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メーカー(自動車・輸送機器) / メーカー(半導体・電子・電気部品)
最終更新日: 2007/10/29
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プロの仕事研究
自ら最適な答えを導き、低コストのインバータの設計に成功した電気回路設計のプロ。
技術系−電気・電子設計
電子部品部 技術グループ
古久保 淳一 (28歳) Junichi Furukubo
入社6年目 / 宮崎大学 工学部 電気電子工学科 出身

プロフィール
学生の頃、趣味で車をいじっていたことから、車に関わる仕事がしたいと考え、自動車部品を扱う丹羽鉄工所に入社。入社後は、現場実習でものづくりの流れを一通り体感して学ぶ。半年後、設計業務を担当。そして現在、将来の目標を実現させるべく技術習得に励んでいる。

プロローグ
「自分で製品を立ち上げてみたい」。何でも自分で一からやってみたいと考える古久保が、入社前に抱いていた想い。その想いを叶えるには、設計部門をこれから立ち上げていく段階にあった丹羽鉄工所は最適な舞台だった。「丹羽鉄工所はこれからも伸びる会社だ。設計部門の立ち上げに自分も関わって、いずれは製品を一から立ち上げよう」。そんな目標を掲げ、彼は設計の技術習得に励んでいった。

設計業務に携わって4年の歳月が過ぎようとしていた古久保のもとに、あるプロジェクトの依頼がきた。「これは、厳しいな…」。今回の案件に課される要望の高さを知り、不安が募る。彼にとって今まで経験したことがないほど、コストや品質基準の厳しいものだったからだ。しかも、今回は新規顧客との案件。今後の取引継続のためにも、何としても成功させなければならない責任あるプロジェクトだった。既存の方法では、今回の高い要望に応える製品は決してつくれない。新たな方法を模索しながら、彼の設計者としての挑戦がはじまった――。

各自が不安を抱いたまま、プロジェクトはスタートした。 1
古久保を含む設計部門のチームに託されたのは、新しいタイプのインバータの設計だった。早速、チームメンバー各自が担当する部分の回路設計に取り掛かる。しかし、今回のプロジェクトを進めるにあたっては、様々な不安要素があった。

設計部門とでき上がった製品を評価する部門はわかれて業務を担当するのが一般的なのだが、古久保のチームには両方の業務が託されている。製品性能を数値で表す仕様の決定から実機でのテストまでを行うため、時間的余裕がないことは明白だった。コストや品質に対する高い要望、立ち上がってまだ日が浅い設計部門、少人数のチーム…。まずは顧客の要望に合わせて仕様を決定していくのだが、ただでさえ高い要望が課されている上に、困難な状況下でプロジェクトを進めなければならない。今回のプロジェクトは、各自それぞれが不安を抱いたままのスタートとなった。

これまでにないほど高い要望に、困惑する設計メンバー。 2
メンバーはそれぞれ、求められる製品性能とコストの両方を満たす仕様の決定に苦戦していた。性能を保ったまま、要求されたコスト基準での製造を可能にするため、インバータを構成する一つひとつの部品の選定も行う必要があった。高いコストをかけて性能を満たす部品を導入すれば、求められる製品性能を満たし品質も保っている製品は容易にできる。しかし、既存の部品を導入すれば、コスト要求を満たすことができない。今回の要望に応えうる仕様の決定、そして代替部品の選定には、既存の方法では対処できなかったのだ。

「何かしら手を打たなければ…」。そうは思うものの、わからないことが多く何から手をつければいいのかもわからなかった。その間にも、顧客から追加要望が入る。回路を追加で設計しつつ、古久保は焦りを感じていた。「とにかく、動くしかない!」 なかなか先に進まない状況を打開するべく、本で調べたり先輩に聞いたりするなどして、疑問点を一つずつ地道に潰していった。

課題は山のようにある。時間と手間を惜しんでいる場合ではない。 3
また、何か問題が出てくる度に、古久保は各自が担当する状況の報告と抱えている問題について話し合う場を設けるようにした。一人で解決できる問題でないのであれば、メンバーに様々な意見を求めて解決策を探していくのが一番の近道ではないかと考えたからだ。こうして、チーム一丸となって取り組む環境をつくっていった。

求められる製品性能とコストの両方を満たす仕様の決定は、メンバーと共に問題点を潰しながら何とか進ませることができた。代替部品の選定については、同様の性能を満たすための構成部品を買い集め、自社で組み合わせることで問題を克服していった。手間と時間がかかったとしても、長い目で見て何万、何十万台と売れれば利益は確保できると考えたのだ。また、いくら代替部品で機能面が満たされたとしても、故障してしまっては意味がない。品質を保つために、正常に働いているかの評価試験や耐久性試験など様々な基準をクリアしなければならないのだ。設計が終われば済むという問題ではなく、常に先を見据えて設計を行うことが求められた。こうして、要望に見合う製品をつくるために手間と時間をかけて、一つずつ課題をクリアしていった。

今までの成果が問われる瞬間。実機テストのスイッチを押す手に力が入る。 4
決定した仕様をもとに設計を進め、設計した回路が要求どおりに動くかシミュレーションを行う。不具合を発見しては回路の修正を行い、何度もシミュレーションを繰り返していく。そして、ついに実機でのテストの瞬間を迎えることになった。今までの自分たちの成果が問われる瞬間。緊張した面持ちで実機テストに挑む古久保の姿があった。スイッチを押してみる…。すると静かな沈黙の後に、設計したインバータが搭載された機械は命が宿ったように動き出した。

こうして、古久保たちが開発したインバータは完成した。今回の要望は確かに厳しいものであった。しかし、古久保にとっては、仲間と協力すること、そして何よりも自分で工夫することを通じて、どんな困難でも乗り越えられると実感した経験となった。要望に合わなくても、それに見合った別の方法を自分で探し出せば道は開かれる。今回のプロジェクトで新たな視点を得た古久保は、設計者としての能力をまた一段と磨いたのだった。

エピローグ
既存の方法だけでなく自分で新しい方法を見つけては、製品に自分の意見を反映させること。これは、古久保が大切にしている仕事に向き合う姿勢だ。

「今回のプロジェクトで、一から製品を立ち上げる難しさを実感しました。今はチームの一員ですが、今後はリーダーとなって製品の立ち上げに携わっていきたいと思っています」と彼は語る。「設計したものに沿って製品が量産されていくので、後で見落としが発覚しても取り返しがつかないという厳しさがあります。しかし、自分が設計したとおりに製品が動く喜び、そして自分が設計したものが車に実装されていく喜びを味わえる仕事です」と設計の仕事について古久保は語った。
「既存の方法を試してみることも大切ですが、自ら工夫をして新たな方法を見つけ出すことが設計者としての面白味です」。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
学生時代は、ナノレベルで元素分子を削る研究をチームで協力して行ってきた。各自が分担で取り組んで、結果的に皆で一つのテーマを達成していく経験が、チームワークを必要とする今の仕事に活かされている。また、データを解析して教授に報告を繰り返した経験は、今の上司への報告の基本となっている。
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