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メーカー(自動車・輸送機器) / メーカー(精密機器) / メーカー(半導体・電子・電気部品)
最終更新日: 2007/10/09
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プロの仕事研究
各部署の知恵を集め、短期間で天然ガス自動車用部品を作り出した製品開発のプロ。
技術系−機械・機構設計
四輪エンジンシステム 第二開発部 第一開発課
齋藤 芳夫 (37歳) Yoshio Saito
入社15年目 / 芝浦工業大学 工学部 機械工学第二学科 出身

プロフィール
自動車やバイクに興味があり、ケーヒンへ入社。以来、自動車やバイクの燃料供給系部品の開発に携わる。天然ガス自動車用の減圧弁など高度な技術を要求される製品の開発プロジェクトのリーダーとして活躍している。

プロローグ
報告書には、天然ガス自動車用減圧弁の開発にかかるコストがずらりと並んでいた。何にどれだけのコストが必要なのかが、そこからは読み取れた。疑問があると、齋藤は資材購入や生産管理担当者に会いに行き、話を聞いた。性能が高く、廉価な天然ガス自動車用の部品を開発するためには、あらゆるものを根本から見直さなければならなかった―――。

豊富な製品開発経験を持ち、ケーヒンでLPL(Large Project Leader)として活躍する齋藤。二つの出会いが、彼の人生に大きな影響を与えた。一つはボクシングとの出会い。大学3部リーグ所属のボクシング部で汗を流す中、他の強い大学のボクサーに勝つためには、まず自分の弱みを知り、鍛錬しなければならないことを知った。

もう一つは社会人になって間もなく、知り合った一人の先輩エンジニアとの出会い。製品の評価さえできなかった齋藤に技術者としての心得や考え方を教えてくれた。また開発に関する知識だけでなく、生産技術、製造、購買、品質管理まで把握して、仕事を進めていく上司の姿に憧れた。若き日に見たその姿が、技術者の理想像として、齋藤の脳裏に刻まれた。

性能がよくても、高くては売れない、という事実。 1
ケーヒンに入社してから、様々な気体燃料部品の開発に携わってきた齋藤。気体制御製品の開発に関しては、社内でも屈指の豊富な経験を持っていた。ほんのしばらく前まで、顧客のもとで、画期的な気体燃料システムの開発に携わっていた齋藤。そこで学んだことを活かし、社内で天然ガス自動車用の減圧弁の開発に取り組んでいた。

すでに国内メーカー向けに天然ガス自動車用の減圧弁を開発していたケーヒン。その部品は世界でもトップレベルの性能と品質を持つことで知られていた。しかし、それにもかかわらず、世界でこの製品はあまり用いられていなかった。その原因を探るために、海外営業とともに世界各国の部品メーカーを視察する中で、齋藤はその価格に驚かされた―――。

主に発展途上国において用いられている天然ガス自動車には、性能は低いがとてつもなく安い部品が用いられていたのである。「いくら性能がよくても、高ければ見向きもされない」。こうした現実を突きつけられ、齋藤は悟った。「安くて、性能のよい製品を完成させること。これこそが減圧弁の開発に求められていることなんだ」。

わずか、6ヶ月間での新製品開発。 2
天然ガス自動車用の減圧弁の開発について、海外メーカーから打診を受けているという話を役員から聞かされたのは、そんな折のことだった。「来年の6月までに納品してほしいと言われている。今取り組んでいる製品を完成させ、量産することは可能か?」納期までは6ヶ月間しかなかった。仕様を決めるのに3ヶ月。製造にかけられる時間も長くても3ヶ月。通常の開発と比べてみても、恐ろしく短い開発期間だった。

それでも、齋藤はやってみたいと思った。「できる方法を一度考えさせてください」と言った。仕様を完成させる必要もあったが、それよりもまず全体で6ヶ月以内に納品できる準備を整えなければならなかった。

それには開発と並行しながら、生産体制を準備するしかなかった。齋藤は各部署を回って、それが実現可能かと聞いて回った。「なんとかやれる方法はある」だった。そして、役員にその方法を説明した。「なるほど。やってみろ」と役員は言った。こうして正式に天然ガス自動車用の減圧弁の開発プロジェクトチームが組まれた。齋藤はそれぞれの部署のプロジェクトリーダーたちを集め、どのようにしたら、短い納期内でよりよい製品を開発することができるのかについて、話し合った。

プロジェクト全体を、見渡す。 3
問題は、いかにコストをかけず性能と品質のよい製品を作るかだ。当初から、課題は明確だった。しかし、製品の開発は思うように進まなかった。高い性能と品質を維持したままでは、大幅なコスト削減は容易ではなかったのだ。

「こうした時にはどうしたらいいのだろうか」。
思い出したのは先輩エンジニアの姿であった。

齋藤はコストに関わる報告書を集め、減圧弁の開発にかかるコストを分析した。分からないことがあると、資材購入や生産管理担当者に会いに行き、話を聞いた。「部品のここを改めてくれれば、もっと安く作ることができるよ」。「こういう風にしてくれれば、作りやすくなるんだけどなあ…」。目から鱗が落ちる話だった。材料だけでなく、設計や製造方法を変えるだけで、製品にかかるコストを大幅に下げることができた。各部署の連携さえ取れれば、必ず製品の開発を成功させることができる。そんな確信を齋藤は持つことができた。

トータルなモノづくりを実現する。 4
開発作業は時には夜遅くまで続くこともあった。部品の精度が出せない、完成した部品の寸法が間違っている、製品の開発に用いる部品が足りない、エンジンの出力が足りないなど多くの面でトラブルが続いた。しかしそんなことも苦にすることなく、齋藤たちは部品の開発を進めた。同じチーム内の設計担当者も、試験担当者も協力的だった。生産、開発も含めて十数名のプロジェクトメンバーは燃えに燃えていた。一つひとつの問題箇所を解決し、齋藤たちは製品を完成させていった。

それから数週間後―――。

「ようやくできましたね」。予定した開発期間内に製品を完成することができたのだ。プロジェクト全体を見渡すというLPLという役割で、初めて製品開発に成功した齋藤。またモノづくりという仕事に対する新たな手ごたえを得、早くも次の製品の開発に向かう姿がそこにはあった。

エピローグ
「この製品に関してはスタートしたばかり。今後、もっとよい製品を作っていきたいですね」。今回のエピソードを振り返って、齋藤は語る。「ケーヒンは仕事に対して意欲の高い人が集まる会社。仲間に救われましたよ」。

「トータルなモノづくりを行なえる技術者になりたい」と話す齋藤。その原点となったのはあの時出会った先輩エンジニアの存在が大きかった。「一つのものだけを作るのではなく、様々なものに触れられるようにキャリアを歩んできた。沢山のことを知っていると、よい製品も作りやすいんですよ」。目標は、世界で用いられる性能と品質の高い製品を作り続けることだ。
「まだまだ、これからもっとすごい製品を開発していきますよ」と齋藤。夕暮れの空が眩しい。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
ボクシングに熱中していた大学時代。「頭でボクシングをしろ」と教えられたことから、物事にぶつかる時には、まず自分のことを知るという考え方を身に付けた。また厳しいトレーニングを通して、どんな苦境にも負けない体力・精神力を養うことができた。この時の経験が、現在の仕事に役立っている。
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