、部品として他の大手、中小の電機・機械メーカーにも販売される。むしろ、東芝以外の企業への売り上げが主要を占めているといってよい。照度センサは、開発がスタートした当初は省エネに役立つとして、テレビを主なターゲットとしていた。しかし、検討を重ねてサイズの小型化を可能にしたため、営業は市場調査の結果、別の販売先に売り込みを始めた。カラー液晶化が進みつつあった携帯電話だ。

カラー液晶を使用するとバッテリーを消耗する、それが携帯電話メーカー各社の悩みであったが、樫浦らが開発した照度センサを搭載すると消費電力をセーブし電池を長持ちさせることができる。営業の方針は的を射ていた。まず、1社が携帯電話への搭載を決定し、次いで他社からも注文が入った。液晶テレビと違って携帯電話は1人が1台持つ普及品。生産量は倍増し、照度センサは一躍ヒット商品となった。照度センサを搭載した携帯が発売された時、樫浦は携帯ショップに出かけて、持っていた携帯をその製品に買い換えた。開発品の多くは、一般の目に触れない製品を作っているのに、みんなが持っているものに付いていることが嬉しかった。「この中に私が作ったものが入っているの」と、友人たちに自慢したりもした。自分が作ったものが商品化されて、それを自分が使用する。樫浦は開発者だけに許された喜びを享受していた。

生産量が増えると、製品にばらつきが目立つように。 3
携帯電話メーカー数社が、東芝の照度センサを搭載したことにより、生産量は飛躍的に増えた。最初は工場で1ヵ月に数日しか作らなかったものが、毎日作り続けるようになり、やがてはラインを増設するまでになった。しかし、量産体制に入って半年ほど経った頃、工場から設計部に苦情が入った。組み立てた製品の中で、規格を外れるものが目立ってきたというのだ。

樫浦たち技術者は、最初は工場の組み立てに問題があるのではないかと思っていたが、どうやらそうではないらしい。工場の方からは「ICチップの構造に問題があるのでは」との指摘を受けた。このままでは、生産ラインの効率が落ちて、材料のロスも起こってくる。大きな問題だった。樫浦たちは原因の究明を始めた。ばらつきの要因を限定して、一つひとつ調べ上げてゆく。自分たちがわからない部分は、人脈を駆使して他部署のメンバーにも協力を仰いだ。樫浦は以前、他部署に駐在し、新しい分野の開発に取り組んだことがある。この時、彼女は部署を越えて社内に頼りになる人脈を築いていたのだ。

当時、樫浦は同製品のバージョンアップにも取り組んでいた。現バージョンの問題が解決しないと次の開発は進められないのに、原因はわからない。営業担当者からは、次世代製品の催促をされる…。また、それ以外にも携わっている開発もある。すべてをやり遂げることはキャパシティを超えていた。

優先順位をつけて、順番に解決を図る。 4
パンクしそうになった彼女は、事態を落ち着いて見直すことにした。製品のばらつきに対しては、二つの方向から取り組まねばならない。一つは回路の構造を見直すこと。それである程度改善はされる。それでも無理なものは生産ライン源流で取り除くのだ。
まず、ばらつき問題の解決が最優先。そうと決まったら、関係部署と新製品の開発スケジュールを見直し、ばらつきの改善に取り組んだ。そして、ある程度の目処がつくと、その問題にも対処をしながら、新バージョンの開発に着手した。頭が爆発しそうなほど考え込んでもわからない。そんな時にやはり頼りになるのは、同じグループのメンバー。また、今までの人脈をたどって、有識者にも質問をする。そうやってコツコツ進めていき、問題は確実に解決していった。

樫浦が仲間たちと作り上げた照度センサの販売台数は、発売当初と変わらず市場トップクラス。しかし、市場も刻々と変化していく。照度センサは、いまだ進化の過程であり、現在の製品で5世代目を数えている。

エピローグ
この件をきっかけに、樫浦は物事に対して多角的な見方ができるようになった。うまくいかないのは回路が原因か、それともプロセスか…。困った時に助けてくれる仲間の存在も再認識した。今は照度センサと同時にプロセス開発に取り組んでいるが、今後は後輩たちと共に開発をしていきたい。ゼロから始まり、試行錯誤を重ねて目標の特性を出し、ものとして形になって現れる。仕様を作っていくことはとても難しいが、自分の作ったものを他の人が使っている。それこそが、もの作りの喜びなのだ。
女性技術者も、今ではずいぶんと増えた。当時から伸び伸びとしていた職場の雰囲気は、より一層伸びやかさを増したと樫浦。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
学生時代、頻繁に行っていた実験・レポートのおかげで、実験では「自分で考えること」、レポートでは「要点をわかりやすく簡潔にまとめること」を実践的に学んだ。そして良い友人にも恵まれた。また、オーケストラ部で吹いていたフルートを、現在も社のオーケストラで続けており、そこからも人脈が広がっている。
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