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メーカー(化学・ゴム) / メーカー(機械・工作機械・ロボット) / メーカー(住宅・建築)
最終更新日: 2007/10/29
(マークの説明) 正社員 No.1 株式公開
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プロの仕事研究
人の勘に頼らず機械にも頼り過ぎない独自の技術を確立した、生産プロセス開発のプロ。
技術系−機械・機構設計
尼崎工場 工業テープ製造部/副主任技術員
鈴木 康幹 (30歳) Yasuyori Suzuki
入社7年目 / 同志社大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 出身

プロフィール
あらゆるメーカーを知る中で先輩社員たちの人柄に惹かれ、積水化学工業に入社を決める。工業用粘着テープの塗工プロセスを研究するため、研究所に配属となる。2004年からは、尼崎工場にて塗工・乾燥プロセス開発に携わる。現在も、大型プロジェクトに携わり、機械系技術者として活躍する。

プロローグ
兵庫県尼崎市。駅から程近い地域に、積水化学工業尼崎工場は立地する。1947年の設立以来、暮らしを支え、社会基盤となる様々な製品とサービスを提供してきたのが、化学メーカーとしての積水化学工業の役割である。積水化学工業が生み出してきた化学製品は、その姿を変えて様々な場所で生活を支えてきた。例えばそれが、工業用粘着テープだ。

自動車、デジタル家電、パソコン、住宅、産業用機械などは、複雑な機構、精密部品の組み合わせによって構成されている。生活を快適に、便利にする工業製品の内部は、複雑化が進む一方で軽量化・小型化されてきた。そうした工業製品に、工業用粘着テープは欠かせない。発熱に耐える特性、防水性能、絶縁性能など用途に合わせた様々な製品が積水化学工業から誕生した。何万通りもの化学素材の組み合わせによって、独自の特性を持った工業用粘着テープが開発されてきたわけだが、今回の物語の主人公は化学系技術者ではない。鈴木康幹は、機械工学を学んだ技術者である。

今、化学メーカーである積水化学工業では、機械系技術者の存在が注目を集めている。その理由を、機械系技術者である鈴木の活躍を通して紹介する。

化学メーカーで活躍する機械系技術者。技術確立を機械的側面から支える。 1
2004年12月。積水化学工業尼崎工場に、新たな生産設備が導入された。それは、工業用粘着テープの多品種小ロット生産に対応した新しい生産設備である。自動車、家電、建築材料向けに工業用粘着テープを開発する積水化学工業では、塗工技術はモノ作りの柱だ。鈴木の仕事は、材料の搬入から製品の搬出までの生産設備そのものを設計・開発する生産プロセスの開発。特に大学で学んだ流体力学の知識を活かした生産プロセスの開発を得意としていた。今回、尼崎工場に導入された新設備も、鈴木が開発したものだった。

「こんな設備で仕事ができるか! 元に戻してくれ!」。製造部のベテランオペレーターから、鈴木に厳しい声が飛んだ。その日、長い開発期間をかけた生産設備の試運転を終え、オペレーターに操作方法をレクチャーするまでにこぎつけた鈴木たち。だが、予想外のトラブルが待っていた。それが、ベテランオペレーターからのクレームの声だった。既存の設備を使い慣れたオペレーターたちが、新しい設備の操作を嫌がることはよくあること。鈴木たちも事前にそうした状況を予想していた。ところが、今回は単にオペレーターが新設備を嫌がっているわけではなかった。ミスは、設備を開発した鈴木たちにあったのだ。

完璧すぎたシミュレーションが、予想外の誤差を生む。 2
製造部門から上がってきたクレームから、予想外の問題が浮かび上がってきた。鈴木は、すぐに設備の設計をともに進めてきたメンバーを呼び集めた。「原因はハッキリしている。シミュレーションでは見えなかった部分で、問題が発生しているんだ」。今回の新設備の導入に際して、鈴木は独自のシミュレーションソフトを開発するほど力を入れていた。ところが、そのシミュレーションでは想定していないことがあったためにトラブルが起こったのだ。

粘着テープの生産ラインでは、紙やフィルムなどのシート素材に、接着剤を塗布する工程がある。鈴木たち生産プロセス開発の技術者は、材料投入の方法から製品搬出までの一連のプロセスをいかに効率的にするかを研究・開発することが仕事だ。シミュレーションでは、材料の粘性や質量、温度による変化などを数値化してオペレーターの経験や技術に頼らなくても均一な製品を作れるよう設備を開発してきた。試運転でも満足できる結果を残した。だが、実際に導入した設備では、機械をセッティングするオペレーターによる力加減の違いやクセで製品の品質を左右する結果になってしまった。こうした部分はシミュレーションでは分からない。実際に設備を導入して現場で詰めていかなければならない部分だ。しかも今回は、製造プロセスを根本的な部分から変えたため、機械操作によるわずかなセッティングの差が製品の品質に予想よりも大きな影響を与えてしまった。

機械の力によって課題を解決することが、機械系技術者の仕事なのだろうか…。 3
鈴木は、懸命にセッティングの差をなくし、均一な品質を保つ方法を考えていた。方法はいくつもあったが、オペレーターにかかる負担を大きくしてしまっては、今回の問題を解決したとは言えない。なぜならば、生産プロセス開発が担う役割とは、設備の改良によって誰が操作しても同じ製品を作れるようにすることだからだ。オペレーターの経験や勘に頼る方法を選択することは、今回の生産プロセス開発に大きな欠陥を残すことになる。「人の力に頼らずに、機械の力だけで安定した生産ラインを確立すること。それこそが、機械系技術者である自分に求められていることなんだ」。鈴木には確固たる意思があり、果たすべき役割が痛いほど分かっていた。だが、鈴木自身の力でオペレーターから上がってくる不満の声を解決しなければ、2年もの時間をかけて開発した今回の生産技術は失敗に終わってしまうのだ。

人の経験や勘ではない。現場が持つ大きな力が技術を進化させる。 4
改善策が見つからないまま時間は過ぎていくが、その間も未完成の生産設備は動き続けていた。「人の力に頼っている今のままでは、意味がない」。鈴木は、生産プロセス開発を担う技術者として、機械的な解決方法を見つけなければならないという気持ちでいっぱいだった。

だが、後日、鈴木は思いがけないことで、現場の力を見せ付けられることになった。それまでは、設備の操作に関して不具合の報告や不満の声ばかりが現場から寄せられていた。ところが、徐々に現場の力によって改善策が立てられるようになったのだ。一つひとつの改善策は小さなことに過ぎない。しかし、そうした改善が積み重なることで、効率的な生産プロセスが確立されていくのだった。それは、オペレーターたちの力によるものでしかなかった。

新しい生産技術は、使う人たちによって常に手を加えられ、進化していくことを鈴木は感じた。職人技はいらない。機械的な方法、システム化によってモノ作りを支えることが自分の仕事だと信じてきた鈴木。だが、現場で改良されることで確立する技術があることを知った。人に頼り過ぎず、なおかつ機械にも頼り過ぎない技術。それが、積水化学工業のモノ作りを支えていることに気付いたのであった。

エピローグ
その後、鈴木が開発した設備は、製造部門のオペレーターたちの手によって改良が重ねられ、当初の予想をはるかに上回る効率的な設備へと進化していった。その進化は現在も止まらない。常に改良されることで、生産技術そのものが進化しているのだ。鈴木は、機械系技術者として新技術確立のきっかけを作ったに過ぎないことを自覚するようになっていた。「機械だけじゃ解決できない問題がある。その解決に、あくまでも機械的な側面から挑むのが自分の役割なのだ」。たった一人の技術者の力で全てが劇的に変化するわけではない。モノ作りの奥深さを、今の鈴木は十分に理解している。鈴木の技術確立の仕事は、まだまだ終わらない。
機械系出身の鈴木にとって工業用テープの製造は身近ではなかった。だが、化学を知ることで格段に技術者としての視野は広がった。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
大学で学んだ流体力学の知識は、化学素材を加工する積水化学工業の仕事で大いに役立っている。また、プログラミングも多少経験したことで独自のシミュレーションソフトを開発するなど、意外な部分で学生時代の経験が活きている。生産プロセス開発の仕事には、化学、機械、情報処理などあらゆる知識、経験が役立つのである。
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